隣の人より美味しく食べたい!

植野広生

隣の人より美味しく食べたい!

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トースト、サラダも味のグラデーション ――朝食・自宅編

 家で朝食を食べる時にもちょっとした工夫でもっと美味しくなる。毎日同じメニューであっても味わいに変化が出る。朝は時間がないから、というだけでいつも同じではもったいない。
 僕の朝食は、紅茶とヨーグルトが定番。さらにメインで何を食べるかを、前夜から考える。例えば食パンのトーストを食べようと思った場合、どうやって食べるかをシミュレーションする。トーストしてバターを塗って食べようか、チーズをのせて焼こうか、あるいは目玉焼きをのせようか...。
 バタートーストにするとしても、①こんがり焼いてから全面にバターを塗る、②焼いてから全面に薄くバターを塗り、溶けかかったところでさらに"追いバター"を塗る、③バターをのせてから焼く、④①と③のハーフ&ハーフにするーーというのが基本パターン。いずれも均等に塗るのではなく、あえて雑に塗ったり、ムラをつける。こうすることで、食べる場所によってバターの濃度が異なり、味わいのグラデーションができる。こうした変化をつけることによって、同じトーストでも美味しさに深みが出るのだ。
これらをベースにして、黒胡椒やシナモンをふる、ハムやバナナなどを載せる、というバリエーションもある。これだけでも毎日異なる味わいを楽しめるのだ。
 さらに、当然ながらトーストには目玉焼きがよく合う。目玉焼きには何をかけますか? マヨネーズ?ソース?醤油? もちろん、好みでなんでもいいのだが、オリーブオイルとバルサミコ酢を掛けるといつもと違う美味しさになり、トーストにもサラダにも合う(マヨネーズにバルサミコ酢を混ぜても旨い! オリーブオイルとバルサミコ酢を和えたトマトをトーストにのせても美味しい!)
あるいは、フライパンにオリーブオイルをたっぷり注ぎ、縁がカリッとするように揚げ焼き的目玉焼きにする。これをトーストの上にのせて軽く塩胡椒すれば、バターなしでも美味しい。ここにスペインの生ハム、ハモンやカリカリに焼いたベーコンを挟んだりしたら、朝からワインを飲みたくなってしまう。
 ほら、朝から楽しくなるでしょ?
 ちなみに「食べたいものを、食べたい時に、食べたいだけ食べる」が僕の信条(これが健康法であるとも思っている)。例えばキャベツの千切りが食べたい!と思うと、前日にキャベツを買っておき、朝に半玉分くらいを千切りにして食べる。
 山盛りのキャベツをどう食べるか。例えばドレッシングをかけるなら、複数の種類を用いる。カラのボウルに胡麻など濃い目の味わいのドレッシングを少し注ぎ、そこに千切りキャベツを入れる。その上からフレンチなど薄めの味わいのドレッシングをかける。こうすると、上から食べ進む従って、軽やかな風味からしっかりした風味へと、味わいのグラデーションを楽しめる。あるいは、お好み焼きにソースを塗ってからマヨネーズを筋状にかけるように、ベースのドレッシングをかけた後に、別のドレッシングを筋状にかける。これも味わいのグラデーションが楽しめる。
 トーストもそうだが、部分的に味のアクセントを付けたり、複数の要素を使うことで味わいに変化が出る。こうした"ムラ"の味付けが料理に複雑性や奥行きを与えるのだ。朝食の話というより料理の話になってしまったが、朝からこんなことを考えると楽しくなってしまうのです、食いしん坊は。

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Profile

植野広生

1962年、栃木県生まれ。七五三で神社にお参りした際にお神酒をお代わりする。法政大学法学部に入学。上京後すぐに、銀座のグランドキャバレー「モンテカルロ」で黒服のアルバイトを始める。その後、鰻屋や珈琲屋、アイスクリーム屋など多数の飲食店でアルバイトを経験。卒業後、新聞記者を経て、出版社で経済誌の編集を担当。その傍ら、大石勝太(おおいし・かつた。「おいしかった」のシャレ)のペンネームで「dancyu」「週刊文春」などで食の記事を手掛ける。2001年、プレジデント社に入社、以来「dancyu」の編集を担当し、2017年4月に編集長に就任。趣味は料理と音楽。食と音楽のイベントを手掛けるほか、ラジオパーソナリティーなど幅広く活動。「情熱大陸」「人生最高レストラン」などテレビやラジオの出演多数。いまだに「大きくなったら何になろう」と真剣に考えている。

Pick Up Book

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