パドルの子

虻川枕

パドルの子

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『パドルの子』文庫化記念 特別インタビュー!

二度読み必至!

世界を変えられる「パドル」の秘密を知った時、あなたは必ず涙する――

『パドルの子』で第六回ポプラ社小説新人賞を受賞し、デビューされた虻川さん。

6月にいよいよ文庫化を控えて、ご自身のデビュー作をふり返っていただきました。

<内容紹介>

校舎屋上で水野が見つけたのは、巨大な"水たまり"と、そこで泳ぐ美少女・水原。

彼女曰く、水たまりに潜りながら強く願うこと――「パドル」により、世界を一つだけ変えられると言う。
パドルの秘密、水原との距離、水原が「パドル」をする理由とは。

切なさに満ちた青春小説!

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<特別インタビュー>

〇 2017年7月にデビューされた虻川さんですが、デビューしてから生活において何か変化はありましたか?

何も変わってない気もすれば、全てが変わった気もします。生活においては引き続き、とにかくひたすら次の物語創りのために毎日書いていて、それはデビュー前と比べてもあまり変化はないように思います。

そもそもの話をすると、自分はもともとシナリオライター志望で、高校生の頃から脚本の公募に送っていました。しかしいいところまで残っても受賞とはならない時期が続き、次で公募に送るのはラストにしようかな......と挫けかけていたのですが、そんな最中に思いついたのが「水たまりに潜って世界を変える」というアイデアでした。更にそれを一人称視点で描くことで、「改変された世界によって主人公はおろか、観ている側も混乱していく」という形(あまり多くを語るとネタバレになってしまうので、詳しくは言えませんが......)を思いついた時に、これは小説向きのアイデアだろうと思い始め、背水の陣で思いきって初めて、小説執筆に取り組んでみたのが本作『パドルの子』だったりします。

そういう意味では、本作でデビューできていなかったら、僕はこのようなインタビューを受けることはおろか、新しい作品を書くことさえしていなかったかもしれません。これまでと変わらない生活ではありますが、この作品のおかげで変わらぬ創作人生を歩み続けることができている......とも言える気がします。改めて、デビューできて良かったな、と答えながらしみじみ思います(笑)

〇 創作のスタンスなどに変化はありましたか?

それまでは主に一人で作ってましたので、展開などで迷った際には無意識のうちに自分の好きな方を選んでいました。ですが文芸書として『パドルの子』が出版されたことで、本とは「不特定多数の人」が「様々な時分」に読むものであるということを改めて思い知らされたため、今は迷った際に〈作者と読者(≒編集者)が納得できる地点〉を目指すことを、書く段階から念頭に置くようにしています。

もちろんこれらに関してはまだまだ修行中ですし、そもそも読者なんて人それぞれですから、すべての要求に答えることは不可能だと思っています。なので僕は、あくまで過去の僕を第一に優先すべき読者と仮定し、まずは彼に納得してもらえる作品を書いていくことを目標としています。

〇 それまで「読者」として本を読んでこられましたが、「作家」になってから本の読み方に変化はありましたか?

小説に限らず、あらゆるエンタメ作品(ドラマや映画や漫画など)において、主観と客観の両方から観ることを心がけるようになりました。以前であれば「なんか好き」で片付けてたものを、他の人(特に自分とは嗜好が真逆の人)が観たらどう思うか、その上で最大公約数としてどこが面白がられているのか。そんなことを客観的に分析するようにしています。ただ、その一方で「でもやっぱなんか好き」という主観的な感覚もそのまま大事にしたいと思っていて、結果として作品に触れる際、より楽しめるようになりました。

〇 『パドルの子』が文庫になりますが、約2年ぶりにご自身のデビュー作を読んでみていかがでしたか?

何度も推敲してできた作品だったため、単行本になった際には正直冷静になれず途中で本を閉じてしまったのですが、2年空いたおかげか改めて読み返すことができて「いいもん書いたな、俺」と悦に浸ってしまいました(笑)また、当時の自分に刺激を受けると言うと変な話ですが、今書いている話をより良いものに仕上げよう、という意欲がさらに高まりました。

〇 今読みかえして、あらためて「すごく良いな」と思われたところはありましたか?

冒頭の「違和感」と、中盤の「なるほど感」と、ラストの「爽やかな読後感」。これも自分で言うと自画自賛みたいで恥ずかしいのですが、読書中の感情が二転三転しつつ最後にはスッキリ読み終えられる、というのは僕の好きな作品にも共通するところで、そこが良かったです。

あと、冒頭からの「違和感」の部分は分かりづらいところもあると言えばあるんですけど(笑)、そこは狙いでもあるので、伝わるといいな、楽しんでもらえるといいな、と思います。

〇 今書くとしたら、ここを変えたい! と思われたところはありましたか?

もちろん、処女作ということもあり文章のあちこちから拙さは感じられました。改稿もできるとのことだったので、ページ数の関係で句読点の位置や言い回しなど多少手を加えたところはありますが、しかし拙さや粗さから生まれる若さを尊重したい気持ちもあり、結果として大きな改稿はしていません。

〇 文庫で読んでくださる読者のみなさんに、ぜひ注目してほしいところを教えてください。

シーンを区切るために入れている〈クロールマーク〉について、実は一箇所だけ、ある仕掛けをしています。大したことではないのですが、気になったら探してみてください。2年前に出版した文芸書の時からそうではあったのですが、SNSなど見ると誰も気づいてくれてなさそうだったので、今、こっそり言ってみました(笑)

〇 デビュー前のご自身に伝えたいことはありますか?

「映画もいいけど、もう少しだけ本読んどいた方がいいな、お前はな。あとで苦しむ羽目になるからな。でも、先に言っておくけど、おめでとう。もうちょっと辛抱すればとりあえず一度、報われるぞ。そっからは、一緒に頑張ろうな」

〇 ちなみに、次回作はどんな物語になりそうですか?

漠然と「インターネットの世界を舞台とした冒険小説が書きたい」と思い立ち、筆を取ってから気づいたら一年以上が経過してしまいました。今年中には何とか皆さまの元に届けられるよう、現在、推敲に推敲を重ねています。見かけましたら、何卒、読んでやってください。

〇 最後に、読者の皆様にメッセージをお願いします。

このインタビューを読んでくださり、ありがとうございます。

『パドルの子』は「青春の混乱」をテーマに、様々な仕掛けが施された作品です。正直、物語自体は複雑で、あまり易しいものとは言えないかもしれません。ただしここに描かれているテーマは至ってシンプルで「初めて人を好きになったとき、その感情にどう立ち向かうべきか」について、僕なりに考えてみたつもりです。その想いがたくさんの方々、中でもできれば10代の人たちにより深く届いてくれるといいな、と願っています。

ぜひ、この混乱を疎まず、楽しんでみてください。よろしくお願いします。

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★インタビューはいかがでしょうか。

次回からパドルの子の冒頭無料試し読みがスタートです!

次回は5月30日に公開予定。お楽しみに!

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Profile

虻川枕

1990年、宮城県生まれ。日本大学芸術学部映画学科脚本コース卒業。卒業後はゲーム会社に入社し、プランナー/シナリオライターとして務めたのちに退社。第六回ポプラ社小説新人賞を受賞し、本作でデビュー。
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