玲子さんの素敵なひとり時間

西村玲子

玲子さんの素敵なひとり時間

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端切れのブローチ

 2016年の秋、私に思いがけない病気が見つかった。40日間の入院、それに続く通院治療の生活。この3年で失ったものもあるけれど、得たものも様々ある。自分の家で暮らし、好きなことに没頭できる幸せ。イラストを描き、文章を考える日常も、今更ながら楽しい。新しい連載の場をいただいて、私の一人時間にまた弾みがつきそうです。

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 しっかりとした金やシルバーのアクセサリーも、もちろんいいのだけれど、近頃はカジュアルな服ばかりだから、アクセサリーの選び方も変わった。カジュアルという目線ですっかり安定している。出かける先といえば、病院ばかりという緊張感のなさが輪をかけるのだと思う。そこのところ何とかしなければ、と緊張感のある生活を思い出して、自分を少しでもそちらに持っていこうかと思う。

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 さて、面白い端切れをブローチやネックレスに作り替えると、たちまち自由が寛いで私の周りに集まるようだ。生まれたてのその子たちは仲間が増えるごとにわいわいがやがや。私も調子に乗って作り続けて、外が暗くなったのにも気が付かず、いつの間にか肩も凝っている。いつものことだ。

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 端切れのアクセサリー、またこんなに作ってしまった。食べるのも飲むのも忘れて、いけない、いけない。大切なことを後回しにしてしまう。これが入院生活を繰り返す人々の悪いところといえばそんなところかしら。そういう人を集めて会議をしてみたらどうかしらなどと考え、笑いがこみ上げる。変な病人。

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 ある日娘が大きな机の上に、私が集めてきた布の山を載せて、この中の必要な布以外はこちらに分けて、思い切って捨てましょうと言った。私は魔法をかけられた人のようにその時はなって、全部要りません、お好きにしてください。としおらしくしていた。なんでそんなことを言えたのかは不思議。案の定、しばらく布を見ていると、捨てられないわ、なんで捨てなきゃいけないの。という気持ちがわいてきたが、最後は、私は病人、老いては子に従え、そちらの気持ちが勝った。

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 せめて置いておく布はプラスチックケースにきれいに並べて大切にしようと、心に誓う。どうせ私は病気よ。こんなに作れないかもね。そうですよ、そろそろ80歳に近づこうとするのにね。と思ったら、不思議なことに100歳近くまで元気で生きている方々のお姿がぽっかり浮かぶ。なぜかきれいな人ばかり。

 今日はなんだかいさぎよくない。いつもはこんなじゃないのですよ。

Profile

西村玲子

イラストレーター、エッセイスト。大阪生まれ。ファッション、インテリア、旅、映画など、日常の中で発見する心ときめくものや自然体で気持ちのいい暮らしを提案。近年、アクセサリー、写真、コラージュ、オブジェなどにも創作の幅を広げている。『玲子さんのおしゃれクロゼット』『玲子さんののんびり老い支度』など著書は200冊以上にのぼる。最新刊は『玲子さんの心地いい時間』。

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