玲子さんの素敵なひとり時間

西村玲子

玲子さんの素敵なひとり時間

2

コレクション一歩手前で

 1年ほど前、大腿骨を骨折して手術、リハビリテーション専門の病院に転院して、3か月を過ごした。その間に娘は熱心に私のマンションの部屋を片付けてくれていた。

玲子さんの素敵なひとり時間2_06.jpg

 処分してくれたのは多すぎた服や家具だけでなく、食器やお盆やかご類も少なくなっていた。私はありがとうと思いながら、なんてことをしてくれたのという気持ちも正直なところ。いさぎよくないったらない。そのたび反省するのだが、もう少し時間が欲しい気もする。

玲子さんの素敵なひとり時間2_01.jpg

 多分まだ天井裏の収納に残してあるわよと友人が言う。残っていてほしいようでいて、そうであってほしくない。この今の瞬間に忘れよう。どうしても欲しいものに出会ったら、その時手に入れれば良いのだもの。はい、今日の愚痴はこれで終わり。物に執着するのは好きではないし、そういう人を嫌ってもいる。終わり終わり。

玲子さんの素敵なひとり時間2_04.jpg

 食器を並べて絵にする。片口の小さい方、どこ行ったかしら。それはあなたが割っちゃったのよ、あ、思い出したわ。片口をあわや集め出す寸前だった。そこで何かがとめてくれなかったら今頃ずらりと片口、私は片方の口角をあげて片口自慢をしていただろう。割れてくれてよかったのかもしれない。

玲子さんの素敵なひとり時間2_05.jpg

 人がコレクションを始めるときって、すごく大きなきっかけがあるのではと思う。私がコレクションということをしないから、そう思うのかもしれないが。他人から見たら笑えるようなものを集めていたりする人もいるけれど、それは催眠術のようなものにかかっているか、病気の一つか、いや、そこまで言うかしら。私もそこまで言う病気かもね。

玲子さんの素敵なひとり時間2_03.jpg

 ともかく、今ここにある残った食器だけでも十分なインテリアの飾りになる。お食事を彩るだけではなく、こうして並べて楽しんでいる。

玲子さんの素敵なひとり時間2_02.jpg

 娘と2人でミラノに行ったことがある。ディエチ・コルソ・コモという素敵な場所がオープンしたばかりだった。邸宅の様な瀟洒な建物のショップで、レストランやカフェ、美しい庭もある。ずいぶん前のことなので、どこでその情報を仕入れたのか覚えていない。今回のイタリア旅行はここに行ったことが最大の喜び、奇跡とまで、その時私は思っていた。近くにはそこが経営するホテルもあると聞いた。行ってみたい、見てみたい。私たちの欲望は果てしなく続く。

玲子さんの素敵なひとり時間2_08.jpg

 ま、そんなものである。次に訪れることがあったら、どんなふうになっているだろうか。またどこかでこの場所の話をしたいと思う。あの素敵さはどうか残っていますように。祈りながら今回はここまで。

玲子さんの素敵なひとり時間2_07.jpg

Profile

西村玲子

イラストレーター、エッセイスト。大阪生まれ。ファッション、インテリア、旅、映画など、日常の中で発見する心ときめくものや自然体で気持ちのいい暮らしを提案。近年、アクセサリー、写真、コラージュ、オブジェなどにも創作の幅を広げている。『玲子さんのおしゃれクロゼット』『玲子さんののんびり老い支度』など著書は200冊以上にのぼる。最新刊は『玲子さんの心地いい時間』。

Pick Up Book

  • かがみの孤城
  • i
  • 私のスポットライト
  • ビオレタ
ポプラ社一般書通信 note

Pick Up Book

  • かがみの孤城
  • i
  • 私のスポットライト
  • ビオレタ