玲子さんの素敵なひとり時間

西村玲子

玲子さんの素敵なひとり時間

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季節の変化に思うこと

 季節が変化するのは嬉しい。たとえ次に寒い冬が来ると分かっていても、夏が終わり秋へという、この変化は嬉しいものだ。コートなどは何年も買っていない。めったに外出しないこういう生活だとコートのことなどに思いが至らないのだ。

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 我が家はエレベーターのないマンションの3階である。いつだったか、階段を上る途中で足がへたって立ち上がれなくなった。コートが重すぎたのだと知る。こうなってようやくそれに気づくなんて、私は自分の愚かさも知った。ことごとくそんな調子。年齢は聞かないで。令和になってから年齢はどこかの引き出しにしまってある。どこだったかしら。

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 キッチンリネンで作ったランチョンマットを取り出した。ところで皆さんはキッチンリネンにしみがついたりしたら、どうしますか。もういいかとゴミ箱にポイポイと捨てるのも気持ちいいけれど、こんなに針の通りがよくて味のある、洗いざらしの布は貴重である。汚れたところを除いてストックして、新しい何かに変身させましょう。要らないクロスは捨てる前にお電話くださいと言いたいくらい。

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 そういえば、近ごろよく電話かかりますよね。大体は不審な電話、そしてそれは悪徳商法、詐欺の一種。私は誰よりも早くその詐欺に引っかかった。変なことで自慢しているが、思い出すと恐ろしい。ある日電話がかかってきた。大阪弁のおばちゃんからである。そこがまさにウィークポイント。大阪弁を久し振りに聞いて身体がなよっとなった。関西弁を喋る人に悪い人はいない、と変な思い込みがあった。私の弱いポイントはそれだった。「どんな物でもええのんよ。邪魔や、捨てたい、と思っているものありません? なんでもいいの、それを引き取るというてんねんよ、ええ話やろ。悪い話やないで、ほんまやで」「何でもええんですか?」その関西弁が心地よいリズムになって、私はすっかり昔からの友人と話しているかのようだ。

 訪ねてきたのは暗い目をした若い女性。ここで私は覚悟を決める。あろうことか、その若い女は中に入ると玄関のドアの鍵を閉めた。ほらほらこれだ。言葉も乱暴に女と書く。私がさし出したものを見て、「こんなものは買い取れません。金か図書カードやテレホンカードはないんですか。」とのたまう。その時のことを思い出すと怒りがふつふつ湧いてくる。それでどうしたかというと、ほとんど使ってなかったカメオのブローチや安物の指輪を、ちょこまかと探し出して、まとめて渡す。悔しいけれど、それ以上ひどいことがおこらないようにと願うばかり。「じゃ、500円」と渡されて、二度とこういう事には騙されまいと思った。

 皆様もくれぐれも詐欺師にお気をつけあそばせ。ふーっ。

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Profile

西村玲子

イラストレーター、エッセイスト。大阪生まれ。ファッション、インテリア、旅、映画など、日常の中で発見する心ときめくものや自然体で気持ちのいい暮らしを提案。近年、アクセサリー、写真、コラージュ、オブジェなどにも創作の幅を広げている。『玲子さんのおしゃれクロゼット』『玲子さんののんびり老い支度』など著書は200冊以上にのぼる。最新刊は『玲子さんの心地いい時間』。

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