玲子さんの素敵なひとり時間

西村玲子

玲子さんの素敵なひとり時間

私は私、ゆったりと

 あの子たちは、どうしているのだろう。あの子たちというのは、私が可愛がって一緒に過ごしてきた子どもたち。猫、犬、そして鳥たち。その他にも出会った以上は、何とかしてその子に愛を注いでいく。それは、私の母の教えで、そのまま私の息子と娘にも受け継がれている。

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 たとえばマンションの階段にひょっこりといたペレットのような小さな動物、見逃すわけにはいかない。それを見つけた息子は、マンションの中を一軒ずつ訪ねて聞いて回ったが、飼い主は見つからなかった。そのままにはしておけない。この子は今日から西村家の家族だ。
 その子はミンクのような毛で、触り心地がいい。正確な動物名は分からない。ミンクということにした。その子のために大きめのケージを買った。部屋の一つがそのケージ専用になった。玲太郎と名前を付けた。
 何か月いたかな。ある気がつくと、その子は冷たくなっていた。だから嫌なのである。生き物と寄り添うのは辛い。楽しいけど辛い。

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 そして今、ついにどの子もいなくなった。最近ではアビシニアンのブリ、チワワのシノン。ときどき今までいた子どもたちのことを考えて、可愛かったその頃を思い出す。新たに子どもを育てるのはもうできない。私の年齢と体力では無理。


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 そんなものなのだな。命というものには限りがある。私にもじわじわと迫ってくる。やってくるなと知っているのに、ボヤンボヤンと目の前がはっきりしない。はっきりと把握しないように視力が弱ってくれているのかも。

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 こんなに生きてきたのだからもういいじゃないですか、ということもできるけど、私より年上の人々がまわりにはたくさんいらして、その方たちは何の疑問もなく、元気に歩いたり笑ったり。今まで気にしなかったからか、今は気にし過ぎるのか。楽しそうに笑いながら90歳になったわ、と話す方。お向かいの人は100歳だけど、とまたカラカラと笑われる。
 私もそんな風になりたいと願っても無理だろうけど、せめて、せめてと思ってしまう。どこまで私は欲張らねばならないんだろう。どこまでー! と叫んでしまいそうになる。私は私、自然に静かにゆったりと、それしかない。私らしくいるために、ゆったりと静かに。

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Profile

西村玲子

イラストレーター、エッセイスト。大阪生まれ。ファッション、インテリア、旅、映画など、日常の中で発見する心ときめくものや自然体で気持ちのいい暮らしを提案。近年、アクセサリー、写真、コラージュ、オブジェなどにも創作の幅を広げている。『玲子さんのおしゃれクロゼット』『玲子さんののんびり老い支度』など著書は200冊以上にのぼる。最新刊は『玲子さんの心地いい時間』。

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