玲子さんのおしゃれクロゼット

西村玲子

玲子さんのおしゃれクロゼット

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シンプル、足る

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 リフォームしてから14年、以前よりは、クロゼットも広くなり、チェストも買ったし快適な衣服暮らしが出来ている、と言いたいところだが、然さに非あらず(こんな字を書くのだ、と初めて知る)処分してはいるものの、それが追いつかないほど、購入してくる。増やしていく。広いウォーキングクロゼットがあればな、とまたどこまでも上の生活に憧れる。足るという文字がきっぱりと出てくる。足るはシンプルに続いていく。私の信条はシンプルです、などと言っていた時期もあり、そういう本を買いあさったこともあった。ミニマルという言葉を聞くとうっとりとしていた。うっとりしながら、それをまっとうできないことをようやく知る。

 イッセー尾形、宮沢りえ主演映画で『トニー滝谷』。村上春樹の短編小説の映画化で、大好きだった。宮沢りえ演じる主人公は、高級な服や小物の買い物依存症、夫は増え続ける衣服のために広い部屋を借り、そこを衣裳部屋にする。まるで高級品のバーゲン会場のようにずらりと並び、増えていく。いくら似合って、経済力もあったとしても、羨ましさを通り越して、観ているこちらも不安になってくる。

 足る、これで充分という気持ちで、その中で楽しんでいくことが大切だと思う。私のクロゼットは今の季節のものは取り出しやすい場所に、季節外れ組は右端に、左端はコート類、次はパンツ・スカート類、という風に分けている。

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 春、夏物が今の季節のクロゼットに移ってきたばかりで、何やら清々しい。色彩も明るい。砂色やエクリュ、紺や黒も、素材がこの季節のものだから軽やかだ。春服が出だした頃に、先取りで買ったコットンとリネン混紡のコートが、ようやく出番なのが嬉しくて、ちらりと着てみる。下はセーターではなくお揃いのTシャツ、どこに収納していたかしら。それに合うパンツを。姿見は玄関なので行ったり来たりと忙しい。だからウォーキングクロゼット、と言い出しそうになるところだが、足る、という喝をぴしっ。

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 自分の身の丈に合ったどんな足るだとしても、シンプルに取り出すことが出来てこそ分かりやすい。整理整頓がされている。何年も着ないものはこれからも着ないと諦めて処分する。新しくどんどん購入する前に、やらなければいけないことがこれら。私は自分を叱咤激励しながら、シンプル、足る、シンプル、足る。呪文のように唱えるのである。シンプル、足る、と言いながらストレッチも考えた。お見せしたいけれど、ここでは簡単なイラストで。

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Profile

西村玲子

イラストレーター・エッセイスト。ファッション、インテリア、映画、旅など、多彩なテーマを文章とイラストで綴り、洗練されたライフスタイルを提案し続けている。著書は最新刊の『おしゃれは楽しく いつも好きな服で』など200冊以上。

Pick Up Book

  • かがみの孤城
  • i
  • 私のスポットライト
  • ビオレタ

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