玲子さんのおしゃれクロゼット

西村玲子

玲子さんのおしゃれクロゼット

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月日は過ぎてしまっても

アクセサリーを整理していたら
次々に懐かしい思い出がよみがえる。
小さなモノたちの中には、
私の「好き」がいっぱい詰まってる。

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 アクセサリーに歴史あり。こんな小さなブローチや指輪、片手に収まるネックレス、クロゼットを整理しながら懐かしむ。

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 以前、アクセサリーの収納を自慢げにお見せしたものの、日にちが経てば、もつれ合ったネックレス、しまう場所を間違えた指輪、離れ離れのブローチたち、と小説のタイトルのような、といえば素敵だが、要するに乱雑なものになっていた。それを一つ一つあるべき場所に戻しながら、買ったときなどの思いに浸る。

 服は昔のものは処分したり、小さな布にしていろんな手作り品に姿を変えたりしているが、思い出は頭の中でそれも年齢と共に薄れていく。が、その分アクセサリーは、きっちりと存在している。

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 着けていて無くしたブローチ。ハリーウィンストンの指輪なのに、どこかでその石だけを落としてしまい、ぽっかり穴が開いたプラチナの台。シドニーで買った骨董のダイヤリングは、クリーニングに出したジャケットのポケットに入れたまま、もちろん証拠もないし出てこない。などといつまでも恨みがましく覚えているものだ。

 その時代の自分の中での流行に振り回され、ミッソーニの時代、ティファニーの時代、アンティークの時代、アルマーニの時代、シャネルの時代、マルニの時代、そして今は殆ど買わない手作りの時代、それが死ぬまで続くであろうと、予言者のように言い放つ。いろんな時代を経てやっと賢くなったというか、バブルと共に賢くなったら、そういうものに、戻りたくても戻れない。そちらに向かうと風で戻されてしまう。

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 華やかな時代をチャラチャラと身に着けていたかと思われるが、さにあらず。二つ、三つ買えば意外と落ち着いていた。マルニは別格。何年も前のマルニが好きで、その頃のアクセサリーが好きだった。

 もちろん服も好きなのだが、高級だし、そのわりには着こなすのが難しい。個性があって、そこのところがいいのだが、うーん、と言いながら、お手軽なアクセサリーを買って満足していた。マルニの服にこそ合うアクセサリーなのだけれどね、知っているのだけれどね、と心でつぶやきながら家路を急いでいた。鏡の前で早く着けて見たいのだ。

 手作り時代に入って、アンティークビーズやリボンに夢中になる。私ってこうして考えてみるとすぐ夢中になるのだ。そこが弱点。夢中になるという体質を改善せねばならない。こんな年齢になってもまだ微力ながら残っている。そこがいいのよと、そよ風と共に誰かの声がした。そうね。

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 ネックレスネックレスというお店が、渋谷にあった頃、仲良しのSさんと通いつめていた。公園通りの外れにそこがやっている素敵なアクセサリーのお店があるのよ、彼女が教えてくれた。確か、ボンマジックといったと思う。

 そこに並んでいるものは今までに見たことのない素晴らしいアクセサリーだった。宝飾店のような豪華できらきらしたものとは違って、シックで新しくて、見るだけでも充分に価値がある。しかし驚くほどのお値段で、そうだ、そこのお店でビーズを買って作ればいいのよ。Sさんと二人、あれを買ったと思えば、と高級なビーズを買う。

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 絵に描きながら、よく見ると、一つ一つのビーズの美しいこと。あれから月日が流れ、Sさんは55歳で亡くなり、ネックレスネックレスの素敵な女主人も亡くなられた。

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 しんみりしながら、クロゼットは片付いた。残っているビーズでネックレスを作ろうね、Sさんも手伝ってね。

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Profile

西村玲子

イラストレーター・エッセイスト。ファッション、インテリア、映画、旅など、多彩なテーマを文章とイラストで綴り、洗練されたライフスタイルを提案し続けている。著書は最新刊の『おしゃれは楽しく いつも好きな服で』など200冊以上。

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