「ずっと基地と暮らしてきた」沖縄の若者から見た18歳選挙世代と政治

仲村颯悟×原田曜平

「ずっと基地と暮らしてきた」沖縄の若者から見た18歳選挙世代と政治

(写真撮影:遠崎智宏/構成:南雲つぐみ)

『18歳選挙世代は日本を変えるか』(ポプラ新書)で、新たに選挙権を得た若者たちの動向と政治意識に迫った原田曜平さんと、13歳で沖縄を舞台にした映画『やぎの冒険』を監督した、20歳の仲村颯悟さんが、今夏から始まる「18歳選挙」を目前に、若者の政治意識について語ります。今回は、2016年2月に公開された仲村監督の最新作『人魚に会える日。』でもテーマとなっている、沖縄の基地移設という難しい政治問題を、若い世代はどう捉えているのかをもとに考えてみました。

賛成・反対ではわりきれない問題を映像でどう伝える

原田 仲村さんは、子どものころから沖縄の日常をテーマに映画を撮っていて、なんと13歳で長編映画の監督デビューを果たしているんですね。そして大学生になり、基地問題をテーマに「人魚に会える日。」(20162月公開)を撮っています。そのきっかけはなんだったのですか。

仲村 戦後70年経っていますが、僕らは生まれた時からずっと、家や学校の隣に基地があるのが当たり前の生活をしてきました。僕らにとって基地のない沖縄は想像できない状況だから、基地移設についても単純な賛成、反対のどちらかに割り切れない部分があって、日々葛藤しているのが現状です。しかし、大学生になって東京に来てみると、こちらの人は関心がないということ以前に、沖縄で何が起こっているのかということが、ほとんど伝わっていないということを強く感じました。

原田 基地移設に賛成か反対かではなく、一人の人の中に賛成の思いも反対の思いもあるということですね。たしかに、全国版の報道ではそういう葛藤はなかなか知り得ないところがあります。

仲村 そうなんです。沖縄の新聞には毎日のように基地のことが載っていて、辺野古の運動のこととか、どういう被害があったかということが、いつも僕らの話題になっています。でもこちらの新聞には、全然載っていないということに、東京に出てきてはじめて気づきました。

 基地問題の話はだいたいいつも、「賛成派と反対派に真っ二つに分かれて日々争っています」という報道が多いように感じます。

僕は沖縄で過ごしてきた人間として、沖縄県以外の人たちにも今の沖縄の悩ましい現状を、10代の自分なりのメッセージとして伝えたいと思いました。それには、映画という表現方法が自分にとって一番いいと思ったのです。

原田 最近でも米軍による暴行殺人事件が起きて、連日テレビや新聞でとりあげられています。また僕らの世代だと、2004年に沖縄国際大学にヘリが落ちたことを覚えている人は多いと思います。日米地位協定により、日本の警察すら現場に入れない状況が続いたんですよね。しかし全国の人々の耳に届くのは、氷山の一角なんですね。

仲村 報道されないだけで、同じ学校の友達が巻き込まれたりするようなことは日常茶飯事です。ただ、そういうことばかりでないのも事実で、英語を教えてくれる米兵がいたり、米兵と一緒だと基地の中に入れて、アメリカのものを安く買えたり、という関係もあるんです。高校では1クラスの中に、被害を受けていて「基地反対」という子がいる一方で、米兵と日本人の間に生まれたハーフの子もいる。そうすると、基地をなくすこと自体がその子の存在を否定することに繋がると思う気持ちもあるんです。

原田 若者の中でも、沖縄の基地移設や安保問題を取り上げてデモや集会を行ったり、政治討論の番組を観に行って観客席から意見したり、いわゆる「意識高い」人は、ごく一部。これまでの対談や私の調査活動から、若者のほとんどは、すごく真面目だが政治のことはよくわからない。そして、わからない人間が語ってはいけないという不安や遠慮があって、政治について考えるきっかけをつかめないでいるのです。映画は、そういう意味でも若者に訴えるよい表現方法だと思います。実際に『人魚に会える日。』を観させていただいたのですが、映像が実にきれいで惹き込まれました。

仲村 ありがとうございます。この映画の舞台になっている「辺野座」という土地は、もちろん辺野古をモチーフにしています。基地建設の進むこの村には、自然を壊すには生贄を捧げなければいけないというしきたりがあって、今回、基地建設をするにも生贄をしなければいけない。しかし、その生贄がこの村の中で見つからない...というストーリーなのですが、全体で描いているのは、基地移設について反対だとか賛成だとかではないんです。

 僕らと同世代の"悩んでいる"若者を描きたかった。例えば、同級生の中には、オスプレイの反対運動に参加して学校に遅刻したという子がたくさんいて、その一方には「なんであんなに過激に反対運動をするのかわからない」という子がいる。「基地反対」という子もいるし、基地があることで被害を受けている子もいる。僕がこれまで経験してきたことは、映画に登場する高校生たちの日常会話のひとつひとつに表れてくるんです。 

原田 若者だけでなく大人も含め、ずっと東京に住んでいたら、沖縄で何が起こっているのかということにピンとこないことがある。いまの話だけでも衝撃かもしれません。1996年に普天間基地の返還が決まったのは、沖縄の人たちにとってはすごい喜びだったと思います。ところが、同時にどこに移設するかということが問題になり、移転先の候補地として辺野古が出てきたんですよね。

仲村 ええ、いま、辺野古の海を埋め立てて基地を作るという計画が進んでいますが、沖縄の人たちにとって海はすごく大切なものなので、基地を造るために海を埋め立てるということに心からOKといえる人は一人もいないはずです。また、「基地を作る」ということにあまり加担したくないという人も多いのですが、一方で、普天間に基地を置いておくのが危険なことにも変わりはありません。2009年には当時の鳩山元首相から県外移設という発言も出ました。普天間になるか、辺野古になるか、それとも別の場所に移設するか、いろんな意見に左右されています。

原田 県外移設に反対する人もいるのですか?

仲村 いると思います。埋め立てることで儲かる人たちもいますから。基地がある土地を持っている人達を軍用地主というんですが、基地があるからこそ国からお金を貰えるということもあります。

原田 基地があることで危険にさらされる面がある一方で、すでに地域にあるものとして、経済活動の一部になっているということなんですね。

架空の村・辺野座を舞台に描く葛藤

原田 この映画の県内での反響はどうでしたか?

仲村 印象的だったのは、4050代のお客さんで「ぼくたちも若いころ、同じようなことを考えていたよ」という方が多かったことです。「解決しなければならない問題だったのに、自分は何もできなかった」と言ってくれたのです。しかし、いまの僕たちも、年配の方たちが悩んでいたのと同じように、基地移設がいいのか悪いのか、ということを一概には言えないと感じています。

原田 沖縄に暮らす当事者として、常に葛藤の中でどうしたらいいかを考えているのだと思います。それでも当事者だからこそ、立場によって考えが変わってくるということなんですね。

仲村 基地がなければ本当に平和なのかどうか、というのは、実はぼくにも分かりません。基地のない沖縄に住んだことはありませんから。むしろ、これからも基地があるなら、いまよりいい関係を築いた方が建設的だという意見だって出てくるだろうと思います。

原田 沖縄での選挙はやはり、基地の問題がもっともクローズアップされますね。仲村さんはもう選挙に行かれましたか?

仲村 はい。僕も1月に20歳になったので、今回の参院選が初の国政選挙でした。先日、いま住んでいる地域にて不在者投票を終えてきたばかりです。ただ、沖縄で選挙がある時は、常に基地問題が争点で、それだけが重視されているように見えるのも否定できません。一昨年、衆議院選挙と県知事選があったんですけど、衆議院選も県知事選も基地移設反対派が勝利しました。基地移設の受け入れ先となっている名護市長選挙は移設反対の市長が選ばれ、基地のある宜野湾市長選では移設推進派が勝ったんです。みな基地を持ちたくない、という主張で当選しているんです。

原田 基地移設は日本とアメリカの問題ですから、沖縄県内の別の地域に移設するにしても、県外移設にしても、国の政策として決まる以上、我々全員が責任を持っているのだといえます。特に沖縄は人口が少なくて、選挙になったら沖縄の事情を知っている人は少ないのに、沖縄県以外の人の意見が国としての意見になってしまうということにもなりかねない。

仲村 沖縄県民は150万人しかいないので、選挙の時には日本中の方も一緒に考えてもらわないと何も変わりません。ただ、当事者意識というところで言うと、地理的な遠さは関係すると思います。僕らも、東日本大震災や福島原発の事故をそこまでしっかり自分ごととして考えられなかったのでは、と思うところもあります。

原田 そうですね。たとえ当事者ではなく自分たちから距離の遠い話であっても、選挙権を持つということは、その決定に自分たちが関わっていくということなんですよね。

 いま、若者たちの興味や意欲が、どうしても目先のメリットに向かいやすい傾向があるのはたしかですが、そういう中でも沖縄の問題を考えるための方法があるのではないかと僕は思います。距離の遠さをカバーするようなSNSの使いかたとかインターネット選挙の実施など、これから若者世代が中心となる社会の中で、解決できる課題はあるのかもしれません。仲村さんの作品もそこで重要な役割を担うのではないでしょうか。今後の作品も楽しみにしています。

仲村 ありがとうございました。

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原田曜平さんが「18歳選挙世代」を調査・分析した、選挙の前に読みたい1冊!

18歳選挙世代は日本を変えるか』(ポプラ新書)

Profile

原田曜平

原田曜平(はらだ・ようへい)
1977年東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業。博報堂入社後、ストラテジックプラニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て、現在、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダーを務める。著書に『近頃の若者はなぜダメなのか』(光文社新書)、『ヤンキー経済』(幻冬舎新書)、『パリピ経済』(新潮新書)、『ママっ子男子とバブルママ』(PHP新書)などがある。

仲村颯悟

仲村颯悟(なかむら・りゅうご)
1996年沖縄県生まれ。⼩学⽣のころから映像制作を行う。長編デビュー作は13歳の時に監督した『やぎの冒険』(2010年)。現在、慶應義塾⼤学に在学中。『⼈魚に会える日。』は、すでに14歳のころに書き上げていたオリジナル脚本を元に、5年ぶりの⻑編2作目となる。『人魚に会える日。』は7月22日まで下北沢トリウッドにて東京アンコール上映中。

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