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第9回

幸せの国殺人事件

 幻のインディーゲーム『幸せの国殺人事件』を作った関東在住の大学生《AA》は、安堂篤子ではなく國友咲良だった――。

 その太市の主張は、すぐには受け入れられるものではなかった。

「確かに《SAKURA》の六つのアルファベットから國友咲良のハンドルネームの《RUSK》を除くと《AA》が残るけど、でも、だからって――」

 未夢は信じられないという顔で、テーブルの上のルーズリーフに赤ペンで書かれた文字を見つめている。だが、未夢が気づいたおまけシナリオのパスワードの不整合は、確かにそうであれば説明がつくのだ。パスワードの最後の鍵となるルート6のエンディングで現れるアトラクションの名称は、『幸せの国殺人事件』のゲーム内で用いられた名称ではなく、國友咲良が過去に書いた小説に登場するものだった。そんな設定を行なった人物は、國友咲良以外に考えられない。

 そしておまけシナリオを選択して再生された動画では、最後の場面にカメラを止める國友咲良の姿が映っていた。動画の中で安堂篤子を襲う役を演じ、撮影していたのは、國友咲良だったのだ。僕たちが最初に太市から見せられたものより少し長かったので、あれは未編集の状態なのかもしれない。

「もしもAAの正体が國友咲良で、彼女が『幸せの国殺人事件』を作ったんだとしたら、あの動画はなんのために撮影されたの? なんでパスワードを入力しないとプレイできないおまけのシナリオに動画を隠してたの?」

 未夢は混乱している様子で沸き上がる疑問を口にする。答えられず、助けを求めて太市の方を見たけれど、考え込むようにうつむいているばかりで、太市自身もまだこの事実に戸惑っているらしかった。

「まずはちょっと、今の状況を整理してみたらどうかな」

 僕自身、落ち着こうとそう提案すると、うなずいた太市は僕らの方に体を向けた。あぐらを組んだ足に肘を置いて身を乗り出し、確かめるように尋ねる。

「『幸せの国殺人事件』を作ったのは、安堂篤子じゃなかった。でも安堂篤子は例の動画のこと、自分の作品のために撮ったものだって言ってたんだよな?」

 その問いかけに、僕と未夢は同時にうなずいた。先日未夢と二人で安堂篤子のマンションを訪ねた時には、彼女は間違いなくそう話していた。

「でもそれは嘘だったってことになる。安堂篤子は、あの動画は自分で撮ったものだと思わせたかった。多分、俺らが國友咲良に辿り着けないようにするために」

 確かに太市の言うとおりだった。安堂篤子に自分で撮った動画だと言われなければ、僕たちは誰が撮ったのか分かるまで調べを続けただろう。安堂篤子は嘘の情報を与えることで、それ以上の追及を逃れたのだ。

「梶さんは私たちに國友咲良のことを、安堂さんのストーカーだって言ってたよね。でもそれが嘘で、あの《RUSK》のブログでの告発が本当のことだったとすると、なんで誰も耳を貸さなかったんだろう。ていうかコンクールの主催者に言うとか、他に方法はなかったのかな」

 未夢は苦しげに述べると顔を曇らせる。安堂篤子と同じ藤沢南高校への進学を目指すほど、彼女の作品のファンだったのだ。それが盗作したものだったという事実を受け入れるのは、容易ではないだろう。もしかしたら、まだ完全に信じてはいないのかもしれない。

「國友咲良の小説は、どこにも発表したことがなかったんだよな。安堂篤子が応募したシナリオより先に書いたものだって証明できなきゃ、主催者に訴えるなんて無理だろ。安堂篤子本人に言っても認めようとしなくて、それでブログで告発するしかできなくて、ストーカー認定されたんじゃね?」

 淡々とした口調で語りながらも、太市は不愉快そうに眉をひそめている。そこまで聞いた未夢が割って入った。

「だけど、どうして大学生になってから告発したの? だって二人は高校の文芸部で一緒だったんだよ。安堂さんがシナリオコンクールで入賞したのは高校生の時でしょ。自分の作品が盗作されたのなら、もっと早くに気づいてたと思うけど」

 怪訝な表情で首を傾げる未夢に、僕は「それどころじゃなかったのかも」と、考えついたことを話す。

「國友咲良の両親が事故で亡くなったのが、受賞作の公開と同じ時期だったとしたら? 同じ文芸部の部員だった安堂さんが賞を獲ったと知ってても、そんな状況で作品を読んだりする気にはならなかったんじゃないかな。きっとあとになってドラマ化された作品を観て、その内容が自分が過去に書いた小説と似ているって気づいたんだ」

 推測を伝えると、未夢と太市はいたたまれない様子で目を伏せた。それらの不幸が重なったことで、國友咲良の運命は大きく変わることになったのだと思う。

 コンクールで入賞し、鎌倉芸術大学に合格した安堂篤子の前に、その受賞作がドラマ化されたという時になって、國友咲良が現れた。そして応募したシナリオは自分の小説の盗作だったと主張した。安堂篤子にしてみれば、まさに最悪のタイミングだったに違いない。

 けれど幸いなことに、國友咲良にはそれが盗作だと証明する方法がなかった。ブログで告発されても無視をしていれば、周囲からはそんな主張をする國友咲良の方が、安堂篤子に固執するあまりおかしな考えに囚われたストーカーだと思われただろう。

 未夢と太市も、安堂篤子と國友咲良の間に起きたことを想像したのだろう。三人で重苦しい雰囲気で黙り込んでいた時だった。

「でも、結局分からないのは、あの動画だよな」

 太市は不意にそう告げると、ローテーブルの上のノートパソコンに目をやった。画面には先ほど再生された、おまけシナリオとして隠されていた動画のタブが開かれたままになっている。

「二人の関係を考えると、安堂篤子が國友咲良に協力して、動画の出演者になるとは思えないだろ。國友咲良があの動画を撮った理由も分かんねえけど、まず一番疑問なのはそっちじゃね?」

 太市の見解はもっともだった。なぜ自分の作品を盗作したと訴える元同級生の撮影する動画に、安堂篤子が役者として出ることになったのか。

「もしかして、そこに『幸せの国殺人事件』が関わってるってことはない?」

 ずっとうつむいていた未夢が、何か思いついたように顔を上げた。

「例えばだけど、『幸せの国殺人事件』のゲームのシナリオを完成させた國友咲良が、安堂さんに共同製作者になるように持ちかけたのかも。だってゲームを一人で作るなんて大変じゃない」

「ノベルゲームだったら別に一人でも作れるだろ。仮に人手が必要だったにしても、過去に自分の作品を盗作した奴を仲間にしてやるなんて、ずいぶん心が広くねえか? 俺だったら盗作を黙っててやるとか言って無理矢理手伝わせるけどな」

 僕も太市の考えの方が正しい気がした。國友咲良が安堂篤子となんらかの取引をしてゲームの製作に協力させたとしても、そのやり方は友好的なものではなかったはずだ。

「だから、國友咲良は行方不明になったのかな」

 思わずつぶやいた言葉に、太市と未夢は表情を強張らせた。

 國友咲良は、安堂篤子に協力させてゲームを作った。そしてその結果、二人の間で何かが起きて、國友咲良が行方不明となる事態になった。ハピネスランドで見つかった女性の遺体――僕はすでにそれが國友咲良のものだと、ほとんど確信していた。

 遺体発見から数日が経った今も、身元が分かったという報道はない。國友咲良は行方不明になっているものの身寄りがなく、家族から捜索願いなどは出されていないのだ。

 冬美真崇の話によれば、國友咲良の家に冬美真璃を住まわせたのは安堂篤子だという。安堂篤子は國友咲良が家に戻らないと知っていた。なおかつ、國友咲良が生きて無事でいると装う必要があったのではないか。だから真璃を、國友咲良のふりをしてあの家に住むように仕向けたのだ。

 これらの状況を踏まえて、僕たちはどうするべきか。二人の意見を聞こうとした時、太市が無言でスマホを操作し始めた。検索サイトで何かを調べている様子だったが、しばらくの間画面を見つめ、そうして何かを決意したように口を開く。

「匿名で、警察に通報する方法があるらしいんだ。メールフォームから内容を送るだけだから、こっちの個人情報を書く必要はないって」

 言いながら、太市がスマホをこちらに向けた。そこには匿名で届いた情報を警察に通報してくれるという民間団体のホームページが表示されていた。

 そういえば國友咲良の遺体が見つかったのも、何者かの匿名の通報だったとニュースで聞いた。その人物――おそらくは遺体をハピネスランドに遺棄した犯人も、同じ方法を取ったのかもしれない。

「それを使って、通報しようっていうこと?」

 緊張した様子で、「警察になんて言うつもりなの?」と未夢が重ねて尋ねる。

「『國友咲良は三年前から行方不明になってる。ハピネスランドで見つかった遺体は國友咲良なんじゃないか』って言えば、調べてくれんじゃね?」

 そう言って太市が文章を打ち込もうとしたので、「ちょっと待って」と慌てて止めた。「なんでだよ。もう通報するしかねえだろ」と、太市が苛立った声になる。

「そうじゃなくて、スマホからだと万が一こっちの情報が伝わったら危ないから、僕が塾の自習室のパソコンから通報するよ。遺体の身元が分かれば、過去のトラブルも明らかになる。犯人はすぐ逮捕されると思う」

 太市でなく、僕が通報する役目を負うべきだ。三人の中で、遺体の身元に一番こだわっていたのは僕だから、そうするのがいいと思った。塾の自習室のパソコンはネットに繋がっていて、誰でも自由に使える。僕が通っているところは大手で生徒数も多いので、そうそう個人が特定されることはないだろう。未夢に「それでいい?」と確認すると、未夢は硬い表情でうなずいた。太市は再びスマホを操作する。

「真璃に、すぐに國友咲良の家を出るように伝える。警察が調べに来るだろうから、住んでた痕跡をなるべく残さないように注意しないと」

 確かにそのとおりだった。通報の内容が警察に伝われば、きっとあの家には捜査の手が入るはずだ。

 冬美真璃に連絡がついたところで、太市と二人で未夢の家を出た。大通りの交差点で太市と別れ、駅前にある僕が通っている塾へ向かう。自習室では十人近い生徒がノートや参考書を開いて勉強していた。

 自習室の隅にある五台のノートパソコンは、一台しか使われていなかった。端の方の席に着くと太市に教わったサイトを開き、メールフォームから《ハピネスランドで見つかった遺体は三年前から行方不明になっている藤沢南高校卒業の國友咲良さんかもしれない》という一文を送信する。そしてブラウザの閲覧履歴を消すと、怪しまれないようにしばらく自習室で宿題をやってから帰った。

 匿名の通報をした翌日。僕は緊張しながら朝のニュースを見守ったが、ハピネスランドの事件の報道はなかった。夕方のニュースでも、なんの発表もなかった。考えてみれば、身元を特定するためにはDNA鑑定を行うはずだ。結果が出るには何日もかかると刑事ドラマで観た気がする。

 結局、遺体の身元が分かったという発表がされたのは、それから一週間近くも経ったお盆前の昼間のことだった。僕はそのニュースを、姉の茜と二人で昼ご飯を食べながら見ていた。

「ハピネスランドで発見された身元不明の女性の遺体について、新たな事実が判明しました」というアナウンサーの言葉に、僕は箸を手にしたままテレビを凝視した。

「DNA鑑定の結果、遺体の身元は藤沢市坂田町の大学生、國友咲良さんと判明しました。なお県警は当初、遺体の頭部に損傷があったことから他殺と見て捜査していましたが、その後の調べで國友さんの死因は、事故または自殺であると断定されました、、、、、、、、、、、、、、、、、、

「なんでそうなるの? 絶対おかしいって!」

 未夢は膝の上で拳を固め、悔しそうに唇を噛んだ。遺体の身元判明のニュースが流れた二時間後の午後三時、僕と太市は再び未夢の家に集まることになった。

「だって頭部に損傷があったんでしょ? 自分で自分の頭を殴って死ぬとか、ありえないじゃん」

「ニュースでは、事故または自殺って言ってただろ。転んで頭をぶつけて死んだのかもしれない」

「《探検わくわく島》の小島に、頭をぶつけるような場所はなかったよ。盛り土をした小さな島で、建物なんかないんだから」

「たまたま、地面から硬い石でも出てたんじゃね?」

 感情的になる未夢に対し、太市はあくまでもこの件とは距離を置きたがっていた。冬美真崇の家で、太市から父親の死の真相を打ち明けられた僕には、太市がなぜそんな態度を取るのか分かった。太市は國友咲良の死の理由を考えたくない――触れたくないのだ。

「未夢の言うとおり、僕も警察の発表は変だと思う。状況的に、自殺や事故っていうのはあり得ないよ」

 僕の言葉に、太市は「なんでお前が言い切れるんだよ」と食って掛かってきた。

「遺体を検死して現場を捜査した警察が、そう発表したんだぞ。遺体を見たわけでも、現場を調べたわけでもないのに、そんなこと分かるわけねえじゃん」

「でも遺体があった島には、ボートがなかった、、、、、、、、

 太市が何を言っているのか分からないという顔で首を傾げたので、僕は疑問に感じたことについて説明する。

 発見された遺体は、《探検わくわく島》というアトラクションの人工池に三つある小島のうち、北側の端の島に放置されていた。岸からはそれなりに距離があるので、島に渡るにはボートを使ったはずだ。もしも國友咲良が一人で島に渡ったのなら、ボートが島の周囲に残されていただろう。僕はスマホを取り出すと、あらかじめ確認のために調べた先月のニュース映像を表示させた。

「遺体発見時にヘリコプターから撮った池の映像に、ボートは一艘も映っていなかった」

 スマホなので見づらいが、《探検わくわく島》の白と赤に塗り分けられた派手なボートはどこにもなかった。小さな画面を注視する未夢と太市に、僕はさらに補足する。

「ハピネスランドが閉鎖されたあとも、工事やなんかで人の出入りがあったはずだよね。もう利用されていないアトラクションの池にボートがあったら誰かが異変に気づいて、もっと早くに遺体は発見されたと思う。そのことから考えても、やっぱりあの池にボートはなかったんだ。つまりそれって、國友咲良の遺体をあの島に置いたあと、ボートに乗って立ち去った人間がいるってことだよね」

 僕の主張を聞いて、未夢も不可思議な状況に気づいたようだ。「そうだよね。どうしてそんなことに……」とつぶやくと、顎に指を当て、思案するように黙り込む。

 でも、太市は違った。

「海斗――お前、警察がそんなことにも気づかないと思ってんのか?」

 いかにもうんざりしたという様子で、ため息をつく。

「映ってなかっただけで、警察がどっかに移動させてたのかも知んねえし、仮にボートがなかったとしても、泳いで島に渡ることはできるだろ。事故か自殺って結論に疑いがないから、そう発表したんだ。俺は警察の言うことを信じるよ。これ以上あの事件のことを調べようって言うなら、お前らだけでやってくれ」

 太市は呆れた顔でそう告げて立ち上がった。そして止める間もなく部屋を出ていく。慌てて未夢があとを追ったが、少しして沈んだ表情で戻ってきた。

「太市、今日は帰るって。もうこの件には関わらないから、事件のことでは連絡してくるなって言われちゃった」

 未夢はクッションに腰を下ろすと、不満そうに唇を尖らせる。

「太市だって、本当は納得してないはずなのに、なんであんな態度するのかな」

 太市の父親の死因について未夢に打ち明けるべきか迷ったが、太市が話していないことを、僕から話すべきではないだろう。

「元々、太市は遺体の身元を調べるのも嫌がってただろ。真璃さんに頼んで國友咲良の家を見せてもらったり、充分手伝ってくれたと思うよ。AAが國友咲良じゃないかって気づいたのも太市だし」

「でも――海斗は、どうしたいと思ってるの?」

 未夢は、自身も迷っているような口調で問いかけた。僕たちはいったい、どうするべきなんだろう。

 三年前、安堂篤子と國友咲良の間で何かが起きた。そして行方不明になった國友咲良は、ハピネスランドで遺体となって発見された。僕たちが通報したことで、遺体の身元は國友咲良だと鑑定結果が出たけれど、死因は事故か自殺だと断定されてしまった。つまり國友咲良の死には、誰も関与していないとされたのだ。

 警察のように捜査ができるわけでもない僕らに、警察が証拠を集めて出した結論を覆せるはずがない。もうやれることはないと思う。だけど――。

「國友咲良は安堂さんに、自分の作品を盗作したことをどうにかして認めさせようとしていた。彼女が目的を遂げられないまま、自殺をするとは思えない。そのことだけでも、はっきりさせられないかな」

 僕は太市のためにも、それを証明したかった。

「そうだよね。私もこれで終わりにするのは嫌だよ。國友咲良が三年前、何をしようとしていたのか、何が起きたのか知りたい」

 未夢は深くうなずくと、僕の手の中のスマホを指差す。

「さっきの映像、もう一回見せてくれない? ちょっと考えついたことがあるんだ」

 先ほどまでの心許なさは消え、未夢の瞳には、いつもの強い光がたたえられていた。渡したスマホの画面をじっと見つめていた未夢は、「やっぱりそうだ」と独りごとを言うと、さっと立ち上がり、ロフトベッドの下の学習机の引き出しから、何かのパンフレットのようなものを出してくる。大事そうにカーペットの上に広げたそれは、ハピネスランドの園内マップだった。

 折り目がつき、若干色褪せした地図にしばし見入ったあと、顔を上げた未夢が言った。 

「もしかしたらボートがなかった理由、説明つくかも。ていうか、國友咲良が亡くなった理由も分かっちゃったかもしれない、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、

 予想外の言葉に呆然としつつも、やっとのことで「どういうこと?」と尋ねる。未夢は南東の端に位置する《探検わくわく島》を指すと、そのそばでカーブを描いて北側に延びる別のアトラクションへと指を滑らせた。

「このスカイサイクルのレール、池を囲うみたいな形になってるよね」

 確かに未夢の言うとおり、地上三メートルから五メートルの高さに敷かれた空中のレールを自転車で走るスカイサイクルは、人工池の脇でカーブして、その西側のコーヒーカップのところでまたカーブして折り返すというコースになっていた。

「遺体が見つかった島は、池の北側にある、この島だった。國友咲良は何かの目的があって、ここに渡ろうとしたんだと思う。例えば《恐怖の館》で例の動画を撮ったみたいに、《探検わくわく島》でも撮りたい映像があったとか」

「それって、一人でってこと? その時は安堂さんは一緒じゃなかったの?」

 僕は島にボートがなかったのは、それに乗って岸に戻った人物がいたからだと思っていた。そしてもちろん、その人物は安堂篤子ではないかと考えていた。けれど未夢は「私は一人だったと思ってる」ときっぱり言った。

「理由は分からないけど、國友咲良は一人で島に渡る必要があった。でもボートは全部池から撤去されて、片づけられていた。國友咲良はそもそも、ボートを使うことができなかったんだと思う」

 未夢の言葉に、僕はスマホを手に取ると、もう一度ニュース映像を確認した。《探検わくわく島》の池にも岸の周辺にも、やはりボートらしきものは映っていない。確かにこの状況だと、そもそもボートは使えなかったということになる。

「太市は泳いで渡ったのかもって言ったけど、海斗じゃないんだから、こんな何年も放置されてて底も見えない池を泳ぐなんて、普通はできないよね」

 僕だってそんな池では泳ぎたくないと思ったが、話の腰を折らないように、黙ってうなずいた。

「ボートがなくて、池を泳いで渡ることもできない國友咲良は、なんとか島に渡る方法を考えた――それできっと、上から島に降りようとしたんだと思う、、、、、、、、、、、、、、、、、

 未夢の言ったことが理解できず、僕はスマホの画像と園内マップを見比べながら、何か見落としているものがあるのだろうかと確かめた。けれど遺体の見つかった小島の近くには、そこから島に降りられるような高い場所はない。岸からも距離があるし、池の水面にも、ただ三つの島があるだけだった。「降りるって、どこから?」と、戸惑いながら顔を上げた僕に、未夢は自信たっぷりに宣言した。

「國友咲良は、島に降りられる場所を、自分で作ったんだよ」

 そして人差し指を立てると、園内マップのある一点に置いた。それは《探検わくわく島》を囲うような形で設置された、スカイサイクルのレールだった。

「このカーブしたスカイサイクルのレールの一箇所にロープを結んで、反対の端っこを、ロープが島の上を通るような角度で池の対岸のレールに結ぶの。國友咲良は、レールの間に張ったロープを伝って、島に降りようとしたんだよ、、、、、、、、、、、、、、、、 、、、、、、、、、、、、

 言いながら、未夢は人差し指を、島を挟んで対面するレールへと移動させた。

 そんなことが、本当にできるんだろうか。考えもしなかった発想に、僕は言葉も継げず、その光景を想像した。スカイサイクルのレールは、高いところでは地上五メートルにもなる。そんな場所でロープを結んで張る作業をしたあとに、そのロープを伝って島に降りるなんて、池を泳ぐよりよっぽど危険なことではないだろうか。

「いや、それって相当難しいよ。レールから島までの距離は、最短でも三十メートルはある。その距離をロープを伝って移動するなんて――」

「うん。それができなくて、落ちてしまったんだと思う、、、、、、、、、、、、

 未夢は悲しげな表情で園内マップから指を離すと、クッションに座り直した。

「國友咲良は、島に降りようとしたところで、力尽きてロープを離してしまった。それで地面に頭を強く打って、亡くなったんじゃないかな」

 未夢が先ほど、國友咲良が亡くなった理由も分かったかもしれないと言ったのは、そういう意味だったのだ。確かにそれなら、死因は事故か自殺だという警察の見解とも合致する。だけど説明のつかない点があった。

「だとすると、現場にロープが残っていないのはおかしいよね。死んでしまったら、ロープの始末なんかできないし」

「ハピネスランドに入った時のこと、思い出してみて。スカイサイクルのレールに、カラスが巣を作ってたでしょ。カラスって針金とか木の枝とか、その辺にあるものを巣の材料にする習性があるんだって。多分結んでいたロープは、巣に使うために千切られて外れたんだよ。それ以外の部分は、池の中に沈んでるんじゃないかな」

 未夢の説明に、レールの上にカラスの巣らしきものが残っていたのを思い出す。だけど警察は遺体の発見現場を捜査するのに、池の中を捜索しなかったんだろうか。不審なロープが発見されたというような報道はなかったはずだ。

 それに、國友咲良の目的が動画の撮影だったのだとすると、撮影機材が残っていないのはおかしい。さすがにそんなものまでカラスに持っていかれるということはないだろう。

 それらの疑問をぶつけると、未夢は焦った顔で弁解を始めた。

「現場に何があったかなんて、警察は全部発表したりしないでしょ。とにかく、そういう状況も含めて自殺か事故って判断したんだよ。きっと」

 そうして話を打ち切ると、未夢はローテーブルの上のノートパソコンを開いた。

「とりあえずボートがなかった理由を考えるのはここまでにして、國友咲良があの動画を撮った目的を考えてみない?」

 取り繕うように提案する。その後も見返していたのか、一時停止された例の動画が画面に映し出された。

「あれから何度かパスワードを入れてみたけど、同じ動画が再生されるだけで、特に変化はなかった。やっぱり動画に何かヒントがあるのかな。私たちが太市に見せられた動画との違いは、最後に國友咲良が登場するところくらいだけど――」

 未夢は動画のウインドウを閉じると、シナリオ選択画面に戻り、再びおまけシナリオを選択する。パスワードを入力してまた動画を再生させるつもりなのだろう。

「――そういえば、前回、未夢がパスワードを入れた時、ちょっと気になったことがあったんだ」

 素早く動く未夢の指を見ていて、思い出したことがあった。「何それ」と未夢が手を止める。

「前にパスワードを入れてエンターキーを押した時、確か音が鳴ったんだよね。ぽんって。だけどこの間は、その音が聞こえなかった気がして」

 大したことではないと思ったので、何気ない調子で言ったのだが、それを聞いた未夢は目を見開いてパソコン画面を凝視した。そしてキーボードの右上の方にあるスピーカーマークのついたキーを押す。画面の下の方に音量レベルが表示され、目盛りがゼロの状態から徐々に上がっていく。そうしてエンターキーを押すと、ぽん、とあの時の音がした。

「仕組みは分からないけど、この動画を再生すると、スピーカーの音量がゼロになるような設定がされてたみたい」

 張り詰めた声で未夢が言った。それはつまり、どういうことなのか。考えが追いつかないうちに、ノートパソコンから、かすかな息づかいの音が聞こえ始めた。何度も見たあの画像。絨毯の上で影が激しく動いている。

《あと十秒したら、印をつけたところで倒れて》

 指示を出す女性の鋭い声。きっかり十秒後、安堂篤子が画面の中央に現れ、床に倒れ込む。その安堂篤子に向かって黒い棒が振り下ろされ、やがてレインコートを着た國友咲良が姿を見せた。時折放たれる硬質な音から、國友咲良が安堂篤子の体に当たらないように狙いを外し、床を打っていると分かる。

《そのまま徐々に抵抗をやめて、動きを止めて》

 再び指示が出される。この動画は元々、編集で音声を消すことを前提に撮影されていたようだ。

 画面には動かなくなった安堂篤子が映し出されていた。レインコートの國友咲良がこちらに向かって歩いてきた時、聞き覚えのある女性の声がした。

《ねえ、ノートをどこに隠したの、、、、、、、、、、、?》

 その声はあの気だるげな調子ではなく、切迫さがにじんでいた。國友咲良は、問いを発した安堂篤子を振り返りもせず、こちらに手を伸ばした。画面が揺れる。そして國友咲良が被っていたフードを外した瞬間。

島の三番、、、、

 安堂篤子には届かないような小声でささやいたのが、はっきりと聞こえた。國友咲良が顔を見せると、そのまま画面は真っ暗になった。

 僕と未夢は、しばし呆然としながら、その黒いディスプレイに見入っていた。

「――今の、どういう意味?」

 先に口を開いたのは未夢だった。

「ノートって何? 《島の三番》って?」

「僕に聞かれても、分かるわけないだろ」

 矢継ぎ早に尋ねられ、混乱しながらそう返した。

「『どこに隠したの?』って言ったのは、安堂さんだよね。あんなふうな真剣な声、初めて聞いたかも。安堂さんにとって大切なノートを、國友咲良が隠したってこと?」

 未夢の問いかけに、見たばかりの動画の内容を思い返す。二人のやり取りには、色々と不自然な点があったように感じた。

「そうとも取れる。それと安堂さん、動画の撮影が終わったところで、待ち構えてたみたいに聞いたよね。ということはもしかしたら、國友咲良はそれを教えるのを条件にして、この動画を撮るのに協力させたんじゃないかな」

 太市が言っていたように、やはり國友咲良はそうした取引の末に、安堂篤子を動画に出演させたのではないか。

 そして今の動画の中で、國友咲良はその答えを、安堂篤子には聞こえないような声で、撮影していたカメラのマイクに向かってささやいた。つまり、約束は守られなかったということだ。

「もしかして、國友咲良が亡くなったのは、このノートのことが原因なのかな。隠し場所を教えなかったから、無理やり聞き出そうとして、國友咲良が持っている棒を奪い取って――」

 青ざめた顔で未夢が想像を口にする。僕もハピネスランドに侵入した時のことを思い出していた。《恐怖の館》のあの部屋で目にしたもの。人形が座っていたロッキングチェアには、誰かの手足を縛りつけたようなロープの擦れた跡があった。あれは安堂篤子が、國友咲良を尋問した時についたものだったのだろうか。

 安堂篤子は動画の撮影後に、ノートの隠し場所を聞き出す過程で、國友咲良を死なせてしまったのか。だが、そうなるとおかしな状況になる。

「この動画を『幸せの国殺人事件』のおまけシナリオに隠したのは、國友咲良だよ。撮影直後に殺されてたら、それはできないだろ」

 僕の指摘に、未夢は「ああ、そっか。順番が変だよね」と、早とちりを恥ずかしがるように口元に手を当てる。その未夢の言葉で、思いついたことがあった。

「そうだ――そもそも順番が逆だったのかも」

 どういうことかと尋ねる未夢に、僕は今浮かんだばかりの考えを話した。

「安堂篤子はノートのありかを聞き出そうとして、國友咲良を激しく問い詰めた。それで身の危険を感じた國友咲良は、隠し場所を教えるからと嘘をついて安堂篤子に協力させて動画を撮影した。そしてその動画の中でノートの隠し場所を明かして、『幸せの国殺人事件』の中に隠したんだ、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、  、、、、、、、、 、、、、、、、、

 万が一自分が殺されても、ノートの存在が誰かに伝わるように、國友咲良は動画にメッセージを残した。自分が作ったゲームをプレイした人が、それを見つけてくれることを願って――。

「ノートを託す相手は、もちろん自分の味方になってくれる人じゃないといけなかった。だから國友咲良は、シナリオのパスワードに一つ仕掛けをした。安堂篤子が自分の作品を盗作したという告発を信じて、自分が過去に書いた『箱庭の二人』を読んだ人だけが解けるようなパスワードを設定したんだよ」

 これがきっと、國友咲良があの動画を撮影した目的だったのだ。安堂篤子には、ゲームのムービーに使う動画だとでも言ったのだろう。『幸せの国殺人事件』は遊園地を舞台に殺人事件が起きるゲームだから、安堂篤子は信じたはずだ。

 未夢は絶句したまま、真っ黒なパソコン画面に目をやった。少しして深いため息を漏らすと、「じゃあ、國友咲良はやっぱり……」と細い声でつぶやく。

 動画を撮り終えたらノートの隠し場所を教えるという約束だったが、おそらく國友咲良は約束を破り、話さなかった。そのために殺されたのだ。

 そこまで考えて、もう一つ、根本的な疑問が湧いた。

「――國友咲良が隠したノートって、いったい何が書かれていたのかな」

 思わず口にしたその問いに、沈痛な表情でディスプレイを見つめていた未夢がこちらを向く。

「それはだから、安堂さんの秘密のアイデアとか、誰にも読まれたくない日記とか、とにかく安堂さんにとって、大切なことが書いてあったんじゃない?」

 言葉を切り、考えながらといった様子で述べる。安堂篤子にとって大切なもの――それは、何をしてでも取り返さないといけないものだった。いや、大切なものとは限らない。逆に、他人に読まれると都合の悪いようなものだったとも考えられる。

 そんなものがどうして、國友咲良の手に渡ることになってしまったのだろう。そう不思議に思った時、僕らは勘違いをしていたのではないかと気づいた。

「そのノート、安堂さんのものじゃなくて、國友咲良のノートだったのかもしれない、、、、、、、、、、、、、、、、、、。安堂さんがシナリオを書くより先に、小説を書いていたっていう証拠になるような――それが何年も前に書いたものだって分かれば、安堂さんが盗作をしたって証明できる、、、、、、、、、、、、、、、、、

 未夢は目を丸くしたあと、すべてが腑に落ちたというように大きくうなずいた。

「きっとそうだよ。安堂さんは絶対にそのノートを、國友咲良から奪わないといけなかった。ボールペンで書いたものなら、インクの劣化具合とかで、いつ頃書かれたものなのか分かるって、何かで読んだことがある」

 裁判を起こしてノートを鑑定に出せば、安堂篤子の受賞作が盗作だったと法的にも認められただろう。ノートの存在を知らされた安堂篤子は、それを手に入れるためにどんな取引にも応じたはずだ。そして最終的に國友咲良がノートを渡す気がないと知り、永遠にそれを葬るには、彼女を殺すしかないというところまで追い詰められたのではないか。

「そのノートは、今もまだ、國友咲良が隠した場所にあるってことだよね」

 静かな、けれど熱のこもった声で未夢が言った。

「私、見つけてあげたい」

 僕も同じ気持ちだった。ハピネスランドで遺体となって発見された國友咲良が、命に代えても守ろうとしたもの。これまで未夢や太市とともに、あの動画と『幸せの国殺人事件』をめぐる謎を解こうと、彼女のことを調べてきた。そうして辿り着いた真相に、僕は國友咲良からノートだけでなく、無念を晴らしてほしいという思いを託されたような気がしていた。

「ノートの隠し場所――『島の三番』って言ってたよね。島っていうのは、やっぱり《探検わくわく島》のことかな」

 未夢に問われて、少し考える。他に島と聞いて思いつくのは江の島くらいだ。けれどそれなら江の島とはっきり言うんじゃないだろうか。あの最後のメッセージは別に暗号ではなく、動画を見た人に、ノートを見つけてほしくて残したもののはずだ。そう見解を述べると、未夢も同意してくれた。

「てことは、あまり難しく考える必要はないよね。國友咲良の告発を信じた上でパスワードを解いて、あの動画を見た人には分かるような場所なんだよ。安堂さんに聞き取れないように短い言葉で言っただけだとすると、普通に《三番目の島》って意味に取ればいいのかな。でもあそこの島に、番号なんてあったっけ?」

 園内マップにも番号などは書かれていないし、未夢も記憶にないという。《島の三番》とはいったい、何を指しているのだろうか。

「もしかしたら、國友咲良の小説に何かヒントがあるのかも。あの『箱庭の二人』にも《探検わくわく島》をモデルにしたボートのアトラクションに主人公が恋人と乗る場面があるんだよ」

 そう言って未夢は机の引き出しから、僕らが送った画像をA4サイズでプリントアウトしたものを引っ張り出してきた。コピー用紙をめくり、未夢が該当の箇所を確認する。けれど島に番号は振られておらず、《三番》が何の数字かを示唆する描写はなかった。

「今日はもう遅いし、手がかりを探すのは明日にしようか」

 机の置き時計を見て、僕はそう提案した。時刻は午後四時半を過ぎていた。五時には未夢の母親が帰ってくるはずだった。

「ごめん、私、明日は出掛ける用事があるの。お母さんと葉山の叔母さんちに行くことになってて――でも、調べるのは急がなくていいんじゃない? どうせハピネスランドの中に入るのは、今は無理だし」

 未夢に予定があるのは良いとして、ハピネスランドに入れないというのは初耳だった。どうしてかと尋ねると、未夢は呆れたように言った。

「だって遺体が発見されたんだよ? 警備が厳重になったに決まってるじゃん。私たちが入るのに使ったフェンスの穴だって、ちゃんと塞がれてたもん」

 未夢はつい先週、買い物帰りに母親の車でハピネスランドの近くを通ったのだそうだ。その時には、入り口の門の前に制服警官まで立っていたという。

「どっちにしても、ハピネスランドの中に入れるのは事件の騒ぎが収まってからになると思う。多分、夏休みいっぱいは無理じゃない? だから《三番》が何を指すのか調べるのは、ゆっくりで大丈夫だよ」

 ノートを探すのがそんなにも先になるとは思っていなかったので、僕は拍子抜けしてしまった。でも考えてみれば未夢の言うとおり、遺体が発見されてからまだ半月くらいしか経っておらず、しかも今は遺体の身元が分かったというニュースが流れた直後なのだ。

 太市はこの件にはもう関わらないと言っているし、僕と未夢だけでやるしかないのだとすると、隠し場所を特定するだけでもかなりの難題だ。

「まずはハピネスランドのこととか、國友咲良のこととか情報を集めようよ。私は先にハピネスランドについて調べてみる。まだ色々知らないこともあると思うから」

「分かった。だったら僕は國友咲良のことを調べるよ。藤沢南高校の文芸部にいたって人に、他に知ってることがないか聞いてみる」

 これからのことを打ち合わせると、お互い何か分かったら連絡しようと決めて、玄関先まで見送ってくれた未夢と別れた。

 あまりしょっちゅう遅くなると心配されそうなので、今日はまっすぐ家に戻った。リビングでは姉の茜がソファーに腰掛け、重い表情でスマホをいじっていた。

「どうしたの? ガチャ外れた?」

 自分のスマホを充電ケーブルに繋ぎながら、いつもの育成ゲームをやっているのだろうと声をかける。姉は「違うよ。ほら、昼間のニュースのこと。ハピネスランドの」と、こちらを振り向いてしゃべり出した。

「遺体の身元が分かったでしょ? そのことで、文芸部だった友達がびっくりして連絡してきたんだよ。彼女は午後になって知ったみたいで」

 部長をしていたその友達はOBやOGとも繋がりがあり、國友咲良の両親が亡くなった時には葬儀にも参列したと聞いていた。それだけ付き合いのあった先輩が、そんな形で亡くなっていたと知らされたら、それは相当なショックだろう。

 姉は眉を曇らせると、友達とLINEのやり取りをしているらしいスマホの画面に視線を戻した。

「彼女、安堂さんに詳しいことを聞きたくて何度も連絡してるのに、返信がないって困ってるの」

 このタイミングで安堂篤子の名前が出たことに動揺しながらも、安堂篤子は國友咲良と同学年で、同じ文芸部に所属していたのだと思い出す。

「そっか。確かに安堂さんは亡くなった人と親しかったはずだよね。同じ学年だし」

 そう相槌を打つと、姉が「何言ってるの?」と怪訝な顔になった。何か変なことを言っただろうかと首を傾げていると、「ああ、海斗には教えてなかったっけ」と、一人で納得したようにうなずく。そして続けた。

「亡くなった國友咲良さん、安堂さんとは同級生ってだけじゃないの。安堂さんのお母さんが國友さんのお父さんの妹で――つまり二人は、同い年の従姉妹なんだよ、、、、、、 、、、、、、、、、、、

※連載は今回が最終回です。本作は、2023年夏ころに書籍化予定です。おたのしみに。

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