
- #書評
フェアプレイと意外性を両立させた青春本格ミステリ【書評:千街晶之】
楠谷佑の新刊『ルームメイトと謎解きを』の帯の推薦文を青崎有吾が書いているのを見て、「そうか、もう一九九○年代初頭生まれの作家が、一九九○年代の終わりに生まれた作家の推薦文を書く時代なのか」と、自分が歳をとったことをしみ…
楠谷佑の新刊『ルームメイトと謎解きを』の帯の推薦文を青崎有吾が書いているのを見て、「そうか、もう一九九○年代初頭生まれの作家が、一九九○年代の終わりに生まれた作家の推薦文を書く時代なのか」と、自分が歳をとったことをしみ…
なんという愛され力の高さなんだ! と、自分の頬が緩んでいるのを感じながら読み終えた。強くて、だけど脆くて、むさくるしいのに可愛らしい。不器用で言葉足らずで、もどかしくて懸命で、笑いながらちょっと泣けてくる。つまり端的…
いいなあ、これ。時間がゆったりと流れていくのだ。 たとえば、「一九七五年 処暑」と題された二番目の章は、家庭教師光野昇の側からある家庭を描く章だ。この「家庭」こそ、本書の中心となっている藤巻家である。中学三年の和也は…
立春、啓蟄、春分、穀雨、立夏、夏至、処暑、秋分、立冬、冬至……。一年を二十四の季節に分けた二十四節気、あなたはすべてご存知だろうか。春分と秋分にお墓参りをするなどこの季節に合わせて年中行事を実践したり、手紙などの季節の…
巻頭に、作中人物の「私」が記した「序」がある。最初の一行は、〈これは物語という病に憑かれた人間たちの物語である〉。倉数茂『名もなき王国』は、読み進めるうちに、作中人物だけでなく読者もが物語という病に憑かれてしまう、不思…
《これは物語という病に憑かれた人間たちの物語である》という一文で幕を開け、《語りはつねに騙り、、であ》ると物語の虚構性にピンを刺す。そうして語りはじめられ、1人の男が静かに《瞼を閉じ》るまでの502ページ。主な登場人物は…
「サクラダリセット」シリーズや『いなくなれ、群青』にはじまる「階段島」シリーズで人気を博し、昨年は『昨日星を探した言い訳』で山田風太郎賞の候補になるなど注目される河野裕。新作『君の名前の横顔』は、ある家族の物語である。 …