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みんなのふこう 葉崎は今夜も眠れない

文 月

 七六・六メガヘルツ、葉崎はざきFMがニュースをお伝えします。
 入ったばかりのニュースです。本日午後九時すぎに、葉崎東海岸の上空におびただしい光の筋が見えるとの通報が相次ぎました。そのため、この現象をひとめ見ようと集まったひとたちが海岸道路にあふれ、混雑からケガ人が出ているとの情報も入ってきています。専門家によれば、この光は大気圏内に突入した何らかの物質が燃え上がることで発生したいわゆる流星であるとの見方が強く、警察や気象庁では冷静な対応を呼びかけています。
 あ、たったいま新しい情報が入りました。これによると、葉崎東海岸上空の流星群見物に集まったひとたちが混雑から押し合いになり、十数人が海岸道路から転落して、海岸で将棋しょうぎ倒しになりました。この事故で、現在、わかっているだけで八人が病院に運ばれ、手当を受けています……。

葉 月

 七六・六メガヘルツ、葉崎FMが二十二時をお知らせいたしました。
 毎日毎日、やっぱり暑いね〜。こんな日は、葉崎の海水浴場に行って、海に飛び込んで、へとへとになるまで泳いだあと、青のりをたっぷりかけた冷たいところてんをつるつるっとやるのがいちばん、なんだけど、なかにはそれがムリって気の毒なひとも。
 葉崎北町のラジオネーム〈ロマンスの仏様〉さんから。
瞳子とうこさん、聞いてください。わたしは受験生です。藤沢ふじさわの予備校に通ってます。今日、予備校のエアコンが壊れました。暑さに耐えかねて図書館に行ったら休みでした。家に帰ったら、母親はエアコンの効いた部屋で爆睡したとかで、晩ごはんができてませんでした。明日はなにがなんでも海に行って憂さ晴らししようと友だちと計画してたのにそれがバレ、受験生がなに考えてるんだって父親に説教されました。も〜、サイアクの夏です〜。』
 〈ロマンスの仏様〉さん、それはご愁傷しゅうしょうさまでした。でも言っとくけど、オトナになったらエアコンが切れても休みなしで仕事なんてことだってあるし、瞳子ねえさんなんか、夏休みもなければごはんの支度をしてくれるひともいないんだよ。かわいそうなのはオトナのほうだって。きみは受験がすんだら遊べるんだし、もうちょっとがんばれよ。
 てなわけで、毎週土曜、夜九時から深夜十二時まで、葉崎FMがお送りする〈町井まちい瞳子のライトハウス・キーパー〉、このあと、葉崎ローカルニュース、気象予報に続いて人気コーナー「みんなの不幸」をお送りする予定です。
 ここだけの話、まさかこのコーナーに人気が出るとは瞳子ねえさん、これっぽっちも思ってませんでしたよ。はっきり言えば、木之内きのうちディレクターとアシスタントのサイトーくん、あたしの三人で企画会議と称して居酒屋で明け方まで飲んだくれてるうちに、誰が言い出すともなく決まっちゃったコーナーなのね。
 あのときはもう、これは日本の放送史を塗り替えるすばらしいアイディアだと思ったんだから、酔っぱらいってのはマジ、どーしよーもないよね。勢いで企画書出したら通っちゃって、本番が近づいてから青くなった。こんなの投書もメールも来ないだろうと思ったの。ところがどっこい、放送開始から三ヶ月、反響がすごくてびっくりしてます。
 神奈川かながわ県の辺境、田舎いなか、いやど田舎の葉崎にFM局を開いて紆余曲折うよきょくせつ、来年で十五周年。ニッポンでいちばんリスナー数が少ないFM局だと思ってたら、案外そうでもなかったみたい。なんと、開局以来の投書数だって。
 初回、あたしの不幸を話したのがよかったのかもね。学生時代、デートで猫島ねこじま海岸に行って、ふざけまわってるうちにビキニの下、流されちゃって、おまけにクラゲに刺されたって話。以来、彼とは連絡がとだえ、三十四歳になる現在まで、はい、独身です。
 まあ、それからたくさんの失敗談や不幸話の数々、お送りくださって瞳子ねえさん、感謝してますよ。今日もね、すごいのが来てます。かなり長文のメールだったんで、ディレクターズ・カットしたんだけど……。
 なによ、サイトー。
 え? いいかげんにニュースを読め?
 はいはいはい、それではここで、葉崎ローカルニュースをお届けしましょう。
 先月七日、葉崎東海岸で流星群見物の客が将棋倒しとなる事故がありましたが、この際、意識不明の重体となって葉崎医大病院に入院中だった男性の身元が今日、判明しました。
 この事故は、先月七日午後九時すぎ、上空に白い光の筋がいくつも現れた、光のひとつは東海岸の沖合に墜落したなどという目撃がネット上に数多く書き込まれ、東海岸一帯に多数のひとがつめかけた結果、道からひとが押し出され、将棋倒しになったもので……。

* * *

葉崎FM〈町井瞳子のライトハウス・キーパー〉係
町井瞳子さま
ラジオネーム・ココロちゃんのぺんぺん草

 瞳子さん、はじめまして。瞳子さんの番組はいつも楽しく聴かせてもらってます。
 わたしは神奈川県葉崎市に住む十七歳の高校生です。
 実を言うと、これまでラジオなんてほとんど聴いたことがありませんでした。でもこの夏休み、お弁当屋さんでバイトを始めたら、作業場でいちばんえらいパートの香坂こうさかさんがラジオ好きで、仕事中ずっと、葉崎FMを聴くことになりました。
 そうしたら、なんだかラジオを聴くのが楽しみになってしまい、はじめてもらったバイト代で、携帯用の小さなラジオを買ってしまいました。残念ながら、家族にも友だちにも不評です。いまどきラジオなんて、とか、ラジオ専用機なんてまだ売ってるんだ、とか言われ放題です。
 ついでだから競馬新聞と赤鉛筆を買ってやろうか、と父にはからかわれました。父が葉崎に家を建てたのは、葉崎競馬場のためなんじゃないか、と母はこぼしています。
 誰もわかってくれなくても、わたしはラジオの味方です。葉崎FMが好きで、なかでも〈ライトハウス・キーパー〉の大ファンです。いちばん楽しみにしてるのは、「みんなの不幸」のコーナー。このコーナーが始まる土曜の夜の十時頃には、勉強もお風呂も姉弟ゲンカも中断して、かならず聴くことにしています。
 世の中って、ほんとにいろんな不幸があるんですね。わたしは大学進学を希望してるんだけど、ムリして家を建てちゃったし、おばあちゃんは介護が必要だし、父はお馬さんにつぎこむし、私立大学はムリかもって、母に言われてしまいました。
 おかげでしばらくは、わたしって、不幸のどん底娘だと思ってました。
 でも、「みんなの不幸」を聴いてるうちに、それほどでもないか、と思うようになりました。
 それに、ココロちゃんという友だちができてからは、ひょっとしたら、わたしってむしろハッピーでラッキーなんじゃないかとも思うようになりました。
 ココロちゃんとはお弁当屋さんのバイトで知り合いました。わたしの周囲でただひとり、ラジオをうらやましがってくれたコです。
 お弁当屋さんで働いているおばさんたちは、みんな慣れているし、仕事も早い。入ったばかりのわたしは追いつくのが精一杯で、よく香坂さんに怒鳴どなられています。香坂さんは斜めにこっちを見据えるくせがあって、そうやって見られるとかなりこわい。他のパートさんも泣かせちゃうくらいだから、しかたないんですけど。
 でも、香坂さんはわたしより仕事がのろいココロちゃんは𠮟しかりません。それどころか、仕事をあがるときにいつも、あまったお総菜をどっさりココロちゃんにあげて、
「ちゃんと食べるんだよ。いいね」
 と優しく声をかけています。
 一度、それについてちらっと文句を言ったら、
「いいの。アレはかわいそうなコなんだから」
 そう香坂さんにぴしゃっと言われてしまいました。
「あのコって、香坂さんの知り合いなんですか」
「まあね。ほら、ひと月ほどまえ、葉崎東海岸で将棋倒しの事故があっただろ。あのとき知り合ったんだ。まあ、あのコがアタシの下敷きになったんだけどね」
 香坂さんはがっちりとした大柄。このひとに上に乗っかられるのはカンベンしてほしい、という体格をしています。ていうか、
「えっ、それじゃ香坂さんもあのコもUFO見物に行ったんですか。意外と物好きなんですね」
「どうだっていいんだよ、そんなことは。ま、アンタはどんなに怒鳴っても、ちっともヘコまないじゃないの」
 内心、かなりびくびくしてたのに、そうは見えなかったらしい。次に怒鳴られたら泣いてみようかしら、と思ってたら、香坂さんが「それに」と付け足しました。
「あのコ怒鳴ったら、よけいに仕事が増えるんだよ」
 なるほど、ココロちゃんはいつも一所懸命な感じがします。でもって、びっくりするほど不器用です。香坂さんにお総菜をもらって、
「ありがとうございますぅ」
 とお辞儀をした次の瞬間、そのお総菜を床にぶちまけちゃったり。
 お客さんに「いらっしゃいませ」と言おうとして、舌をみ、口からだらだら血を流したり。
 おつりを間違えて、お客さんに怒られて、カウンター内でうろうろしたあげく、大量の十円玉を〈肉団子と菜の花の黒酢あんかけ〉にじゃらじゃらと落としたり。
 ココロちゃんを接客にまわすのは、やめたほうがいいんじゃないかとよく思います。でも香坂さんに言ったら、
「アタシもそう思って、最初は調理場を担当させたんだ。そしたら漂白剤を食用油と間違えて、鍋に入れちゃったんだよ」
 香坂さんは派手にため息をついて、言いました。
「いいコなんだけどね。なんというか、ちょっと、疫病神が入ってるんだよね」
 どういう意味だかいたんですけど、香坂さんは教えてくれませんでした。おまけに、本人にはりついてればわかるよ、と言って、わたしをココロちゃんの世話係に任命してしまったんです。
 おかげでバイト中、一瞬たりとも気が抜けません。ココロちゃんは予想不能なことをしでかす天才なんです。
 〈肉じゃがコロッケ〉と〈アジフライ〉の札を逆に出したり、しょうゆとケチャップを間違えて渡すくらいは朝飯前。オーダーだって、よく間違える。なんか、ぽっちゃり系のお客さんは大盛ショウガ焼き定食弁当って、決めちゃってるんじゃないかしら。
 今日なんか、ダイエット弁当を注文したのに〈がっつりカロリー弁当〉を渡されたお客さんが激怒して店に戻ってきて、店長に長々とクレームをつけました。結局きれいに食べちゃったっていうんだから、そんなに怒らなくてもよさそうなもんですけど。
 ただしこういうことがあると、矢面に立たされるのはココロちゃんじゃなくて、世話係のわたしです。まあ、𠮟られるのは形だけ。みんな、わたしのせいじゃないことはわかってますから。でも、香坂さんじゃなくて、店長に怒られたのははじめてで、わたしよりココロちゃんが震え上がってしまいました。
 帰り道、あまったお総菜をたくさん抱えたココロちゃんは、ごめんね、ごめんね、と言いながら、駐輪場にむかうわたしのあとをくっついてきました。もういいよ、と言っても、わかったから、と言っても聞いてません。
 どことなくチワワに似たココロちゃんが、目をうるうるさせて、あやまりながらついてくる。はっきり言って、注目の的です。ていうか、わたしが超いぢわるに見えるじゃないですか。
 思わずどんどん早足になって、ココロちゃんの「ごめんね」がだいぶ後ろになったなあと振り返ってみたら、ココロちゃんは転んでて、地べたにいつくばりながら、まだ、ごめんね、ごめんね、と繰り返してました。慌てて戻って、助け起こしたら、トレーナーの前面にお総菜がへばりついてべとべとです。転んだはずみに総菜の容器がつぶれたんですね。
 しかたないので、自転車の荷台にココロちゃんを乗せて、家まで送ることにしました。
「うちは遠いんです。いまは農家の物置を借りて暮らしてるので」
「は? 物置? どういうこと?」
 そう訊くと、ココロちゃんはちょっと得意げに、
「一ヶ月前にちょっとした事故で入院したんですけどぉ。そのとき知り合った農家のおばあさんが親切で、わたしに物置貸してくれたんですぅ。おふとんも貸してくれたし、ただで、いつまでもいてくれてかまわないって、そう言ってくれたんですぅ」
「え、だって、ひとりで住んでるわけじゃないんでしょ」
「ちゃんと、ひとりで住んでますよぉ」

 冗談かと思ったんですが、遠慮するココロちゃんを送り届けてみたら、ホントにそこは物置でした。
 物置っていうか、倉庫なんだろうか。床は地面で、屋根と壁はトタン板でできていて、中に入ると壊れたトラクターと、肥料みたいなものが積んであります。広いことは広い。体育館の半分くらいの大きさでしょうか。でも、窓がない。
 倉庫の右側には、不思議な色のライトがついてて、植物の鉢植えがずらっと並んでる。
 その反対側のいちばん奥に、コンクリートブロックとベニヤ板が敷き詰められた三畳ほどのスペースがあって、さらに古いじゅうたんが敷いてあって、上に裸電球が一個、ぶらさがっています。脇にはおふとんがたたんであり、タンス代わりらしい古いスーツケースがありました。
 要するに、ここがココロちゃんの住まいでした。
 ココロちゃんはちゃぶ台の上にお総菜をていねいに並べると、コップをふたつ取り出して外へ行き、水をくんで戻ってきました。
「冷蔵庫がないもんですからぁ」
 ココロちゃんはにこにこしながら言いました。
「飲み物とか買っておけないんですけどぉ、でも、ここのお水、おいしいんですよぉ」
 あとで学校の友だちに訊いたら、ココロちゃんが住んでる葉崎北西部の城井しろい地区は日本の名水に選ばれたこともある、おいしい水の産地なんだそうですけど、はっきり言って水の味なんか、わかりませんでした。
 だって、これってホームレス……ってことですよね。
 公園で寝起きしてたり、ダンボールのおうちに住んでるわけじゃないけど。
「あのさ、ココロちゃんって、親、どうしてんの?」
「あ、わたし、父親っていないんですよぉ。お母さんも誰だかわかんなかったみたい。なんか、ずいぶんおなかがはってるな、便秘かなと思ってたら、わたしが入ってたそうなんですぅ」
 ココロちゃんはフツーに答えました。わたしはひっくり返りそうでした。
「それじゃお母さんとふたりで暮らしてたの?」
「ううん、お母さんは子育てとかあんまり得意じゃなくって、そんな人間に育てられたら子どもがかわいそうだからって、わたしのこと、施設に預けてくれたんですぅ」
「え、じゃ、ずっと施設で……?」
「じゃなくって、中学を卒業するころに、お母さんが迎えに来てくれて、横須賀よこすかのアパートで一緒に暮らしてたんですぅ。でも、ほら、わたしって不器用だから、お母さんのこと怒らせちゃってぇ」
 よくよく聞いてみると、こういうことでした。
 ココロちゃんは中学卒業と同時に、お母さんに言われて、お母さんの知り合いのおばさんの店で働き始めたんだそうです。そこではトシを訊かれたら十八歳って答えるように言われてたのに、なにしろココロちゃんだから、んなことすっかり忘れて、ホントのことを言っちゃった。おばさんは逮捕されて、お店もつぶれたそうです。
 その次に、今度はまたお母さんのススメで、ココロちゃんはギャンブルをやっているひとたちに飲み物を運ぶ仕事を始めました。でも、勤めだして一時間もたたないうちに手入れがあって、みんな警察署につれていかれてしまいました。お母さんも呼び出されて、刑事さんにものすごく怒られてた、とココロちゃんは言いました。
 そのせいか、お母さんはもうアンタとは暮らしたくない、と言い出し、ココロちゃんはアパートを追い出されました。それで、ファミレスでバイト募集の張り紙を見て、応募してみたら、採用されました。
 これで生活費も稼げるし、お母さんに許してもらおうと思って、アパートに帰ったけどお母さんはいなかった。お母さんの行きつけのパチンコ店が火事になったというんです。
 お母さんは退院すると、どこかに行ってしまいました。

 あの、これって、けっこうひどい話……ですよね?
 わたしはショックを受けました。
 でも、なにしろ本人は、全然、ひどい話だと思ってない。ぜんぶ、自分が不器用なせいでお母さんに迷惑かけたと思ってるんです。
 なんか言いたいけど、なにも言えなくて、とりあえず、わたしはじゃまた明日って、物置を出ました。出て、思わず深呼吸しちゃいました。物置はほこりっぽいし、いろんな古いものの妙なニオイもしてました。
 見ると、母屋っていうんですか、ココロちゃんに物置を貸してくれたひとの家が門の奥まったところにそびえ立ってて、これがまあ、父ががっくりしそうな豪邸でした。ぜったいうちの四倍は広い。カリフォルニアあたりに建ってそうな真っ白い家で、駐車スペースには外車が何台も停まっています。
 ココロちゃんがじょうろを持って小走りに出てきたので訊いてみると、あの母屋にはおばあさんとその息子がふたりで暮らしてますぅ、と言いました。
「このあたりじゃ、城井のシンデレラ城って呼ばれてるんですよぉ。すごいでしょぉ」
 じょうろをどうするのか訊くと、ココロちゃんはにこっと笑って、
「預かってるハーブにお水をあげるんですぅ」
「ハーブって、あの物置に並んでた鉢植え?」
「おばあさんの息子さんに頼まれたんですぅ。すっごい貴重なハーブで、新種だそうなんで、その世話をする約束で、物置をただで貸してもらえたんですぅ。お水あげて、一日中あのライトあててなくちゃならないの。慣れるまで、よく眠れなかったけど、最近は大丈夫になりましたぁ」
 言ってから、ココロちゃんは口をおさえて、しょんぼりしました。
「ハーブのことは、あんまりひとにしゃべっちゃいけないんでしたぁ。盗まれたらたいへんだから」

 瞳子さん、なんだかものすごく長いメールになっちゃいました。ごめんなさい。
 けど、ココロちゃんのこと、あれこれ考えてたら、どんどん長くなっちゃって。
「物置をただで貸してくれた親切な農家のおばあさん」って、ホントにそうなのかなって。「物置にただ働きの使用人をおし込んでこきつかってる強欲なばあさん」が正解なんじゃないかって、気がします。
 でも、そんなこと言ってココロちゃんが追い出されても困るので、もし、このメールを使うなら、そこらへんは放送ではカットしてくださいね。
 友だちにはなんとなくココロちゃんの話はしづらいので、つい瞳子さんにメーワクをかけました。長すぎてホント、ごめんなさい。
 では、このへんで。あさっての〈ライトハウス・キーパー〉の放送、楽しみにしています。

* * *

 ……というお話でしたが、いや、なんというか、〈ココロちゃんのぺんぺん草〉さん。ひっくり返ったのは、あなただけじゃないと思うよ。ひどい話だよ。
 今回はディレクターズ・カット版だったけど、それでも放送聴いたひとはみんな驚いたよね。ノーカット版読んだ木之内ディレクターなんか、半泣きだったもん。いいな〜ココロちゃん、いいな〜って。いや、状況はちっともよくないけど、けなげっていうか、なんていうか。
 〈ココロちゃんのぺんぺん草〉さん、またココロちゃんの近況、知らせてくださいね。瞳子ねえさんも応援してますから。てか、生きてるかどうか心配だからさあ。頼むね。
 さて、ではここで七六・六メガヘルツ、葉崎FMがニュースをお届けします。
 入ったばかりのニュースです。本日午後、神奈川県警と葉崎警察署は、大麻を大量に所持していた男を逮捕しました。捕まったのは葉崎市城井に住む農業・三塚猛史みづかたけし容疑者五十二歳で、自宅からは十五キロの乾燥大麻のほか、栽培中の大麻五十鉢が押収されました。調べに対し、三塚容疑者は容疑を認めており、十年ほど前から自宅の物置で大麻を育て始めた、儲もうかるのでやめられなかったと供述しています。また、一緒に住む七十二歳の母親と、敷地内に同居していた十七歳の少女も事件に関わっているとみて、現在事情を訊いています。
 三塚容疑者は複数の外車を乗り回し、自宅は近所からシンデレラ城と呼ばれるほどの豪邸で……。
 って、うそ! まさか、ハーブって……。


続きは2022年1月5日頃発売予定の『みんなのふこう 葉崎は今夜も眠れない』でぜひお楽しみください!!

Profile
若竹七海
1963年東京都生まれ。立教大学文学部史学科卒。91年『ぼくのミステリな日常』でデビュー。2013年、「暗い越流」で第66回日本推理作家協会賞「短編部門」を受賞。15年、『さよならの手口』でミステリファンクラブ・SRの会による「SRアワード2014(国内部門)」を受賞。17年『静かな炎天』でマルタの鷹協会選ファルコン賞と「SRアワード2017(国内部門)」をダブル受賞。他の著書に『悪いうさぎ』『プラスマイナスゼロ』『御子柴くんの甘味と捜査』『殺人鬼がもう一人』『不穏な眠り』『パラダイス・ガーデンの喪失』など多数。日常の延長で事件が起こる “コージーミステリー” の旗手。

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