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見守ることはできるのか
十六 見守ることはできるのか 誰にも気づかれないように見守る。 自分で言っておいて、すぐにそんなことはできないんじゃないだろうかって考えてしまいました。 禄朗さんも、お父さんも、うーん、と考え込んでしまいます。「無理、…
十六 見守ることはできるのか 誰にも気づかれないように見守る。 自分で言っておいて、すぐにそんなことはできないんじゃないだろうかって考えてしまいました。 禄朗さんも、お父さんも、うーん、と考え込んでしまいます。「無理、…
十五 アンパイアを殴った理由は こんな偶然が起こるなんて。 野々宮真紀さんと優紀くんが一緒に暮らし始めた、真紀さんにとっては義理の祖父に当たる人が、禄朗さんが殴ってしまったアンパイアだったなんて。 荒垣球審その人だった…
赤、ピンク、白、紫、オレンジ、黄色、青。 さまざまな色が並び、目にも鮮やかだった。これならば鯨沼くじらぬま駅からでてきたひと達の目を引くだろう。 いずれもスイートピーだ。花の中でもとりわけカラーバリエーションが豊富…
十三 人に歴史ありというけれど 私のコーチをしてくれていた仁太さんは〈花咲小路商店街〉の名物男でした。 世界を放浪した後に商店街に帰ってきて、おじいさんがやっていた〈喫茶ナイト〉を受け継いで商売をやってきて。 商店街で…
空から白い雪が、音もなく舞い落ちている。 今年も冬がこの街に訪れた。 心に積もる悲しみは、この雪のように溶けることはない。 もう何年も、冬に閉じこめられているようだ。 暗闇の中でじっと身を潜めて生きてきた。 なにも見な…
1 緑色の化け物が笑っている。 私はそいつに振り回され、子供の頃に海水浴場で大きな波に巻かれた時のように天地がわからなくなり、渦の中で回っている。 化け物の笑い声が遠のき、水中特有のくぐもった聴こえ方でさまざまな音…
十一 ユイちゃんと真紀さんと私 「そう、うちの旦那さんは、ゲームセンターの社長ではあるけれども、ラノベ作家でもあるの」 その区切りというか、仕事をしている中で社長業と作家業の切り分けをどういうふうにしているのかな、と思う…
この本は、「いらっしゃいませ」やメニュー、代金が言えず、接客のアルバイトをあきらめていた若者たちが始めた風変わりなカフェを取材したルポルタージュだ。若者たちの共通点は話し言葉がなめらかに出ない「吃音(きつおん)」があると…
十 義弟の禄朗くんが二十年前に殴った男が 晴れた日には、必ず散歩する。ウォーキング。時間はその日によって違うけど、今日はこれからだ。 原稿は、さっき入稿したっていうメールが来た。これで唯一続いているシリーズ『異邦のゲー…
九 娘の相手は元警察官でたいやき屋でアンパイア 離婚したって、娘は娘だ。 俺の血を分けた子供だ。たとえ離婚して離れ離れになってからもう十五年が経ったとしても、娘は娘だ。 って言ってもだ。 自分ではそう思っていても、世間…