土曜日の午後。　通いなれたいつもの道を、わたしはドキドキしながら自転車で走っていた。　図書館の手前でブレーキをかけて、大きなランプの形をした看板の横に自転車を止める。〈らんぷ亭〉は、雲峰市立図書館のとなりにある喫茶店だ...

　六年生にもなると、クラスメイトの半分近くが、どこかの塾に通っていたりするものだ。　わたしの家にも、どうやって調べたのか、去年ぐらいから学習塾のチラシがひんぱんに届くようになった。　大手のチラシには、受験に興味のないわた...

「あー疲れた」　始業式の翌日。　ひさしぶりの六時間授業を終えて、わたしが自分の席で大きく伸びをしていると、「しおりちゃん」　扉の近くでわたしを呼ぶ声がした。「あ、怜耶ちゃん」　陽山小学校では、五年生から六年生にあがるとき...

「その本をおとなしく差し出せば、命だけは助けてやろう」　真ん中にドクロの描かれた帽子をかぶった海賊の親分は、そういってニヤリと笑うと、わたしの身長ぐらいありそうな半月刀を、王子の胸元に突き付けた。　甲板に降り注ぐ太陽の光...