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【うちがふつうで、よそがへんなの!7】命日
父の命日は、六月の終わり。 昼過ぎにひとり暮らしの部屋を出て、実家に向かう。 乗り換えの駅にある花屋で、花束を買う。うちは誕生日でも命日でも、花束を贈るときには、明るく大きくうつくしいものと決まっている。時間もなかっ...
「うちがふつうで、よそがへんなの!」は母の口ぐせである。言われるたび、私はむくれた。うちはどこか変なんじゃないかと、思っていたのだ。けれどいまは、人はそれぞれ、自分の暮らしをふつうとして生きているのだとわかる。だから、この連載では、小原家のふつうの話をふつうに書いていくつもりである。
——小原晩
『ここで唐揚げ弁当を食べないでください』『これが生活なのかしらん』など、エッセイ刊行のたびに注目を集め続ける小原晩が、幼少期を中心に自身の家族の「ふつうの日常」をえがくエッセイ。