- エンタメ
『ものがたり洋菓子店 月と私 さんどめの告白』バレンタインデースペシャルSS「月もとろけるハートのチョコレートを一粒」
「語部かたりべさんは学生さんのころ、きっとバレンタインデーにたくさんチョコレートを受け取られたんでしょうね」 ついそんなことを口にして、糖花とうかは頰を染めた。 閉店後の暗い店内、そこだけ灯りのついた厨房には、チョコレ…
「語部かたりべさんは学生さんのころ、きっとバレンタインデーにたくさんチョコレートを受け取られたんでしょうね」 ついそんなことを口にして、糖花とうかは頰を染めた。 閉店後の暗い店内、そこだけ灯りのついた厨房には、チョコレ…
小学校に入るまで暮らしていた横浜市本牧の家から歩いて20分ほどのところに、そこそこ大きな公園があった。当時の私の足ではもっと時間がかかっていたのかもしれないが、いつも車でマイカルに買い物に来たついでに遊びにいっていたか…
派遣切りに遭い、求職中の主人公・石狩七穂が、ひょんなことから猫つきの古民家で、親戚のわけありイケメン・結羽木隆司のお食事&見守り当番を務めることになる「石狩七穂のつくりおき」(ポプラ文庫ピュアフル)は、おいしい料理満載で…
なにか新しいことをはじめたいなと思うことがあっても、つい後回しに。気負わず、ちょっとしたことからやってみようか?例えばスタバの新しいカスタマイズだったり。タクシーアプリを使ってみたり。その先になにがあるかはわからないけれ…
一章 黄昏たそがれの教室 いきなりだが石いし狩かり七なな穂ほはおこげが好きだ。 まず焼きおにぎりの味噌や醬しょう油ゆが、香ばしく焦げたところは最高だ。ちょっと高めの中華レストランにあるおこげにあんかけが載ってるやつ─…
序章 神かん田だの裏通りのアパートに暮らす自称フリーカメラマンの見み取どり瑛えい吉きちのところにその電話が掛かってきたのは、春先のある日の夕方のことだった。 一階に住んでいる大家に呼ばれて階段を下りた瑛吉は、取り次い…
仕事から帰ってきたら、リビングで直樹なおきが寝ていた。 昨日と今日は、大阪出張だったのだけれど、予定よりも早く帰れることになったのだろう。リュックを置いてコートを脱ぎ、スーツからスウェットの上下に着替えたところで、力尽…
「サクラダリセット」シリーズや『いなくなれ、群青』にはじまる「階段島」シリーズで人気を博し、2020年には『昨日星を探した言い訳』で山田風太郎賞の候補になるなど注目される河野裕。新作『君の名前の横顔』は、ある家族の物語で…
なにか新しいことをはじめたいなと思うことがあっても、つい後回しに。気負わず、ちょっとしたことからやってみようか?例えばスタバの新しいカスタマイズだったり。タクシーアプリを使ってみたり。その先になにがあるかはわからないけれ…
能力者の存在する街・咲良田を舞台にした「サクラダリセット」シリーズや『いなくなれ、群青』から始まる「階段島」シリーズ、全寮制の中高一貫校を舞台にした山田風太郎賞候補作『昨日星を探した言い訳』……。河野裕は作品ごとにオーダ…
ちいさい頃に住んでいた横浜市本牧の集合住宅からほど近い場所には、大きなショッピングセンターがあった。昔は「マイカル」という名前だったが、今その看板は全国でおなじみのイオンに挿げ替えられている。マイカルからイオンになるあい…
第一話 外堀を埋める友へ 四月九日 拝啓。 お手紙ありがとう。研究室の皆さん、お元気のようでなにより。 君は相も変わらず不毛な大学生活を満喫しているとの由、まことに嬉しく思います。その調子で、何の実りもない学生生活を満喫…
六十代半ば、女性、身長は百五十五センチくらい、体重は平均よりやや重いだろう。腰痛があり、右膝をずっと痛めている。 条件に合わせ、枕とマットレスを用意する。「どうぞ、こちらに仰向けで寝てみてください」 あいているベッドに…
「好きな食べ物」がみつからない。 いや、好きな食べ物はいくらでもあるんだ。 なんだかいきなり情緒不安定なことを言ってしまった。私がみつからないという「好きな食べ物」とは、 「あなたの好きな食べ物はなんですか?」 と…
君の涙 やけに蒸し暑い日曜日の深夜。僕は部屋の片隅にある扇風機のスイッチを入れ、勉強机に向かった。 椅子に腰掛けてノートパソコンを起動し、映画やアニメなどを視聴できる動画配信サイトに飛び、僕に刺さりそうな物語を物色す…
2021年本屋大賞2位となった、青山美智子さんの『お探し物は図書室まで』の文庫が、3月2日に発売されます。 初回配本限定で、著者の青山さんのメッセージが印刷された特別カード(名刺サイズ)が封入されます! 絵柄は上記の3種…
氷で手を冷やしてから肉を殴る男は初めてだった。 手が傷むからと、肉叩きを使うよう云ったんだけれど〈だいっじょぶ!〉とまるで気にする様子がない。本人はこうすると肉に手の温度が伝わらず〈良いパティ〉が準備できると信じている…
序 其れは、図られし縁 大陸に、最大の面積を占める大国、陵りょう。 この地ではかつて、無数の悪鬼が跋扈ばっこし、人々は悉ことごとく疫病や災いに苦しめられていた。草木は生えず、水は涸れ果て、空にはいつも暗雲が垂れ込め…
「ザディコ。箱船へようこそ」「わたしはオオバカナコ。はこぶね?」「それについてはボンベロから聴くと良い」 男が手を離し、パピとダフに近寄るとマルキリが手を出してきた。「アンセム」「え? あなたマルキリでしょ」「偽名に決ま…
【201908262310.m4a】 はじめまして。村むら井い翔しょう太たといいます。よろしくお願いします。 とりあえずあの日のこと、全部話しますね。正直、気は進まないですけど。肝試しになんて行かなければ、杏あんは死な…
プロローグ 死神から凶報が届いたのは、彼にメッセージを送ってからおよそ二週間後のことだった。彼、なんて呼んでいるけれど、もしかすると彼女かもしれないし、死神なのだからそもそも性別はないのかもしれない。いや、今はそんな…
自己紹介……と言うほどでもないが、図書館の前で彼に自分の名前を名乗った時、樋口(ひぐち)乙(おと)葉(は)は、肩すかしと安堵という複雑な気持ちを抱いた。 乙葉の名前を聞くと、たいていの人はこう言う。 「樋口乙葉? 樋…
原田マハ インタビュー
澤村伊智 避難訓練
白川尚史 不滅の願い
森見登美彦 インタビュー
塩田武士 12歳の君へ
椹野道流 もう一度行きたい場所
大島真寿美 本の森には……
寺地はるな 雨が降ったら/阿津川辰海 失恋名探偵/瀧羽麻子 我らが音楽に祝福あれ/村山早紀 つくろうひと