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君の余命が消えぬまに
第一章 余命銀行の新入社員 ロッカーに貼ってある【生内いけうち花菜はな】の名前が書かれた薄っぺらい磁石をはがすとき、胸はたしかに痛かった。 三月二十四日、金曜日。最後の出勤日である今日、引き継ぎをしているうちにいつの間…
第一章 余命銀行の新入社員 ロッカーに貼ってある【生内いけうち花菜はな】の名前が書かれた薄っぺらい磁石をはがすとき、胸はたしかに痛かった。 三月二十四日、金曜日。最後の出勤日である今日、引き継ぎをしているうちにいつの間…
一 幻のインディーゲーム『幸せの国殺人事件』を作った関東在住の大学生《AA》は、安堂篤子ではなく國友咲良だった――。 その太市の主張は、すぐには受け入れられるものではなかった。 「確かに《SAKURA》の六つのアルフ…
2021年本屋大賞2位となった、青山美智子さんの『お探し物は図書室まで』の文庫が、3月2日に発売されます。 初回配本限定で、著者の青山さんのメッセージが印刷された特別カード(名刺サイズ)が封入されます! 絵柄は上記の3種…
懐かしい匂いがした。 汗のしみついた防具の匂いだ。頭は手拭いで絞めつけられ、顔は面に覆われ、全身にずっしりと重さを感じる。 ここは道場で、対戦相手が見える。 腰につけた藍染めの垂たれには「瀬口」の文字。その横に小…
三 社員旅行で出かけた沖縄で、溺れた海水浴客を助けようとしたらしい――と太市は続けた。僕は無意識に息を止めていた。苦しくなって、そのことに気づく。心臓が激しく脈を打ち始めた。 水難事故で亡くなる人は、年間七百人から八…
自由に生きたければ なくてもいいものを手放しなさい ── トルストイ ── 今年も冬がなかなか巡ってこない。そう思っていたら、数日前から急に寒くなってきた。 阿紗あさはダウンジャケットを羽織り、家…
* 「こないだの奴ら、もうハピネスランド作んの諦めたのかな。ここ来る途中に覗いてきたけど、あれから全然進んでねえし」 盗賊はそうぼやくと、洞窟の天井から垂れ下がる鍾乳石に鞭を打ちつけた。鍾乳石を鞭で壊すことはできないし…
まばゆくなくても灯りがある 照らされている 足元も見えないくらい微かすかに、確かに 1 潜水艦せんすいかんがゆっくりと浮上するかのように、意識が覚醒し始める。 夕作ゆさは重いまぶたをこすりながら布団を払い、…
一話 水晶「清川きよかわの尚成たかなり。おまえは、此度こたび衛門府えもんふの大尉たいじょうから右近衛うこんえの少将しょうしょうとなるぞ」 尚成に昇進の話が舞い込んだのは、花の蕾かたい早春のことであった。 雪の混じった、…
三 少し前に、未夢が探していたインディーゲーム『幸せの国殺人事件』が、フリマアプリに出品されていた。だけどパッケージの画像が粗く、偽物を出品して代金を騙し取る詐欺だろうとその時は考えていた。 ゲームの製作者は、関東の…
プロローグ 死神から凶報が届いたのは、彼にメッセージを送ってからおよそ二週間後のことだった。彼、なんて呼んでいるけれど、もしかすると彼女かもしれないし、死神なのだからそもそも性別はないのかもしれない。いや、今はそんな…
みつば郵便局の配達員・平本秋宏と町の人々の交流を描いた「みつばの郵便屋さん」シリーズがこの12月、ついに完結となります。多くの方にご愛読いただいた人気作全8巻の完成を祝い、著者の小野寺史宜さんにお話をうかがいました。 …
開園前の遊園地が、こんなにキラキラして見えるなんて初めて知った。 まだ客のいないそこは、想像していたよりずっと広大に感じる。朝日を浴びたアトラクションが、むずむずと喜びをこらえながら始まりの時を待っているみたい…
なつかしいわねぇ、遊園地なんて何年ぶりかしら。 私たちみたいな70半ばの老夫婦がふたりで来たって浮いちゃうかしらと思ったけど、どうやらそんなこともないみたいで安心したわ。 私たちの目の前を、5歳ぐらいの男の子がぱたぱたと…
「見た?」 前を向いたまま訊ねた私の隣で、葵はこっくりとうなずいた。 「……見た!」 すっきりと晴れた日曜日、友達の葵(あおい)に誘われてやってきた遊園地。 私たちは優雅に回っているメリーゴーランドの柵の前で列に並…
引退試合が終わった。 私は同じバスケ部の仲間4人でぐるぐるめに来ていた。 「山中青田遊園地」っていうのが正式名称だけど、なぜなのか、そっちよりも「ぐるぐるめ」の名前のほうがみんなに知られてそう呼ばれている。 …
まったく、ばかみたいに晴れていやがる。 こんな天気のいい日曜日に、なんでオレはひとりで遊園地なんか来なくちゃいけないんだ。 あたりを見渡せば、何やら初々しい若いカップル、仲の良さそうな友達連れ、寄り添い合って…
ドーン、ドーン、ドーンと、3回、太鼓を叩く音がした。 ヒーローショーを見たいというのは、息子の大(だい)吾(ご)のリクエストだった。 家族4人でイベントステージに来てみたのだが、客席はまばらであまり人がいない。 派手なシ…
すべての「生きづらさ」を抱える人に共感と救いを届ける、凪良ゆうさんの感動作『わたしの美しい庭』がいよいよ文庫化です。 文庫化を記念して、SNS感想投稿キャンペーンを開催いたします! twitter、もしくはinstagr…
氷で手を冷やしてから肉を殴る男は初めてだった。 手が傷むからと、肉叩きを使うよう云ったんだけれど〈だいっじょぶ!〉とまるで気にする様子がない。本人はこうすると肉に手の温度が伝わらず〈良いパティ〉が準備できると信じている…
学校で〈希望〉という字を習った。〈キ〉と〈ボウ〉だ。〈ボウ〉のほうの字は〈のぞみ〉とも読みますと泉いずみ先生は言った。そのときは〈み〉をつけて〈望み〉と書く。では、ノートに五回ずつ書いてみましょう。 「先生!」 「はい…
2021年本屋大賞2位となった、青山美智子さんの『お探し物は図書室まで』の文庫が、3月2日に発売されます。 初回配本限定で、著者の青山さんのメッセージが印刷された特別カード(名刺サイズ)が封入されます! 絵柄は上記の3種…
伊藤朱里 青い髪の少年
島本理生 蟹を食べる
旅小説もっと! From あるかしらおじさん
旅小説もっと! From Bookstore 竹田勇生
旅小説もっと! From Library 湯川康宏
逸木裕 12歳の君へ 未来からの読書の招待状
中江有里 わたしの名店
バービー わたしの名店
はるな檸檬 わたしの名店
大島真寿美 本の森には…
彩瀬まる 桜と茂/ 河野裕 チョコチップスコーン/ 東川篤哉 ひらめき研究所の天才的な日常/