2025.09.08 エンタメ 風待ちのひと プロローグ 軽く、ひそやかな音が聞こえてきた。 その響きの心地良さに、トラックで仮眠をとっていた青年は目が覚めた。 歌うような女の声がした。「襟足は大事。ここが決まると男っぷりがあがるからね」「へえ、そんなもんかね」…
2022.07.29 青春 なでし子物語 プロローグ 一九八〇年 八月七日 立秋 泣いていたらいつも抱き上げられ、背中を撫なでてもらえた。 とてもあたたかい、大きな手だ。手を広げてその人の首に抱きつくといい匂においがした。 あれはおとうさんかな、と思うけ…