
商品やサービスから個人まで。魅力、強さ、価値がなかなか伝わらない時代です。
差別化は考えられているのに、いったいなぜ??
その大きな理由は「付加価値をうまく作れていないから」。
役立つのは「差別化」ではなく、「付加価値化」なのです。
「バナナの魅力を100文字で伝えてください」などベストセラーを連発する著者・柿内尚文さんが、「付加価値」の付け方についてご紹介します。
「自分の強みは何か」と悩んでいる人たちに、きっと役立つ内容が盛りだくさんです。
(※本稿は、柿内尚文『このオムライスに、付加価値をつけてください』の一部を抜粋・編集したものです。)
転職の面接で落ち続けた知人の大きな誤解
問題です。
次の言葉(文章)には明らかな間違いがあります。その間違いを指摘してください。
転職活動中のAさんの言葉です。
「転職活動で何社も面接を受けているのに、どこにも通らない。
面接に落ちてばかりの自分は価値がない人間だ」
これは以前、知人が転職活動していて、なかなか採用が決まらないときに話
していた内容です。知人が自分のことを「価値がない人間」と言っていたこと
が気になりました。
もちろん価値がない人間なわけはなく、ただ転職がうまくいかないだ
けです。
間違った答え
「転職活動で何社も面接を受けているのに、どこにも通らない。
面接に落ちてばかりの自分は価値がない人間だ」
正しい答え
「転職活動で何社も面接を受けているのに、どこにも通らない。
面接に落ちてばかりの自分は付加価値づくりが足りない人間だ」
面接にもいろいろありますが、知人が受けていたのは採用数が少ない難関企業でした。
面接で求められるのは、想定内の価値ではなく、想定を超えた価値を提供できる人。つまり、付加価値を持っている人です。
残念ながら知人はその部分が弱かったんだと思います。
でも、それは「価値がない人間」ではありません。
面接でなかなか通らないと自信をなくし、自分自身の価値を疑う人が出てくることはわかるのですが(僕もそうだったので)、価値がないわけではありません。
その会社が求める付加価値を持っていなかっただけなのです。
ここは、はき違えないようにしてほしいところです。
逆に言えば、面接に強い人は、意識しているか無意識かはわかりませんが、付加価値づくりがうまい人なのです。
自分の付加価値を言語化する

「自分の強みが何かわからない」という悩みを持っている人は多いようです。
自分の強みは何か?
これをすぐに答えられたら、それは自分の付加価値をわかっている人です。
自分の付加価値は、就職や転職活動中なら頻繁に考えるかもしれませんが、そうでなければ日常の中では考える機会はそんなにないかもしれません。
会社に勤めていれば、周りはあなたの仕事ぶりはわかっているでしょうし、そこまで自分の付加価値を意識しなくても仕事は回っていくでしょう。
ただ、一歩外に出ると自分の付加価値は強力な武器になります。
たとえば、営業パーソンの場合。
営業先では、商品やサービスの魅力だけで戦っているわけではありません。営業する人自身が持っている付加価値も、相手の判断基準のひとつです。
だから、自分の付加価値を言語化できるようにしておくことは、成果につながる行為です。
でも、自分の強みを自分で見つけるのは、実はかなり難しい。
なぜなら、強みとは比較によって生まれるものだからです。
たとえばテストがあって、英語の点数が人よりいいから自分は英語が得意、というのならばわかります。
比較が数値化されているからです。これが偏差値の考え方です。
一方で、たとえば自分は粘りがある諦めない人間だというのがもし強みだと思っても、「粘り偏差値」は存在していないし、他人がどれだけ粘り強いのかはなかなかわかりません。
つまり、自分はそれが強みだと思っても、もしかしたらただの思い込みかもしれないのです。
もうひとつ、自分で自分の強みがわかりにくい構造があります。
それは、他者と比較して強みになっているようなことでも、自分にとっては普通のことすぎて、強みだと気づかない場合があるのです。
たとえばおいしい料理がつくれる人は、そのおいしい料理が普通なので、自分がどのくらい料理上手かはわからないのです。家族の料理をいつもつくっている人は、かなりの腕前であってもその価値に気づかない人もいます。
そこで必要なのは、他者視点です。
他者視点とは、簡単に言えば「人に聞いてみる」ということです。自分ではわからないことは聞いてみることです。
でも、「自分の強みってどこだと思う?」と聞くのは、恥ずかしいかもしれませんね。僕も恥ずかしくてずっと聞けませんでした。
どうやって人に聞いたらいいか?
いくつか方法があります。
ひとつは自分の悩みを入り口に聞いていく方法です。
「最近、自分に自信が持てなくて、自分の強みとかいいところがわからなくなってるんだけど、もし何か気づいたことがあったら教えてもらえないかな」
こんな感じであれば、そこまで恥ずかしくないかもしれないですよね。
他には少し勇気がいりますが、こんな聞き方もあります。
「自分の強みとか、いいところを知りたくて、なんでもいいから5つ、そういう点を教えてもらえないかな」
僕はひとつ目の方法で人に聞いたことがあります。すると、自分では気づかなかった点を指摘されることもあり、やはり他者視点は大切だなと実感しました(教えてもらった内容はちょっと恥ずかしいので、ここでは控えさせてもらいます)。
付加価値は自己表現でもある
僕がまだ編集の仕事を始めたばかりで、四苦八苦していた20代の頃、先輩から言われたことが、今でも心に残っています。
「柿内、今はチームの中で一番下のポジションにいるけど、だからといって言われたことだけをやっているのではダメだ。今のポジションの視点だけで考えるのではなく、君の上司の視点にも立って考える習慣を身につけろ。必ず役に立つから」
先輩からもらったこの言葉を大切にしたおかげで、自分の視点だけでなく上司の視点など、できるだけ視点を広げて考えるクセがつきました。
ただ言われたことだけをやり続けていると、付加価値を提供するのが苦手になってしまうリスクがあります。
ショートケーキをつくるときをイメージしてください。
土台となるスポンジは、やらないといけない最低限の基本部分です。そこにどんなクリームを使うか、どんなフルーツを使うか、どのくらいのボリュームにするかを考え、実行する部分。これが付加価値部分です。
先輩の言葉は、頼まれた仕事がスポンジづくりだったとしても、ただスポンジのことだけ考えるのではなく、クリームやフルーツのこと、さらには食べるお客さんの喜ぶ顔まで考えて仕事をしろ、という教えでした。
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