- エッセイ
第3回 1日目 甘くない、それがいい
朝、パリのシャルル・ド・ゴール空港に着いてから4時間後、部屋と自分を整えたところで、仕事のスタート。 16時30分。まず最初に組まれていたスケジュールは、Radio VINCIというラジオ局の番組「Marque-Page…
朝、パリのシャルル・ド・ゴール空港に着いてから4時間後、部屋と自分を整えたところで、仕事のスタート。 16時30分。まず最初に組まれていたスケジュールは、Radio VINCIというラジオ局の番組「Marque-Page…
第1話 小麦と発酵バターのクロワッサン 1 パンが焼ける匂いは、どうしてあんなに幸せな気持ちになるんだろう。 オーブンの熱気にとけて甘い香りがほんわりと漂う。焦げ目がつきはじめた生地から香ばしい匂いがして、じゅわ…
マッサージが好きだ。なんなら愛している。 「わたし、最期はヘッドスパされながら死にたいんです」と頭部をほぐしてもらいながら伝えたこともあるくらいには重い。 指圧も好きだし、オイルも好きだし、基本見境はない。 整体…
小学一年生の二学期くらいまで団地に住んでいた。 覚えているのは、台所についている透明なひも。 「このひもなあに」 短い髪でツインテールした私がきく、母は片方の口角をあげてにいと笑い、ゆでたまごを右手にもち、左手でひも…
「フランスより、ご招待がきております」 ポプラ社の担当編集者三枝さんからそんなメールをいただいたのは2024年10⽉31⽇のことでした。 パリでは毎年、Festival du Livreという国内最⼤級の⽂学祭典が開催さ…
私の家は急な坂の途中にあって、そこからさらに50メートルほど坂を登ったところには広い空き地があった。手前に小柄な桑の木が生えていて、ほかに目につくものはなにもない。草と石ころばかりの空き地だ。 小学校がおわると、私は…
「明日はまつりに行こう」と、土曜の夜に父が言った。 なんだか、へんな気がした。 父はひとの多いところをとことんきらう人で、小原家はこれまで、ひとの集まる場所へは、ほとんど出かけたことがないのである。それが、まつりに行く…
最近は執筆の仕事の延長で、ラジオやテレビなんかに出る機会が増えた。それに従って、自分とは全く関係ないと思っていた、いわゆる“芸能人”と呼ばれる人たちに会うことも多い。 大好きな芸人さんや、誰もが知っている芸人さん、そ…
開園前の遊園地が、こんなにキラキラして見えるなんて初めて知った。 まだ客のいないそこは、想像していたよりずっと広大に感じる。朝日を浴びたアトラクションが、むずむずと喜びをこらえながら始まりの時を待っているみたい…
ある日、YouTubeで大好きなカズレーザーの動画を見ていると、カズが「ホットドックは両端を交互にかじって食べる」「アルフォートの船が描いてある面は見ないで食べる」というような話をしていた。 他人には理解できないしう…