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爪切りのニャンニャンパーク(著/浜口倫太郎)


 寝ていると、おなかに重みを感じた。このフニャッとした感触で、何が乗っているのか、今が何時なのかがわかる。
 ゆっくりとまぶたを開けると、
「ニャア」
 という甘えた声がした。
 飼い猫のミルクだ。毎朝お腹が減るとあやのお腹の上に乗って、足をふみふみするのだ。
「はいはい、カリカリね」
 ゆっくりと体を起こすと、ミルクがベッドに着地した。
 カーテンを開けると、もう日が昇っていた。朝日がミルクの白い毛並みを照らし、ほんのりと金色に光っている。この姿に毎朝見とれてしまう。
 ミルクがもがいている。布団に爪がひっかかったらしい。
「そろそろ爪を切りに行かないとね」
 そっととってやる。ミルクは爪を切るのをとにかく嫌がるので、いつも動物病院で切ってもらっているのだ。
 乾燥フードを皿に入れる。彩花はカリカリと呼んでいて、ミルクにもそれで通じている。
 黙々とエサを食べているミルクを見て、背中をなでたい衝動に駆られるけど我慢する。食べているときに触ると怒られるからだ。
 ミルクはエサにうるさくて、中々お気に入りの乾燥フードが見つからなかった。暮らし始めてすぐの頃は、なんのエサを買っても満足してくれず、プイッと顔をそむけられるたびに肩を落としていた。
 どうしたらいいのか悩んでいたところ、『グルメな猫ちゃんも満足』と書かれたエサをペットショップで見つけた。グルメな猫ちゃんといえばミルクのことだ。半信半疑ながらも買ってみると、ミルクはむしゃぶりつくように食べてくれた。これを作ってくれたメーカーに、感謝状を送りたいほどほっとした。
 食べている間にミルクのトイレの掃除もする。猫砂が少なくなっているので、新しく補充する。パッケージは猫が鼻をつまんでいるイラストで、ラベンダーの香りのするおから砂だ。一度別の猫砂を買ったら、トイレをしなくなった。ミルクはエサにもトイレにもうるさい。
 狭いリビングには小さなソファーとローテーブル、壁際にはキャットタワーがそびえ立っている。柱の縄は、ミルクが爪をとぐのでほつれている。てっぺんには猫用のベッドがあり、時々ミルクが寝ている。めったに見られないので、目撃したらラッキーデーだ。
 ふと気づくと、ミルクが体を彩花の足にこすりつけている。もうエサを食べ終わったのだ。甘えたなので、こうしてスキンシップをとってくる。腰を曲げてミルクをなでると、手のひらにやわらかな感触とほのかなあたたかみが広がった。
 猫がいてよかった──。
 そう感じる瞬間だ。
 あれっ……でも……こんなに胸が痛いのはなぜなんだろう?
 そこで彩花は目を開けた。毎朝感じていたあのお腹の重みがない。
 リビングに向かうが、ミルクの姿は見当たらない。フード置き場にも、トイレのスペースにもいない。
 ベージュのソファーに目をこらすと、白い毛が一本落ちていた。それを拾い上げると、目から一筋の涙が落ちてほおを伝った。
 そうだ。もうミルクはいないんだ……。
 毎日、ミルクがいた頃の夢を見てしまう。そしてその夢から覚めるたびに泣いている。

 ミルクとの出会いは、二年前だった。
 ちょうど社会人になったばかりで、慣れない仕事に身体からだも心もへとへとだった時期だ。
 仕事帰りに商店街を歩いていた。ペットショップのショーウインドウに目をとめると、中で子猫がすやすやと寝ていた。まるでぬいぐるみみたいだ。
 じっと見入っていると、声をかけられた。
「いつも見てるわね」
 ハッとして振り返ると、三十代後半ぐらいの女性が立っていた。メイクは控えめだが、れいな人だ。
 黒髪を一つにまとめ、足がすらっと長く、淡いブルーのジーンズがよく似合っている。ジーンズもこんな人に穿いて欲しいだろう。
 何より印象的なのが、ブルーの瞳だった。吸いこまれそうになるほど澄んでいた。ジーンズといい瞳といい、これほど青が似合う人に出会ったことはない。
「ごめんなさい。あなた、いつもここで猫を見てるからなんだか気になって声をかけちゃったの。猫が好きなの?」
「はい。好きです。寝ている猫を見ていると、なんだかほっとします」
 我知らず口が動いていた。そして自分自身で驚いた。私、こんなことを思っていたの? 自分でも予想しない答えが、ひょいと胸の奥から飛びだしてきた。
「どうして?」
「なんだろう? なんか生きてるって感じがするから」
 動きまわっている猫よりも、寝ている猫を見たときのほうがそう感じるなんて、我ながら不思議だ。そう思いながらもう一度ショーウインドウの中の猫を見た。目を閉じておもちのように丸まった背が、呼吸で上下していた。
「一日十二時間から十六時間も寝るのよ」
 なぜか彼女の頰がゆるんでいた。
「そんなに寝るんですか?」
「私じゃなくて、猫がよ」
「……わかってます」
「猫を飼いたいと思ってるの?」
「ペット可の物件だからいつかは……と思ってるんですけど」
「じゃあ手伝ってくれる?」
 彩花はきょとんとした。
「何をですか?」
「明日って平日だけど時間ある?」
「サービス業で土日が基本出社なので、明日は休みです」
「ちょうどいいわね。あなたの家はどのあたり? ああ、あのスーパーの近くね。じゃあそこの駐車場の前に十時に迎えに行くわ」
 有無をいわさず、連絡先の交換をさせられる。初対面の人とこんなことをするなんてまずないのに、不思議と嫌な気持ちはしなかった。
 じゃあ明日ね、と彼女が立ち去った。なんだか台風みたいな人だな……。
 もらった名刺を見ると、『なみエレーヌ』と書かれていた。

 翌日、半信半疑で指定された場所で待っていると、エレーヌが大型バンに乗ってやってきた。今日はつなぎの作業着を着ていたが、それも似合っている。結局何を着ても似合うみたいだ。作業着の背中には、可愛かわいらしい猫のイラストが描かれている。
「はい。これに着替えて」
 同じ作業服を渡されて、しかたなくスーパーのトイレでそれに着替えてきた。
 助手席に乗ると、エレーヌが運転を始めた。
 彩花はそろそろと尋ねた。
「あの、どこに行くんですか……」
「敬語やめてね。エレーヌって呼んで。こっちも彩花って呼ぶから」
「……わかった。エレーヌ」
「ちなみに私、父がフランス人で、母が日本人なの。髪の色や顔立ちは母親譲りなんだけどね、目だけは父親に似て青いのよ」
 エレーヌが右目を指さした。あの吸いこまれそうになるブルーの瞳だ。
「で、今から猫の捕獲をするのよ」
「捕獲?」
「そう。私、地域猫活動をやってるの。猫って一年間でどれだけ子供を産むか知ってる?」
「二、三頭かな……」
「ブッブゥー、不正解。正解は一年で二十頭以上よ」
「そんなに!?」
「猫って一年に二、三回は出産が可能だからね。生後四ヶ月で繁殖可能になるから、ほっといたら猫だらけになるのよ。だから野良猫を捕まえて、不妊去勢手術を受けさせてから放してるの」
「なるほど」
 一軒家に到着すると、中から老人が出てきた。エレーヌとは顔見知りのようだ。
よこのおじいちゃん、エサあげてないでしょうね」
 老人がにこにこと返す。
「今日手術って聞いてるから、あげてない。今頃お腹減らしてるよ」
 エレーヌがこちらを見た。
「こうして街のみんなに協力してもらってるの。猫が集まりそうなおうちの庭に捕獲器を設置させてもらって、そこにエサを入れるの。その中で食べさせて、危険じゃないものだって野良猫にわからせるためにね。で、油断したところを捕まえるってわけ」
「そうなんだ」
 新しい知識を得られて、なんだか面白い。
 庭に捕獲器があって、エレーヌがそこにエサを入れる。待ちかまえていたように猫がやってきた。太っちょの三毛猫だ。
 なんのちゅうちょもなく捕獲器に入った。さっとエレーヌが扉をしめて捕獲した。慣れた動きだ。
「いっちょあがり」
 こんな感じで何軒か回り、猫を捕まえた。彩花は捕獲器を車に載せる役回りだ。中には騒ぐ猫もいたが、エレーヌが落ちついた声で呼びかけて、近づいてきたところに液状のおやつをあげると、すぐにおとなしくなった。
 大丈夫、大丈夫、怖くないからね、と彩花もやさしく声をかけると、猫が丸まった。なんだか可愛い。
 動物病院に向かう。あとは保護活動に協力してもらっている獣医師に、不妊去勢手術をしてもらい、耳を少しカットしてもらう。これでこの猫は手術済みだ、と地域住人たちが理解する。
 エレーヌのあとについて無我夢中で半日動き回り続けた。心地よい疲れを感じながら、病院の廊下のベンチに座っていると、エレーヌがやってきた。あっと彩花は声を上げた。その腕には、猫を抱えていた。
 白猫だ。まだうんとちいさい。力を抜いて、エレーヌの腕でスヤスヤと眠っていた。まっ白な毛並みはやわらかそうで、ピンク色の耳と小さな鼻が、かすかに動いていた。
「この子は?」
「昨日捕獲した子なんだけどね、母猫がいなくなっちゃってて……この子のミルクボランティアを探してたの」
「ミルクボランティアって何?」
「生後間もない子猫を一時期的に預かって、ミルクを与えて育てるボランティアのこと。子猫は夜中も授乳してあげる必要があるし、自力ではいせつができないからその補助や、体温調整もやってあげないとダメなの。楽な仕事じゃないけど、彩花、興味ない?」
「私が?」
 驚いて自分を指さす。
「ええ、この子と彩花、なんだか合いそうだなって思ってたの。メスだから女同士仲良くやれるんじゃないかって。手伝ってくれたら嬉うれしいんだけど」
「やる。やらせて」
 エレーヌがいい終わらぬうちに、そう答えていた。
 一日に何度もミルクをやる必要があるので、彩花の勤務中はエレーヌが面倒を見た。仕事が終わると、彩花が猫を引きとるという形だ。
 夜中に起きるのが大変で、どうしてこんなことを引き受けたんだろうと後悔したこともあったが、哺乳瓶でミルクを吸う子猫の姿を見ると、可愛すぎて眠気がふっとんだ。
 排泄物の処理や、体温の調整もエレーヌに教わりながらどうにかできた。
 三週間ほどして子猫がドライフードを食べられるようになったときは、嬉しくて涙が出そうになった。
 離乳が成功したのでいよいよ別れのときだ……エレーヌに子猫を渡した。
「この子はこのあとどうなるの?」
「地域猫として放すことになるわね」
「……そう」
 彩花は腕の中にある猫を見つめた。
「……ねえ、この子、私が引き取ることってできるかな?」
 自分で自分の言葉に驚いた。
「ええ、条件を満たせばね」
 エレーヌが猫を引き取れる条件を挙げた。部屋はペット可だし、完全室内飼育も問題ない。経済的にも就職しているので大丈夫。ミルクボランティアのおかげで、猫を世話する知識も身につけている。満たしてるわねとエレーヌがうなずき、彩花はほっとした。
 エレーヌが、まっすぐ彩花の目を見つめてきた。心の奥底まで見透かすような青い瞳で──。
「最後まで責任を持って飼うことができる?」
 キュッとのどの奥が鳴った。まだ社会人になりたての自分が、動物の一生の面倒を見ることができるだろうか? そんな疑問と不安が、お腹からせり上がってきた。
 腕の中の子猫をそっとなでてみる。やわらかな毛なみとぬくもり、そして小さな鼓動が伝わってくる。私は生きているよ、とささやいているように……その声が、不安をかき消した。
 この子と暮らしたい──。
 彩花は即答した。
「うん、できる!」
 ミルクボランティアがきっかけで飼うことになったから、名前はミルクにした。これがミルクとの出会いだった。

 ミルクとの生活は、本当に楽しかった。毎日家に帰るのが待ち遠しかった。
 抜け毛が多いので服が毛まみれになるし、病院でのワクチン代や健康診断の料金もバカにならない。家具もミルクが爪でひっかくので傷だらけだ。でも寝ているミルクを見て、そのふわふわとした背中をなでるたびに、飼ってよかったと何度思ったかわからなかった。
 そんな幸せな日々が二年続いたある朝、ミルクのエサを入れる皿の中身を見て、彩花は首をひねった。『グルメな猫ちゃんも満足』の減りが悪い。
「どうしたの? 体調が悪いの?」
 ミルクはきょとんとしている。しばらく様子を見ていたが、他には変わったところがない。気のせいか、と思い直す。
 玄関に立つと、ミルクが扉の前でちょこんと座っていた。いつも見送ってくれる。会社なんて行かずに、ミルクと一緒にいたいがそうもいかない。名残なごり惜しい気持ちを押し殺して、「いってきます」と家を出た。毎日ミルクと別れるこの瞬間が一番つらかった。
 電車で十五分、駅から歩いて五分ほどのところに、勤務先である『もり不動産』はある。
 昭和の香りを残す三階建ての自社ビルだ。入り口のガラス扉の横には、『地元密着五十年! 信頼と実績の杜野不動産』と仰々しい書体で書かれている。
 大学進学で宮城の田舎いなかからせんだいに住むようになった。就職活動の段階になって、やりたいと思ったのが、不動産関係の仕事だった。
 初めて一人暮らしをしたときに、対応してくれた不動産会社の女性がとても親切だったからだ。朗らかな彼女の対応で、新生活の不安がふっと和らいだのがずっと心に残っていた。
 住宅情報誌の間取りを見るのも好きだし、引っ越しや新居探しは人生の節目でもある。そんな機会に立ち会える仕事に魅力を感じた。
 大手の企業は落ちてしまったけど、この杜野不動産に就職できた。地域に根ざした、古くから続いている不動産会社だ。
 事務服に着替えると朝礼の時間だ。
「今日も一日、元気よく行きましょう」
 社長がにこにこといった。昨日よほど酒を飲んだのか、顔がむくんでいた。毎晩飲み歩いているので、繁華街であるこくぶんちょうでは、社長の顔を知らない人はいない。顔と体形が、商売繁盛の神様であるえびす様に似ているので、夜のお店の人たちには人気があるそうだ。
 地元密着の不動産会社なので、そういう地域の人々とのつながりが大事だ。社長の人柄と付き合いの深さが、杜野不動産を支えていた。
 彩花は心配になっていた。
「社長、大丈夫ですか? 顔色悪いですよ」
「大丈夫、大丈夫。このドリンクを飲んだら一発で元気になるから」
 社長が、まむしと見たこともない動物が描かれている瓶をとりだした。
「またそんなやみの商人が売ってそうな、怪しげなドリンク買ったんですか」
「闇の商人。いやあ、えきは面白いこというね」
 社長は豪快に笑ったが、やはり体調が悪いのか、朝礼をすますと帰ってしまった。律儀な人だから、朝礼だけはやらなければと思ったんだろう。
 早速仕事開始だ。メールを確認してから、管理物件の家賃入金の有無をたしかめた。支払いが遅れている部屋にはとくそくじょうを作成した。メールよりもこちらの方が効き目がある。
 電話が鳴って受話器を上げると、しわがれた声が響き渡った。
「上の部屋の足音がうるさくて眠れないんだよ」
 近くのアパートに住む、やまおかという老人だ。山岡の上の部屋には家族連れが住んでいて、やんちゃな子供がいる。一応やんわりと注意はしているが、まだ未就学児なのでしかたない面もある。
「プロレスやってんじゃないんだからさ。なんとかしてよ」
「私も子供の頃よくプロレスやって、男の子泣かせたりしましたよ」
「何、あんた結構暴れん坊だったのかい」
 そんな感じでしばらく話すと、「まあ注意しといて」と山岡が電話を切った。本気で怒っているのではなく、誰かと話したいだけなのだ。社員の中にはこういう応対を嫌がる人もいるが、彩花は平気だ。
「みんな、おはよう」
 かんだかい声がして、彩花は我知らず顔をしかめていた。
 営業部長のおおたにけいすけだ。派手なネクタイに光沢のあるスーツを着ている。とても営業に行く恰好ではない。ピリッとした空気が漂うが、本人はまるで気づく様子はなかった。
 圭介がドカリとに腰を下ろすと、隣の席の部下に訊いた。
「親父はどうした?」
「ちょっと昨日飲みすぎたせいで退社されました」
 圭介が鼻で笑った。
「酒で仕事をとるって、ほんといつの時代って感じだよな。さっさと引退して、俺に任せればいいのに」
 そんなことしたら一瞬で会社が潰れる、と彩花は心の中でつぶやいた。
 圭介は社長の息子だ。本人はやり手を気取っているが、自分で仕事をとってきたことなどない。だがいずれ圭介が後を継ぐのはわかっているので、誰も逆らえなかった。
「明日、交流会でフットサルなんだよ。商工会議所の若手経営者でやるんだけどさ」
 交流会と称しているが、ただの遊びだ。圭介と同じようなお気楽な二代目達が遊ぶだけの集まりだが、本人達は仙台の未来を担っていると自負していた。
 部下が即答した。
「私も行きますよ」
「おっ、頼む。ただつまめるもんがあったほうがいいな。動くと、小腹空くもんな」
 チラッと彩花を見てきた。こういう時、女性で一番若い彩花は格好のターゲットだった。はあと喉の奥でため息をおさえて笑顔を作る。
「……私、サンドイッチでも作って当日持っていきましょうか」
「おっ、助かる。気が利くな」
 パチンと圭介が指を鳴らした。いつもこんな風に遠回しに命じてくるのでいらいらする。もし私がいいださなければ露骨に機嫌が悪くなる。
 彩花は、この圭介が大の苦手だ。父親である社長はあんなに人柄がいいのに、息子の圭介はどうしてこんなに性格が悪いんだろう。不思議でならなかった。

 就業時間が終わり、彩花は急いで事務所を出ようとした。朝のミルクの様子が気になる。やっぱり体調が悪いのかもしれない。すぐに帰宅すれば、動物病院に連れていってやれる。
「じゃあ親睦会行くか。今日は親父がいないから俺が行くからな」
 圭介の大声が聞こえ、彩花はあっと声を飲みこんだ。今日は三ヶ月に一度の会社の親睦会があった。すっかり忘れていた。
「佐伯、どうした?」
 圭介が首をかしげた。猫の体調が気になって行けません……そういいたいところだが、圭介が行くといいだしたタイミングでそんなことを口にしたら、どれだけ不機嫌になるか……ミルクはちょっと食欲がなかっただけで、何ごともないはずだ。大丈夫、帰るといつものように寝ているだろう。そう自分にいい聞かせ、
「なんでもありません」
 と答えた。その返答が間違っていたと気づくのは、数時間後のことだった。

 帰宅すると、ミルクは動かなくなっていた。
 すぐにエレーヌに連絡を取り、獣医師の診断を受けたが、もう手遅れだった。心筋症による突然死とのことだった。
 ミルクの葬儀の手配もエレーヌがしてくれた。翌日には、ミルクの火葬を行うことができた。
 ひたすら泣き続ける彩花の側に、エレーヌはずっと寄り添ってくれた。彩花を励まし、温かな言葉を投げかけてくれた。
 ぼうぜんとしたまま家に戻ると、電話がかかってきた。圭介からだった。涙声にならないように注意しながら、はいと応答した。あきらかにいらだった声が鼓膜を震わせた。
「サンドイッチはどうした? みんな待ってるんだぞ」
 あっとそこで思いだした。そういえばそんな約束をしていた。
「すみません。忘れてました」
「忘れてたって……佐伯の方からいいだしたことだろ」
「申し訳ありません。実は、飼い猫が亡くなって……」
「えっ、猫? そんなことで約束を忘れたのかよ」
 そんなこと──。
 ざらついたその言葉が、耳の中で反響した。青い炎のような怒りが胸を焦がし、一瞬我を忘れそうになったが、それを必死で抑えた。スマホを握りしめすぎて手が痛くなった。平謝りをしてその場を収めた。
 スマホを切ると、泥水のような後悔が襲ってきた。
 どうして、どうして怒鳴らなかったの……? ミルクを馬鹿にされたのに……。
 そんなことってどういうことですか? サンドイッチよりもミルクの方が大事に決まってるでしょ!
 なぜ私はいい返せなかったんだろう。ミルクが亡くなって、勇気のなさを後悔したばかりなのに……ごめん、ミルク……ごめんなさい。こんなに情けない飼い主で……。
 また涙がとめどなくあふれ落ちた。

 今日で一週間が経つ。
 やっと泣き止むことはできたけど、ミルクを失った悲しみはふくらむばかりだ。夜も眠れず、こめかみのあたりがずっと痛い。食欲もまるでなく、身体がふわふわしている。体重を量ってないが、かなりせたのがわかる。
 仕事を休みたかったが、ミルクの気配がまだ残っている部屋で、じっとしている方が耐えられない。悲しみから逃げるように仕事に励んだ。
 助かったのが、圭介が長期出張でいないことだ。この状態で圭介に会ったら、心がどうなるかわからない。
 今日は休日だが、なんにも手につかない。ベッドに腰かけたまま、ぼおっとしていた。
 その時だった。かたわらに投げだしたスマホから声が聞こえてきた。

「ここは死者に会える遊園地」

 びくりとした。何も触ってないのに動画が流れ始めた。
 画面には『ようこそ 天空遊園地まほろばへ』と優しい書体で書かれたゲートのあと、観覧車とメリーゴーランドが映った。どこかレトロさを感じさせる遊園地だ。
 彩花は魅入られるように、スマホを握りしめた。
 動画の説明では、天空遊園地まほろばは、てんこまさんの山頂にある遊園地だそうだ。最寄り駅の天駒駅から深夜一便だけ、特別なケーブルカーが出発する。それに乗れば、まほろばへとたどり着くことができる。

「遊園地で過ごす時間は、誰にとってもかけがえのない思い出です。
 もう一度、あなたの大切なペットに会いたくはありませんか」

 ペット!?
 今たしかにペットに会いたくはありませんかといった。死者に会える遊園地って──じゃあ……ここに行けばミルクに会えるの?
 画面を凝視すると、リンクが張られていた。タップするとまほろばのサイトが表示され、いくつかの注意事項があった。

1 当園は一生で一度しかご利用になれません。

2 再会できる死者は一匹のみです。

3 当園のご利用時間は一時間のみです。

4 当園の遊具のご利用は一台のみです。

5 当園では泣くことが禁止されています。泣くと、お客様の大切なものが失われます。

 妙な注意ばかりだが、再会できる死者は一匹のみとある。死者の中には、猫も含まれるという意味だろう。あと気になるのが、泣くと大切なものが失われるというルールだ。大切なものって一体なんだろう?
 疑問でいっぱいになりながらも、予約サイトがあったので進んでみる。

『再会を希望するペットのお名前を入力してください』

 一度つばを飲みこんでから、慎重にミルクの名前を入力した。タップ。

『再会を希望する時期を選択してください。以下より、ご希望の日付をお選びいただけます』

 それを見て、あっと声を上げる。ミルクが亡くなった以降の日付がない……つまり、ミルクがいつ亡くなったのかを把握しているのだ。スクロールすると、ミルクが生まれた日以前はさかのぼれない。つまりどの時期のミルクに会いたいのかという意味なのだろう。迷ったが一週間前、ミルクが亡くなる日にした。

『再会を希望する日程を選択してください。空き状況を確認の上、ご予約を確定してください』

 今すぐにでもミルクと会いたい。今日の深夜がちょうど空いていた。まほろばの最寄りだという天駒駅があるのは関西だが、今から新幹線で移動すれば十分間に合う。明日が休みなのも都合がいい。タップする。

『ご予約を承りました。天空遊園地まほろばへのご来園を心よりお待ちしております』

 彩花はその画面を確認するやいなや、家を出る準備を始めた。

 まほろばがあるのは関西の古都だった。仙台からはきょうで在来線に乗り換えて五時間ほどかかった。どこにでもある地方都市という感じだが、街の空気感が仙台とよく似ている。
 早めに到着したので、軽く天駒山へと続く道を登ってみる。学生時代はさんがくに所属していたので、脚力には自信がある。動きやすい方がいいとスニーカーを履いてきてよかった。身体を動かしている方が気分はまぎれる。
 一段一段歩いていく。ケーブルカーの駅へと続く石段もあるが、これは直接山へと登れる別の石段だ。階段の両隣は年代ものの建物も多いが、ところどころに新しそうなカフェがあったりして、新旧が混じり合っていた。
 階段の途中で足を止めて、振り返ってみた。もう日が沈みかけている。夕暮れが街をオレンジ色に染めていた。ほんの少し山を登っただけなのに、街全体を見下ろせる。いつもなら綺麗と感じるし、写真を撮っていそうなものだが、そんな気に一切なれない。ミルクを失ったことで、感情の一部が消えている。まるで泣いているような湿った風が吹き、彩花の髪をなびかせた。
 夜になる前にふもとに降りた。宿泊先のホテルに向かう途中、地元の人らしいおばあさんが通りがかった。ちょうどいい。
「すみません。ちょっといいですか?」
 お年寄りなので、少し声を大きくする。
「なんですか?」
「天空遊園地まほろばって、ここからケーブルカーに乗ったら行けるんですか?」
 おばあさんが首をかしげた。
「まほろば? 何をいうてはるんや。あれはとっくの昔に潰れてます」
「どれぐらい前に潰れたんですか?」
「たしか昭和十六年やから……八十年ほど前です。戦時中だったんで、すぐに閉園となりました。当時は遊園地で遊ぶなんてご時世やないですから」
 やっぱりそうなのか。新幹線で移動中、まほろばのことを調べてみたが、たしかにおばあさんのいうとおりだった。天空遊園地まほろばはとっくの昔に閉園していた。
 開業期間の短さからまぼろしの遊園地と呼ばれている。ならばあの動画はうそなのだろうか? でもミルクがいつ死んだかをサイトは把握していた。それにさらに詳しく調べてみると、死者と会える遊園地として、まほろばは都市伝説になっていた。すべてがでたらめというわけでもなさそうだ。
 どうしよう……悩んだが、もうここまで来てしまったのだ。0時になったら、天駒駅のケーブルカー乗り場までは行こう。
 チェックインしたホテルの部屋でもテレビやスマホを見ることなく、ただ外の景色をぼんやりと眺めて時間を潰した。
 二十三時半を過ぎるのを待って出発した。枯れ葉が風で舞って、カサカサとぶきみな音を鳴らしている。なんだか怖くなってきた。
 駅にさしかかったとき、ふと足元に何か感触がした。懐かしい感触……。
 黒猫がいた。彩花の足に身体をこすりつけている。ミルクを思いだし、目の奥が熱くなったが、洟をすすって涙を防いだ。これが白猫だったら間違いなく泣いていた。
 黒猫は青い瞳をしていた。まるでエレーヌだ。
 そこでエレーヌの顔が脳裏をよぎり、胸に痛みが走った。エレーヌには、ここにきたことは伝えていない。ミルクに再会できるから関西に行ってくるといっても、変に思われるだけだ。エレーヌによけいな心配をかけたくなかった。
 黒猫がニャアと鳴いて、しっをふった。猫は尻尾で感情を伝える。こっちに来て。そういっているように見えた。
 あとを付いていくと、ケーブルカー乗り場へと続く石段があった。両隣にズラッととうろうが並んでいる。黒猫がリズミカルに階段を上がっていくと、彩花は息を呑んだ。
 灯籠が順番に灯ともっていく。黒猫が石段を踏むと、灯籠に火がついていくのだ。いつの間にかそこに、光のじゅうたんがしかれた。
「どういうこと?」
 動揺していると、ニャアと黒猫がかん高い声を上げた。もう頂上についている。ごめん、と彩花はあわてて階段を上った。
 階段を上がりきると、目の前には駅舎があった。白いボックス型だが、変色して黒ずんでいる。入り口から明かりが漏れていて、地面を照らしていた。
 黒猫がなんの躊躇もなく中に入っていく。待って、と彩花は追いかけた。中はしんと静まり返り、誰もいなかった。乗客も駅員もいない。壁の時刻表を見ると、ケーブルカーの終電時間は過ぎている。
 改札のボックスに、『きっぷは降車される駅でお渡しください』と書かれていた。彩花の地元にも無人駅はあるが、ICカードは使えた。でもここは、それさえできないみたいだ。しかたなく切符を買う。
 改札を抜けると、ホームに軽く傾斜があった。山上へ向かう駅だからだろう。山の方ヘレールが伸びていき、鉄と闇が溶け合っていた。天井に設置された長い蛍光灯が、パチパチと音を立て、羽虫がたかっている。
 あっ、黒猫ちゃんは? あたりを見回し、彩花はぎょっとした。
 とつぜんホームに、ケーブルカーが停まっていた。さっき見たときはなかったのに? わけがわからない。
 さらにケーブルカーを観察して驚きが広がる。その車体が、黒猫にそっくりなのだ。まっ黒で正面に猫の顔が描かれている。瞳もブルーだ。
 プシュッと音が鳴って、扉が開いた。一度深く息を吐いてから、そろそろと乗りこんだ。中は黒一色で、床がふわふわしている。まるで猫の背中みたいだ。席に腰を下ろして、シートをなでてみる。その感触でまたミルクを思いだし、目に涙がにじんだ。
 ケーブルカーがゆっくりと動きだした。車体自体が動いているのではなく、電動のケーブルでひっぱっているのだろう。ガタガタという振動がほとんどない。
 車体のライトが、レールだけを照らしている。彩花はそのレールをじっと見つめていた。
 しばらくしてケーブルカーが止まり、扉が開いた。こけないように注意をしながらホームに出ると、

「ようこそ、天空遊園地まほろばへ。わたくし、案内人のシチカです」

 さわやかな若い男性があいさつをしてきた。急なイケメンの出現は予想外すぎる。ホテリエのような服装がよく似合っていた。昔の映画に出てくる執事みたいだ。端整な顔立ちだが、どこか人懐っこさも感じる。彩花よりも若いだろうが、そのたたずまいからは風格すら感じさせる。
「切符をちょうだいいたします」
「あっ、はい」
 彩花が切符をとりだすと、シチカは奇妙なハサミで切れこみをいれた。
「それっ、切符ばさみってやつですか?」
「お若いのによくご存じですね」
「おじいちゃんに聞いたことがあって」
「素晴らしいおじい様ですね。これは昔の駅員の必需品です」
 シチカが、カチンとハサミを鳴らした。その軽快な音が、眠っていた疑問を呼び覚ました。
「あの……本当にペットに、ミルクに会えるんですか?」
 返事のかわりに、シチカがにこりと笑った。
「立ち話もなんですから、どうぞこちらへ」
 シチカが案内したのは、ホームを出たところにあるメルヘンチックな家だった。三角屋根で半円形の窓がある。森の中の小さなレストランという感じだ。
 中に入ると、木のぬくもりに包まれていた。テーブルも椅子も床も壁も木製で、建物が生きているように体温を感じる。ダルマ式のストーブがアクセントになっていた。
 椅子に座ると、シチカがティーカップを置いた。ポットでお茶を注ぐと、湯気とともにかんきつけいの香りが漂う。
「レモンバームです」
 シチカが優しく説明する。
「不安をしずめて心を落ちつかせてくれます。どうや緊張を和らげたり、夜によく眠れるようになる効能があります。どうぞ」
「いただきます」
 彩花がカップを口元に運ぶと、さわやかなレモンの清涼感が、舌の上に広がった。喉を通り、胃の奥にまで優しい温かさが落ちていく。
「おいしいです」
「それはよかった」
 シチカが口角を上げた。
 ゆっくりと飲み終えた。睡眠が足りていないので、ずっと目の奥と側頭部に痛みがあったが、それがなくなった。シチカのいうとおりだ。
「この遊園地はずっと前に廃園になったと聞いたんですが」
「ええ、たしかにそれは事実です。ですが深夜0時過ぎに人知れず、ひそかに運営しております。二度と会えない、大切な相手と再会できる遊園地として」
「……それは死者ってことですか?」
「はい。天空遊園地まほろばは、死者に会える遊園地です。そしてそれは、彩花様の大切なペットであるミルク様も含まれます」
「ミルクに、本当にミルクに会えるんですか!」
 思わず身を乗りだした。
「ええ、もちろん。ペットも大事な家族の一員です」
「……でも先週、ミルクの火葬を済ませたばかりですけど」
「ご安心ください。死者に会えるといいましたが、厳密には死者ではありません。タイムリープはご存じですか?」
「過去に戻れるってやつですよね」
「はい。それと似たようなものだとお考えください。まほろばでは過去のミルク様と再会できます。彩花様は一週間前のミルク様との再会がご希望とのことなので、その時期のミルク様とお会いできます」
「そうですか」
 ほっとしたと同時にひらめいた。
「過去に戻れるんなら、ミルクの突然死も防げるんじゃないですか。動物病院に連れていって獣医師さんに診てもらったら」
 シチカが首を横にふる。
「それはできません。まずまほろばから、ミルク様を外に出すことはできません」
「そうですか……」
「それに時をある時点まで戻ってからまほろばに入園すると、ある種のパラレルワールドが生まれます」
「なんか聞いたことがあります。別の時間軸みたいな……」
「そうです。仮に現実の世界をA、まほろばでの時間をBとします。BはAの時間軸をほんの一時間だけ横道にそらして存在させる世界で、最終的にはAに吸収されます。だからBでミルク様の病気を治癒できたとしても、Aにはなんの変化もありません。ミルク様がこの世にいないという現実はなんら変わらないのです」
「わかりました……」
 そんなうまい話があるわけがない。ミルクと再会できるだけでも幸運だと思わないと。
 すると、シチカが真剣な顔でいった。
「まほろばでは大事なルールがあります。当園では、泣くことは禁止されています」
「……注意事項に書いてありましたよね。泣くと大切なものを失うって」
 気になっていた箇所だ。
「はい。大切なもの、彩花様にとって絶対に失いたくないものが消えてしまいます」
「なんですか?」
 シチカが彩花を見据えた。
「思い出です。彩花様とミルク様との思い出が消えてしまいます」
「思い出ですか……」
 嫌だ。そんなの絶対に嫌だ。たった二年間だけど、ミルクと過ごした記憶は失いたくない。
「そんなの困ります! 絶対に嫌です!」
「ですがこれが当園の規則です。どなた様もそれをご了承の上で、入場いただいています」
 ミルクと再会した瞬間、号泣してしまう。今でもミルクとのことを振り返るだけで、涙が止まらなくなるのに……。
「どうして泣いちゃダメなんですか?」
「生者に未練が生まれると、まほろばを成り立たせているシステムが崩れてしまうのです。そうなると、お客様は現実に戻れなくなります」
「泣くことが未練につながるってことですか……?」
「はい。そのとおりです。そのため当園では、泣くことを禁止しております」
 シチカが沈痛な表情を浮かべた。
「正直なところ人との再会よりも、ペットとの再会のほうが涙をこらえられないケースが多いのも事実です。ペットとの再会は、それだけ難易度が高くなります」
 わかる気がする……人間だったら会話をして、どうにか感情をそらせることができるが、動物相手だとそれができない。気持ちが高ぶってしまい、感情の逃げ場がどこにもない。
「ミルク様との思い出を大切にされたいのならば、会わないという選択肢もあります。今ならキャンセルもできますが……」
 彩花は反射的に首を振った。
「嫌です。どうしても会いたいです。ミルクに……」
 目に熱いものがこみ上げたが、どうにか我慢する。ここで泣くのを堪えられないでどうするの! そう自分を𠮟しっする。
 シチカが覚悟を決めたようにうなずいた。
「わかりました」
 そして扉の方に向かって声をかけた。
「すみれ、入ってくれ」
 勢いよく扉が開くと、シチカと同じ恰好をした女性が入ってきた。
「当園の従業員のすみれです」
 ニコッと白い歯がのぞく。接客業として百点満点のスマイルだ。
「彩花様が涙を堪えられるように、このすみれが誠心誠意サポートします。大船に乗ったつもりでいてください」
「……ありがとうございます」
 彩花は礼をいう。シチカが少し不安そうな顔をしたが、すぐに表情を元に戻した。
 それから他の注意事項も説明された。制限時間は一時間で、遊具は一台しか乗れないそうだ。そこで気づいた。
「でも猫と乗れるものってあるんですか?」
 遊具にミルクを乗せたら、をしたり事故に遭ったりする危険性もある。
「その点はご心配なく。それよりこちらを」
 シチカが微笑ほほえむと、すみれがポケットから何かをとりだした。
「これは?」
「懐中時計です。昔の人はこれで時間を計ったんですよ」
 たしかにストップウォッチぐらいの大きさだ。銀色で装飾もほどこされており、どこか神秘的な雰囲気がある。
「アラーム機能があるので、一時間経つとお知らせします。お持ちください」
「ありがとうございます」
 受けとると、金属のひやりとした感触がした。

 扉を開けて外に出ると、冷たい夜風が吹いていた。さっきは風の冷たさなんて感じなかったのに……ちょっとずつ気持ちが落ちついてきているのかもしれない。これならばミルクに会っても泣くのを耐えられる。
 街灯が明かりを落とすその下に、奇妙なものがあった。ステンレス製のボックスの横から、バーが三本つきでている。一体なんだろう?
 シチカが、彩花の視線に気づいていった。
「あちらがまほろばへのゲートとなっております」
「あれが?」
「ええ、昔の遊園地や動物園の入場口は、こんなゲートだったんですよ」
「でもその先に何もありませんが」
 ただぽつんとゲートがあるだけで、その奥には夜闇が広がっている。目を細めたが、どうやら広場みたいだ。かすかに草の匂いが漂っている。
「入場されたらおわかりいただけますよ」
「……わかりました」
 シチカがゲートの右手に、すみれが左手に分かれ、斜めに手を広げた。ウェルカムという感じのポーズだ。
「それではお客様、いってらっしゃいませ」
 彩花は肩に力を入れると、一歩前に踏みだした。

 ガシャンという音がすると、まず空気が変わった。冷たい夜気が消えて、春の匂いがした。グニャンと視界がゆがんだ直後に、まぶしさで反射的に手でひさしを作った。喉がゴクリと鳴り、足の裏に汗をかく感触がする。慎重に目を開け、息をスッと飲みこんだ。
 夜が昼になっている……水色の雄大な空を、白い小魚のような雲が泳いでいた。
 前を見ると、さらに驚きが広がった。色とりどりの花が咲く花壇に、クルクルと楽しそうに回転するコーヒーカップ。その奥には観覧車があり、左斜め前には大きな塔があった。飛行機の遊具が優雅に回転している。
 どっ、どうなってるの? 暗闇の広場が、一瞬で遊園地に様変わりした。
 そこでハッとした。そうだ。ミルクだ。ミルクに会えるんだ。だがどこを見渡しても、ミルクの姿はない。
「ミルクちゃんはここにはいませんよ」
 とつぜん声がして、彩花はびくりとした。急に隣に、すみれがあらわれたのだ。
「でもここでミルクに会えるんじゃ……」
「人間のお客様の場合は、遊園地に入った時点でお相手と再会できるんですが、猫ちゃんの場合は、どこかに行ってしまいますからね。ちゃんとある場所で待機してもらってます」
「どこですか?」
「ご案内します」
 すみれが歩き始めた。なぜか手に傘を持っている。日傘ではない。和傘というやつだ。
 さっきとは違い、すみれの表情が硬い。
「……緊張されてるんですか」
「……少し。今日はスペシャルミッションですからね。日頃の練習の成果を披露します」
 彩花が首をかしげると、すみれは急に声を明るくした。
「あっ、ご心配なさらず。彩花様が泣かずにミルクちゃんに再会できるようにいたしますので。泣きそうになったら、このすみれを見てください」
 ドンとすみれが胸をたたくと、彩花は不安になった。そうだ。泣いたらダメというルールがあるのだ。目に力を入れて、涙を止める練習をする。
 目的地はすぐそこだった。壁はビスケットで、屋根はチョコレート、入り口のアーチはキャンディでできている。もちろん本物ではない。お菓子の家をモチーフにしているみたいだ。
 看板には『ニャンニャンパーク』と書かれ、子猫のイラストが添えられていた。
「ここは?」
「猫と遊べる施設です。ペットとの再会がご希望の方は、こちらへ案内させてもらってるんですよ。ワンちゃんだったらワンワンパークで、ハムスターだったらハムハムパークです。こちらを遊具の一つとみなしますので、他の遊具では遊べなくなりますが、それでもよろしいですか」
「もちろんです」
 中に入ると驚いた。天井はキャットウォークが縦横無尽に張り巡らされている。屋根を突き破るような巨大なキャットタワーや、猫が遊べるさまざまなおもちゃがあった。
「すごい。猫ちゃん、喜びそう……」
 そういいかけた瞬間、彩花は言葉が詰まった。
 白猫が、ひょこひょこと歩いてくる。光を透かしたような白い毛並み、ピンク色の耳、グレーの瞳……。
 視界がにじみ、目が濡れる感触がした。この直後、涙が頰を伝う感触を、肌と毛穴がもう感じとっている。
 甘かった……やっぱり泣くのを堪えるなんてできるわけがなかった。
 その時だった。
「彩花様ぁ! こちらをとくとご覧あれ!」
 すみれが叫び、彩花は反射的にそちらを見た。すみれはあの和傘を広げて、クルクルと回している。その上にはカラーボールが載っていた。傘回しというやつだ。「ヨッ、ハッ」とかけ声を上げながら、すみれが大げさに傘を回している。その表情は真剣そのものだ。だがすみれの奮闘もむなしく、ボールが傘から落ちて転がっていった。
「あれっ、すみません。練習だと失敗しないんだけどな。やっぱり本番は難しいな……」
 すみれがボールを拾おうとするが、ミルクがそれを邪魔した。ボールで遊び始める。ミルクはボール遊びが大好きなのだ。
「ミルクちゃん、ちょっと待って。ボール返して」
 すみれがあわてるが、ミルクの手は止まらない。追いかけっこが始まり、彩花は思わずふきだした。笑いが止まらない。
「なんかおかしかったですか?」
 すみれがぽかんとしていた。

 すみれのおかげで涙がおさまった。ただミルクはボールに飽きると、身体を丸めて寝てしまった。
「ミルクちゃん、寝ちゃいましたね。一時間しかないのに、早く起きないかなあ」
 おろおろというすみれに、彩花は首をふった。
「いいんです。私、この子が寝ている姿が大好きなので」
 そう、スヤスヤと眠るこの子をもう一度見たかった。この姿を見ることが、私の幸せなんだ──。
 ミルクをなでてみる。目は開けないが、ヒゲがピクリと動いた。やわらかな感触がし、その体温と鼓動が伝わってきた。
 ああ、生きてる。ミルクが生きてる……泣きそうになったが、目に力を入れてそれをおさえる。ここでミルクの思い出を失うわけにはいかない。そのまま彩花は、ずっとミルクを見守り続けていた。
 そろそろ一時間かという頃、ミルクがやっと起きた。フワアと大口を開けたあと、グッと身体を伸ばしてこちらを見上げる。いつものしぐさだ。
 すみれが嬉しそうにいった。
「ギリギリ起きてくれましたね。最後に何かミルクちゃんとやりたいことはありますか?」
「そうですね……」
 そういわれてふと思いだした。
「あっ、爪。爪を切ってあげないとって、思ってたんだった」
「爪ですか? 猫用の爪切りもありますよ。切りますか?」
「でもミルクって爪切りをすっごく嫌がるんです」
「そういう猫ちゃんいますよね。うちのテンマも、爪切りを嫌がって暴れまくるんですよ」
「テンマ?」
「ああ、彩花様をふもとから案内してきた黒猫です」
「あの猫、テンマっていうんですね」
「はい。天の馬と書いてテンマです。猫なのに馬って変だと思うんですが、シチカさんが付けたんで」
 テンマちゃんか。名前を教えてもらえてよかった。
 彩花は話を元に戻した。
「いつもミルクの爪切りは、獣医師さんに頼んでいたんですよ。最後にミルクが嫌がることをやるっていうのはちょっと……」
「じゃあやめておいた方がいいですね」
「……ええ」
 すると扉の方からニャアと猫の声がした。ミルクではない。テンマだ。いつの間にかテンマがやってきた。その背後には、シチカがいた。
「どうしたんですか、シチカさん?」
 すみれが訊くと、シチカがテンマをなでた。
「テンマが呼んでね」
 テンマがじっとこちらを見つめるので、彩花はドキリとした。エレーヌと同じ、ブルーの透き通るような瞳……何かを訴えかけているような……。
 そこで気づいた。ミルクを爪が伸びた状態であの世に行かせてしまったことが、自分の想像以上に大きな心残りになっていることに。
「ごめんなさい。やっぱり私、ミルクの爪を切りたいです」
 すみれが顔を輝かせた。
「わかりました。絶対そっちの方がいいですよ。ミルクちゃんが嫌がらない爪切りの方法を考えて……あっ」
 すみれが目を大きく見開き、テンマを見た。
「だからテンマ、シチカさんを連れてきてくれたの」
 テンマがうなずくように体を揺すり、彩花はきょとんとした。
「どういうことですか?」
「シチカさんにだっこされると、テンマは暴れないんですよ。他の猫ちゃんもなぜかみんなおとなしくなるんです」
 シチカが口角を上げた。
「私の数少ない特技なんです。さっ、時間がない。ミルク様の爪を切ってあげましょう」
 すみれが彩花に猫用の爪切りを渡し、シチカがミルクを抱き上げた。爪切りを見たらいつもバタバタと暴れて逃げようとするのに、今は抱かれたままになっている。すごい能力だ。欲しい。
 久しぶりの爪切りなので、ちょっと緊張した。ミルクを飼ってすぐに、エレーヌの猫で爪切りの練習はさせてもらった。だから経験はある。
 ミルクの前足を持ち、肉球を押して爪を出す。やっぱり結構伸びていた。伸びっぱなしにしていると、爪が肉球に刺さって傷になったりする。爪の血管を透かしながら位置をたしかめ、慎重に切る。
 パチン──。
 その音を聞いて、胸の奥がコトリと鳴った。ああ、私、ずっと前から自分でミルクの爪を切ってあげたかったんだ。そのことにも気づいた。
 ミルクは、ただじっと彩花を見つめている。手首の内側あたりにある爪は難しい。巻きやすく見えづらい爪だ。ろうそうと呼ぶのよ、とエレーヌが教えてくれた。パチンと狼爪もうまく切れた。
 すべての爪を切り終えると、シチカが腰をかがめて手を離した。ミルクがペロペロと前足をなめている。
 ジリリリリと音がした。すみれが渡してくれた懐中時計が鳴っている。
「そろそろお時間です」
 シチカが口を開いた。もうそんなに時間が経ったんだ。ほんとにあっという間だった。
 彩花はミルクを見据えて、宣言するようにいった。
「ミルク、私強くなるね。だから天国で見守っててね」
 するとその瞬間、ミルクが彩花をじっと見つめて、ニャアと鳴いた。まるで、
「うん、見てるね」とでもいうように。そこでスゥッと、目の前の景色が薄れていった。

 気づくと、街灯の明かりの下にいた。後ろを向くと、あのゲートがある。昼が夜になり、風が冷たくなっていた。満天の星がお出迎えしてくれている。
 戻ってきたんだ……。
 彩花がぼうっとしていると、シチカとすみれが側にいた。
 シチカが微笑混じりに訊いた。
「どうでしたか? ミルク様に会われて」
「よかったです。ここに来てほんとによかったと思います」
 シチカとすみれが顔を見合わせ、嬉しそうに笑った。彩花はつい、すみれの手を握った。
「ありがとうございます、すみれさん。すみれさんの傘回しのおかげで、泣かずにミルクと会えました」
「ハハッ、失敗しちゃいましたけどね。お役に立ててよかったです」
 そこですみれの手のひらが硬いことに気づいた。マメだらけだ。この人は、ずっと傘回しの練習をしていたんだ……感謝の想いがさらに強くなる。
「失礼」
 シチカがそういい、彩花の肩のあたりを触った。何かがついていたのをとってくれたみたいだ。シチカの指を見て、彩花は声を漏らした。
「ミルクの毛だ……」
 さっき服についたみたいだ。猫の飼い主は、絶対服のどこかに毛がついている。
「それ、くれませんか」
「ええ、どうぞ。ただしここで得たものはふもとに着くと消えてしまいますが」
「かまいません。ちょっとだけでも」
 では、とシチカが慎重に、彩花に毛を手渡した。彩花はそれを見つめると、ぼそりと訊いた。
「……シチカさん、もうまほろばから出たので、泣いてもいいですか」
「もちろんです」
 今まで必死に封じこめてきた感情が、シチカの一言であふれでた。悲しみが、大切な家族を失った悲しみの涙が、とめどなくこぼれ落ちる。
「ミルク、ミルク……」
 星空に届くように、声を上げて泣く。喉に痛みが走ったが、もうそんなのどうでもいい。
 泣こう、泣き叫ぼう。ミルクと過ごしたかけがえのない二年間を思い浮かべながら……。
 彩花はしばらくの間、泣き続けた。

「柿の葉寿?」
 エレーヌがきょとんとした。
 翌日仙台に帰ると、彩花はその足でエレーヌの家に向かい、買ってきたお土産みやげを渡した。
 柿の葉寿司は、焼きサバや鮭の寿司を柿の葉で包んだものだ。柿の葉の香りが移って、さっぱりしておいしいんです、とすみれが教えてくれた。
「旅行してよかったみたいね」
 ほっとしたように、エレーヌが目尻を下げた。さすがに死者に会える遊園地で、ミルクに会ってきたとはいえない。
「エレーヌはどうして地域猫の活動をやってるの?」
 前から気になっていたことが、なぜかこのタイミングでこぼれでた。
「うん? 簡単よ。猫に救われたから」
「猫に?」
「そう。私ね、以前東京の大きな商社で、総合職として働いてたの。古い社風でザ・男社会だったんだけど、ほらっ、私って負けず嫌いだから。絶対に他の男どもより出世してやるって、しゃにむに働いたわ」
 その姿が、ありありと想像できる……。
「誰よりも早く出社して、誰よりも遅くに帰った。驚異的な結果を出す、巨額の取引を成功させる、頭はそのことばかりだった。でもね、ある日終電で帰る電車で、窓に映る自分を見てがくぜんとしたの。頰はげっそりとこけて疲れ果てて、もう見るも無惨な顔だった……これがなりたかった自分なのかって……で、次の日から出社できなくなったの……」
「窓に映る自分を見て?」
「ええ、たぶんもう身体も心も限界にきてたんだわ。あの窓に映る自分が、それを教えてくれたんだと思う。で、ずっと家にひきこもっていたとき、長期出張が入った友達から猫をあずかってくれっていわれたの。とてもペットの世話なんてする気になれなかったけど、どうしてもってお願いされてね。
 子猫の面倒を見るうちに、猫ってよく寝るなって気づいたの。ほんと一日中寝てるなって。でね、その寝姿を見ていてだんだんこう思うようになったの。
 生きてるってこういうことなんだって。おいしいご飯を食べて、ぐっすり寝る。それだけで猫はとても幸せそうでしょ。生きるってもっとシンプルでいいんだって、猫が教えてくれたの。
 おかげで少しずつ身体も心も回復していった。でね、仕事を辞めて、故郷の宮城に戻ろうと思ったの。イラストレーターをやろうと思ってね」
 そこで気づいた。
「あっ、作業着の背中の猫、もしかしてエレーヌが描いたの?」
 二人で猫の捕獲をしたときの作業着に、猫のイラストがあった。
 エレーヌが、得意そうに胸をはった。
「そうよ。なかなかのもんでしょ」
「うん」
「学生時代は美大に進むかどうか迷ったぐらいなのよ。絵で食べていけるわけがないと思って、その夢は封印しちゃったんだけどね。でも、もう一度やりたくなったの。すぐに自治体のキャラクターコンテストに入選して、そこからフリーランスとして活動するようになった。今は絵を描きながら地域猫の活動をしているのよ」
「そうなんだ……」
「飼い猫を突然死で失うなんて、つらい想いをしたわね……でもあなたみたいな飼い主に出会えて、ミルクは幸せだったと思うわ」
「ありがとう……」
 また目が潤うるんだが、そこはなんとか堪えた。天国のミルクに心配をかけたくない。
「エレーヌ、私も手伝っていい? 地域猫の活動」
「歓迎するわ」
 エレーヌが青い瞳をキラキラと輝かせた。

 その翌日、彩花は出社をした。
 着替えを終えて朝礼を済ませる。今日も社長は元気だ。昨日は飲みに行かなかったのか、顔もむくんでいない。にこにこといつも以上に上機嫌だ。
 しばらくすると、圭介が出社してきた。出張が終わったんだ。
 ちらちらと何かいいたげに、彩花の方を見てくる。サンドイッチを忘れた件を早く謝れ、と目で訴えている。一週間経っても、まだ覚えているのか。嫌な性格だ。
 彩花は席を立ちあがると、圭介の方に歩いていった。
「部長、お話があるんですが?」
 圭介が鼻の穴をふくらませた。
「なんだ?」
 彩花が深々と頭を下げる。
「先日のサンドイッチの件、申し訳ありませんでした。お約束したのに守れなくて」
「以後十分に注意しろ。恥をかかせやがって」
 優越感にひたるように圭介がいうと、彩花は頭を上げ、声に力をこめた。
「私は謝ったので、次は部長が謝ってください」
「……えっ?」
 一瞬圭介の表情が固まったが、すぐに目をつり上げた。
「どっ、どうして俺が謝るんだ」
「部長は私の猫が亡くなったとき、そんなことで約束を忘れたのかっていわれましたよね。あの発言は私の猫に対する侮辱です。謝ってください」
「ハッ!? おまえが約束を破っておいて、よくそんなことがいえるな」
「どういうことだい?」
 そこに社長が割って入ってきた。圭介の表情に動揺が走った。彩花が事情を説明すると、社長は静かに聞いてくれた。話し終えると、社長が圭介に訊いた。
「おまえ、本当にそんなことをいったのか?」
 いつものおだやかな口調ではない。怒り心頭に発するという感じで、表情が引きつっている。周りの空気がピンとはりつめ、圭介も青ざめている。
「いや、その……」
「いったのか」
「……いいました」
 圭介が声を落とすと、社長が怒鳴り声を上げた。
「謝れ! 今すぐ佐伯に謝罪しろ!」
 一同がびくりとする。温厚な社長がげっこうするなんて、誰も見たことがなかった。
 圭介が飛び上がるようにして謝った。
「さっ、佐伯、すまなかった」
「もっと丁寧に謝れ!」
「佐伯さん、誠に申し訳ありませんでした」
 圭介が深々と頭を下げた。
 彩花はふうと息を吐き、天国のミルクに語りかけた。
 ミルク、私強くなるからね。
 ニャアとミルクの鳴き声が聞こえた気がした。

  *

本作は、2月4日発売の『猫さえいれば、たいていのことはうまくいく。肉球の巻』(ポプラ文庫)に収録されます。

■ 書籍情報
『猫さえいれば、 たいていのことはうまくいく。肉球の巻

君さえいれば今日もしあわせ――
猫を愛する作家陣がすべての猫好きに贈る、
猫まみれの大好評アンソロジー第2弾

■ 著者プロフィール
浜口倫太郎(はまぐち・りんたろう)
1979年、奈良県生まれ・在住。漫才作家、放送作家を経て、2010年『アゲイン』(のち、『もういっぺん。』に改題して文庫化)で、第5回ポプラ社小説大賞特別賞を受賞し、翌年小説家デビュー。他の著作に、ベストセラーとなった『22年目の告白─私が殺人犯です─』のほか、『宇宙(そら)にいちばん近い人』『シンマイ!』『廃校先生』『お父さんはユーチューバー』『ワラグル』など多数。漫画原作者としても活躍の幅を広げている。本作は、『天空遊園地まほろば』のスピンオフ短編。

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