
12月半ばに入り、本格的に冬が到来している。
春から夏にかけては、薄手のカーディガンを半袖の上に着て、
じわじわ夏本番へと移り変わっていくような感覚が個人的にある。
秋から冬になるときは、冬物はまだ出さなくていいや、などと油断していると、
一気に寒波がやってくるような感じだ。
この日も急にやってきた冬に対抗するため、
クローゼットの奥から、コートとマフラーを引っ張り出してきた。
下北沢は、私がよく通っていた大学生の頃以来で、久しく足を運んでいなかった。
当時は下北沢といえば、「サブカル、古着、邦ロックの聖地」という感じで、
街には背中にギターを背負った前髪の重たい若い男の子がよくいるようなイメージだった。
今の下北沢はどうなのだろう?
昼間は人通りも多く、年齢層は学生から、落ち着いた大人まで混在していて、
「若者」「サブカル」と、一括りにはできない、雑多な印象だ。
特に駅周辺は、刷新されていて、駅ナカの飲食店やショップも充実している。
その綺麗な建物は、サブカルとは程遠い。
ふと、ビラを配っているお笑い芸人が、こちらに声をかけてきた。
下北沢には劇場がある。その姿が新しくなった駅と対照的に思えた。
東口方面に沿い、本多劇場の方へ足を進めていく。
下北沢のサブカルといえばここ、という場所が自分の中にある。
それがヴィレッジヴァンガード下北沢店だ。
正面入り口には、ガチャガチャがたくさん置いてあり、
店内にも、たくさんの本や雑貨で溢れている。
私は学生時代、この場所に足繁く通っていた。
だから、今のヴィレヴァンがどうなっているのか興味があったが、変わらない印象で安心した。
この場所に足繁く通っていた頃、私はサブカルというものに憧れを持っていた。
メインではなくサブ。
その裏には、人とは少し違うものを好きでいたい、人とは違う自分でいたい、
といった気持ちがあった。
しかし今思うと、自分というものがわからずに、
サブカル女子でも、なんでもいいから個性が欲しかったような気もする。
それは、人と違う自分だけの唯一無二の個性が欲しい気持ちと、
何かのジャンルに入り込み、同化したい気持ちが矛盾していて少し不思議だ。
今は、ある程度大人になってきて、そのころよりも服や髪形やSNSにつぶやく内容などに
こだわりは減った。それよりも何事もシンプルなのが一番な気がする。
当時の心許ない自分から、少しは成長できたということだろうか。
とにかく今は、自分を何かのジャンルや既存の型へ無理に嵌め込むよりも、
流れに身を任せて出会ったものや、その時の気持ちによって、
自分が形作られるようになりたいと、強く思う。
感傷に浸りながら、店内一通り見終わると、店を出て茶沢通り方面へと少し歩いていく。
その途中、「下北沢シェルター」というライブハウスの前を通りかかった。
私の中で下北沢のライブハウスといえば、ここだ。
BiSHの活動が始まった頃、よくここでライブをしていた。
白黒の床が特徴的で、メンバー6人には少し狭すぎる楽屋が記憶に残っている。
ステージも少し歪な形をしていて、
アイドルというよりバンドマンに使い勝手が良いのだろうと当時から思っていた。
ただ、活動を始めた頃のBiSHはサブカル寄りの雰囲気もあり、
この場所にとても相性が良かったように思う。
今は、どんな人たちがここでライブをしているのだろう。
気になったが、中には入れなさそうだった。
少し前にネットで、アイドル文化についての記事を読んだ。
確か、サブカルアイドルの時代は終わりつつあるみたいな内容だった。
今年は私自身、よくアイドルの文化について個人的に考えることがよくあった。
その記事に書いてあるように、今のアイドルにはサブカルとは真逆に近い、
正統派で隙のないような完璧さを求められていると思う。
しかし、ここからは持論だが、今のアイドルは、
見た目やスキルは隙のない完璧な姿を求めている半面、
ファンはアイドルに対し人間味も求めているように思う。
ステージでの完璧な姿も人間らしさもみたい。
だから、アイドルのMBTIはなんだとかも注目されるし、ネットで色々完結する時代でも、
わざわざ足を運んでチェキを撮ることへの需要が衰えないのだろうと思うのだ。
そういう意味では、今のアイドルはステージでも、
裏でも、気が抜けず、大変そうだなと、側から見ていて思う。
余談だが、今はTikTokで細かい手振りを覚えてすぐに踊らないといけないという
アイドル文化が根付いており、自分たちの曲もあれば、共演したアーティストの楽曲の時もあるだろう。
私は、こういう細かい手振りとかを覚えるのが人一倍苦手だから
TikTokが主流になる前にグループ解散があり、よかったと心底ホッとする自分がいる。
当時は、私が振りを失敗しても「かわいらしい」で済まされていたものも、
今は許されないだろうなと思うからだ。笑
下北沢南口商店街の方面へと歩を進めていく。
古着屋さんやカレー屋さんなど、「THE下北」と言った感じの店が立ち並ぶ中、
目当ての喫茶店へと階段を上っていく。

「ブリキボタンCAFÉ &DINING」は、何年か前にも行ったことがあるお店だ。
映画『アメリ』の世界観がコンセプトになっているようで、
おしゃれで個性的な雰囲気が漂う。
店内は賑わっていて、犬を連れた女性客も多い。
数年前私が訪れた時は、そこまで犬を連れているお客さんが多いという印象もなかった。
しかし、カフェに犬を連れていけるかどうかは店選びの際重要なことなのだろう。
そういえばここ最近、街中でも犬を連れている人は昔より増えたような気がする。
私は飼っていないけど、いつでも側にいてくれるペットは、
言葉を話せないからこそ良いと思う。
流行りのChatGPTは、話しかけたらいつでも寄り添う言葉を掛けてくれるが、
自分が抱えている悩みや現実に、向き合わざるをなくなり、
相談しているうちにいつも嫌になって話の途中でやめてしまう。
窓際に横並びの二人掛け席、テーブル席、どの席も魅力的で迷ってしまったが、
窓際の席を選んで座った。
目の前の私専用の出窓から、通りを行き交う人々を眺めた。
駅についた時も感じたことだが、この街は独自の色を残しつつも、
新しいものも取り入れているから、魅力があり、人通りも絶えないのだろう。
なんだか賢い街だ。ぜひ、私も見習いたいものだ。

メニューを開くと食事、デザートが同じくらい充実している。
私はオムライスとブリュレチーズケーキで散々迷った挙げ句、前者を注文した。
ちなみにここのお店は、いろんな色のクリームソーダもあり、
その中の赤色のストロベリー味のソーダも頼んでみた。

クリームソーダといえば緑色のメロンソーダが王道だけど、
考えてみればなぜ緑が王道になったのだろう。
赤いさくらんぼと白のバニラアイス、メロンの緑の組み合わせが一番良いからだろうか?
それとも、最初に作られたものがメロンソーダだったからというだけか。
メニュー写真の赤、青、緑、白、、、と並べられたクリームソーダは、
アイドルグループを彷彿させる。
なんだか今日はアイドルについて考えることが多い。
その中でも緑はやっぱり安心感がある。
アイドルグループでもこの子がいるグループ、アーティストでもこの曲が有名、とか
どこに行っても、いわゆる「看板」って必要なのかもしれない。
バスクチーズケーキは、とても美味しかったが、今度来た時は、
オムライスや他の色のクリームソーダにも挑戦してみたい。
店を後にすると、今度は駅の方へ歩いていく。
お目当ての「東洋百貨店別館」は、
一つのフロアに雑貨屋や古着、アクセサリー店が集合しているなんともお得感のあるお店だ。
昔よく通っていた本館は閉店したようで、テナントに入っている店舗も少し変わっていたが、
私が大好きだったいろんなクリエイターの作成したハンドメイドアクセサリーや小物の売っている
「素今歩」という店が残っていて安心した。

店内に入り、まず目についたのが
メガネやサングラスを自分好みにカスタマイズできるお店だ。
レンズの形やフレームだけではなく、
そのレンズの好きなところに穴を開けて蝶や十字架、ハート、
それ以外に豊富な種類のモチーフが用意されていて、フレーム部分につけることもできる。
シルバーのフレームの片方のレンズの端に穴をあけ、
蝶のモチーフをつけたものを作成した。
組み合わせは自分次第で本当に迷ってしまい、時間はかかったが、とても楽しい作業だった。
私は普段、度のあるメガネは使わないが、伊達メガネやサングラスは大好きで、
よくプライベートでかけている。
メガネを掛けるだけで、いつもと少し違う自分を演出できる感じが好きなのだ。
このメガネもこれからの私の毎日を少しでも彩るアイテムになるだろう。
嫌なこと、環境からはどうにか逃げられても、自分自身からはどうやったって離れられないから、
自分のことを嫌いなまま生きるって辛いことだ。
このアイテムを身につけている自分が好き。
このグループを好きな自分が好き。
この服を好きな自分が好き。
この音楽をやっている自分が好き。
こんなふうに、自分のことを好きになれるように
ほんの少し工夫しながら毎日を過ごしていきたいものだ。
認められなくてもいい。目立たなくてもいい。
誰かに好かれるよりも、結局は自分で自分に納得することの方が重要だ。
とは言いつつも、ここ最近「自分は間違っていないか?」
「変なことをしていないか?」ということばかり考えていた気がする。
みんな自分は間違っていないと思いたい。
ネットで人が失敗すると、その人とは全然関係ないことでも
すぐにエンタメ化して、面白がられる。
正直、気持ちは痛いほど分かる。
私自身、ChatGPTに「私って変じゃない?」と自分が人に発した言葉や行動の一つ一つを、
何度か問いかけたこともあった。
タイムラインの数ある噂話のエンタメの中に
「私は誰とも違うんだから、みんなと違う道、違うことを思って、当然じゃないか」
そんな言葉を見かけた時、とても心が救われたのを覚えている。
私は、人の失敗や不幸から安心する自分なんかじゃなく、
本当はこんな言葉が欲しかったのだ。
私は誰とも違うんだから、私が人と違うことを考えて、時に居心地が悪いのは当たり前のこと。
だからこそ、私だけの物語があり、私から生まれるものがある。
それは、メインでもサブでもない。私だけのもの。
誰にも真似できないことである。
これから、文化はどう移り変わっていくんだろう。
人気なものはどんどん人気になり、
日の目を浴びないものはどんどん日の目を浴びなくなっていったり、
また他に焦点が当たったり。
そうやって、「文化」は今日も波打ちながら月日と共に移り変わっていく。
だけど、日陰になっても、日の目を浴びても全てがそこに在ること
在ったこと自体には変わりない。
賢く時代を取り入れながら生きながらえる下北沢、次来た時はどんな街になっているのだろう。
早歩きでも遅歩きでも、自分の歩幅が道になる。
歩くのが下手なんだったら、どうせなら人よりユニークで面白い道をゆこう。
さて今度はどんな街を歩こうか。次回へ続く。

モモコグミカンパニー
9月4日生まれ。東京都出身。ICU(国際基督教大学)卒業。
2023年6月29日の東京ドームライブを最後に解散したBiSHのメンバーとして活躍。
メンバーの中で最多の17曲の作詞を担当。2023年9月から音楽プロジェクト(momo)を始動。
執筆活動やメディア出演を中心に幅広く活躍。
著書に『御伽の国のみくる』『悪魔のコーラス』(ともに河出書房新社)、『解散ノート』(文藝春秋)、
『コーヒーと失恋話』(SW)など多数。

