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第7回

偏愛?の本棚(木村)

こんにちは、企画編集部の木村です。
ふだんは新書、エッセイ、ノンフィクションなどなど、小説以外のジャンルの本をつくっています。
「本棚の二列目」ということで、普段の仕事とはまったく関係ない本をご紹介しようと思います。
しがない一人暮らしということに加え、最近引っ越してほとんど断捨離したので、脈絡のない本棚となっております。
いろいろと、お目汚しお許しくださいませ~。

そもそもこの棚、本棚ではないですが、なんか好きで買いました。マンガは巻数順に入っておらず、同じ作家の作品もばらばらに置いてあるという、まあ、だらしない本棚です。上には猫の置物と厄年のお札が置いております。お札って、どこに置いていいか悩みますよね?

では、ちょっと恥ずかしいですが、本の紹介へ!

① 母の終活でもらった画集と梶井基次郎
母が終活の一環で実家にある本を処分しているのですが、子どものころ好きでよくみていたボス/ブリューゲルの画集(左)をもらいました。
それと、大人になってから展覧会に行って自分で買った画集(右)です。
この奇妙な生き物に心惹かれるのと、人とこの世ならざる者が一律に存在している感覚が好きです。人も愉快で、ひどいことをされているのにふつうの顔をしているおじさんとか、それぞれの人物に愛嬌があってずっと眺めていられます。
梶井基次郎は、学校の教科書で『檸檬』を読んで以来好きになりました。
中学まで運動部でほとんど読書をしていなかったのですが、国語の教科書に載っている作品をきっかけに、だんだんと興味を持っていったように思います。授業では扱わなったのですが、安部公房の『鞄』も教科書で読んで好きになりました。
便覧の年表の最後のほうに村上春樹が載っていて、文学史に残る有名な作家なんだということも、それで初めて知りました。教科書ってありがたいですね。


② 世界観のある歴史もの
仕事で小説を担当することはないのですが、趣味の読書は小説です。
ここ最近は、歴史ものを読むことが増えていて、とくに佐藤亜紀さんや皆川博子さんのような独特の世界観のある方のものが好きです。なぜだか、日本の歴史ものにはあまり心がひかれません。

それぞれの方の第二次大戦下のドイツを舞台にした作品を紹介します。
皆川博子さんの『死の泉』は、ナチの施設でとある研究に明け暮れる医師と、私生児を身ごもり、時代に翻弄されながらもたくましく生きる女性主人公の行く末に、息がつまるほどどきどきします。とにかくこの世界観にハマりました。
そして、オビが皆川博子さんの(写真ではわからないですね)、佐藤亜紀さんの『スウィングしなけりゃ意味がない』は、敵国の音楽・ジャズを愛する青少年たちの”闘い”の物語。暗い時代に芸術がいかに人を人たらしめていたか。時代に絶望せず、自分たちらしく生きようとする姿が最高にクールでかっこいいです。



西洋の歴史小説が好きなのは、自分の手に届かない遠いものへの憧れや、もうこの世にないもの、失われたものを見たい、知りたいという気持ちがあるんだと思うのですが、こういう雑誌も好きです・・・。
ザ・耽美。日本画家の松井冬子さんの作品がカバー。

③ 仕事で出会った方たちから影響を受けて
仕事でご一緒する著者さんによって、自分が変わったと思うことは本当に多いです。
知識や情報を持っているというだけではなく、常にオープンで好奇心旺盛、考え方や視点が深く鋭く、文章も唸るほどいい・・・という方にお会いすると、もう、人間のカテゴリーが違いすぎて。いつも、さまざまな方にお世話になっています。

今年の5月末に出した幡野広志さんの『ぼくたちが選べなかったことを、選びなおすために。』という本は、自分の中で大きなものになりました。

著者がどういう方かということをわかりやすく言うと、写真家で狩猟家であり、幼い子供を持ちながら30代前半で難治性のがんになり、余命宣告を受けたということになるのでしょうが、そういうことは、この方の本質、本書とはそう関係ないように思います。
常に「自分の頭で考え続け」ていて、探求し続ける”哲学者”のような方。その、幡野さんの”生きるための思想”のようなものがかかれたのが、今回の本なんだと思います。

今年の5月ごろ、代官山蔦屋さんで幡野さんのセレクト本を展開していたのですが、そこで紹介された本のうちの1冊、『撮る人へ』。写真の撮り方についてというだけではなく、生業をもっていかに生きるかということを問われる本です。写真家を目指している方以外もぜひ。仕事=生業=人生だとしたら、どう生きるかということが、仕事にも人間関係にも色濃くでてしまう。著者の人間愛ゆえのズバッとした語り口が、心にしみわたります。
『安楽死を遂げた日本人』(本棚になかったのですが、『安楽死を遂げるまで』という本が同著者の1冊目で、海外の事例を中心にしたものです。)は、NHKスペシャルにも取り上げられた日本人家族のルポが掲載されています。人生100年時代と言われていますが、そうなると、いかに死ぬか、ということが、いかに生きるかと同義になってくると思うのです。最近刊行される本のタイトルを見ても、死について考える人の数、時間が長くなっていることを感じます。ちなみに、現在の日本では安楽死は、もちろんできません。

最後に全然関係ないのですが、佐藤優さんの文庫『自壊する帝国』の恩田陸さんの解説をどーしても紹介したいので、紹介させてください。
佐藤さんという方の存在に対して恩田さんは、「日本は、まだツキがある」と当時の読書メモにとられたそうです。今の時代については「水は低きに流れる。」という強烈な一言。
解説やあとがきが好きで本棚に入れている本ってありますよね??

本棚の撮影をしていると、あれもこれもいいんだが・・・と思ってしまって。
もっと語りたい本があるんですが、このあたりにします。

今の本棚は「一生読もう」と思っている本は置いていません。
そういう本棚づくりは、もう少し先の楽しみにしようと思っています。

今は、その時の気分や仕事柄読んでおこうと思う本がほとんど。
そしてそれを楽しいと思えています。
マンガもたくさん読みます。

1年後には半分は違う本になっているような気もします。
そしてなんとなく、そうだったらいいな、と思っています。

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