こんにちは。一般書編集部の森です。
この「本棚の二列目」を始めてしまった人です。
社内の人と顔を合わせては「本棚を見せませんか」と言いまくっていたのですが、だんだん協力してくれる人も減り、しまいには「森さんは公開しないんですか」と言われ(公開する気はあったんですよ)、はや二か月。
もうこれ以上連載を止めるわけにはいかない! ということで管理人の登場です。
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僕は文芸編集者として、一般向けの小説(児童書以外)の編集をしています。
主に文庫を手掛けることが多く、ミステリや時代小説などエンタメ中心に担当しています。その傍らでPR文芸誌「asta」を編集したり、このウェブサイトを管理したりもしています(あまり更新できてなくてすみませんね)
じゃあミステリや時代小説が一番好きなのかというとそうではなく、個人的な本の趣味は、SF! SF!
そう、サイエンス・フィクションです。
SFにはまったきっかけは、小学生の時に読んだ小松左京の『宇宙人のしゅくだい』(青い鳥文庫)。
たぶん、いわゆるSFを読んだのが初めてだったんですが、この世にはこんなに未知の可能性が溢れてるのか!とすごいわくわくしたんですよ。これにめちゃくちゃ影響を受けて、大人向けの小松左京に手を出し、そうなると星新一に当然流れ、まあ最後は筒井康隆だよね、というSF御三家に行きつくわけです。
そして筒井さんにドハマりたんですなー。
というわけで筒井棚がコレ。
あのハチャメチャな世界観と文体、実験的な小説。中二病をこじらせていたころに心を鷲掴みされてしまい、以来、筒井康隆大先生を神を崇めています。
筒井さんを一通り読むと、今度は国内SF全般に。というわけで国内SF棚。
菅浩江さんの『博物館惑星』は永遠のオールマイベストです。
国内SFを読むと、敬遠していた海外SFもやっぱり読まないとね~と思うわけです。
そうなるとSF的に読まないわけにいかないのが3つの文庫。早川・東京創元・河出。
早川文庫棚がこの二枚。
カート・ヴォネガットとレイ・ブラッドベリが好きです。特にブラッドベリ。
『たんぽぽのお酒』も名作なんですが、僕はやはり『火星年代記』です。あのラストに満ちる怖さと美しさ、そして可能性! 抒情という言葉が最も似合う作家だなあと思います。
ダン・シモンズもよく読みましたねー。ハイペリオンシリーズは長いけど。
次は河出棚。
河出文庫はSFに限らず大好きです。
リチャード・ブローディガンが大好きで、『西瓜糖の日々』は何度読み返したことか。あと、たぶん二列目に隠れているんですが、久生十蘭もすごく読んでました。「母子像」という短編をきっかけに他の作品を読んだら全然毛色が違っていて、なんだこの作家すごいな! と衝撃を受けたのをよく覚えています。あれだけ幅広い世界を高い筆力で描ける作家はなかなかいないのではないでしょうか。
尾崎翠の『第七官界彷徨』もマイベストな一冊です。一時期、家で一人でお酒を飲んで、べろべろになりながら尾崎翠を朗読する、ということをやってました。声に出して読みたい日本語です。なにやってんだか。
創元棚はこれ。
創元SFも素晴らしいですよね。あまり誰かと話すことがないんですが、ビジョルドの「ヴォルコシガン」シリーズも夢中になって読みました。後ろに「銀河英雄伝説」も隠れていますが、スペースオペラはけっこう好きです。
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……という陽の当たるSF道を歩くと、裏通りものぞきたくなっちゃうんですよ。
裏通りとは、古書。
早川文庫は今でこそ水色ですが、昔は縦長で銀か金色だったんですね。通常「銀背」「金背」と呼ばれています。
その銀背のコレクション棚。後ろには辞書が見えてますね。
かつての銀背は箱がついて売られていました。箱はだいたい捨てられちゃうので、状態良く残っていることはほとんどないんですが、なんと一冊だけ、持っているのです。まさに僕のお宝本。
それがなんと、安倍公房の「第四間氷期」!(ドヤ顔) すごくないですか! ねえ、すごくないですか!
裏通りはほかにもあります。ご存知の人もいるかもしれませんが、サンリオSF文庫。
あのキティちゃんでおなじみのサンリオさんが、かつて刊行していた文庫シリーズです。素晴らしいラインナップと、オシャレなカバーが特徴だったのですが、現在は絶版に。熱心なファンが多くて一部はプレミアが付いており、現在ではコレクターズアイテムとして有名です。
そのサンリオ棚がこちら。
この中でも特に気に入っているのはこの二冊ですね。
マイクル・コニイの『ハロー・サマー・グッドバイ』と、『ブロントメク!』
『ブロントメク!』は一時期けっこうなプレミアがついてました(1万円くらいまでいってたこともあったはず)。そんなときに格安で売られているのを古書店で見つけて、動揺を抑えながら購入して大切にしていたんですが、河出文庫が復刊しちゃって値下がりしちゃいました。残念。
単行本棚はこんな感じです。星一(星新一のお父さん)の『三十年後』が二冊あるのは保存用です。
ちなみに二列目はこれ。
あまり前列と二列目で使い分けていないんですが、二列目には個人的な偏愛本を置いている気がします。我ながら変な本が多いなあ。
とくにこの『平行植物』は最高ですね。「平行植物」という植物の研究本で、膨大な脚注や論文も掲載されてるんですが、そのありとあらゆる全てが架空なんです。「なんとか博士が何年に刊行したあの書籍では~」みたいなもの全てがフィクションという、全力でバカなことをやっている本です(ほめ言葉)。
『鼻行類』はその動物版です。文庫なのでお求めやすくておススメですよ。
あ、単行本棚にはウイスキー本と、高見沢本も入っています(唐突)
僕は大のアル中(ファンの自称。「THE ALFEE中毒」の略)で、予備校時代は高見沢に憧れて髪を肩まで伸ばしたあげく、フォーク時代の吉田拓郎みたいになってしまった黒歴史がありますが、アルフィーのマンガも本棚にあるんですなー。
その名も「ドリームジェネレーション」全9巻!
アルフィー結成からヒットまでの苦労を楽しく描いた名コミックです。愛蔵版も出てるからみんな読むといいよ!
コミックだと、お隣の『プラネテス』はバイブルです。高校3年生の時に『プラネテス』のマンガとアニメを見て感銘を受け、それまで法学部志望だったのが「なんかもっと人生の役に立たないことを考えないといけないのではないか!」と思い立ち、文学部志望に変更。
意を決して担任の先生に「文学部に変えたいんですけど…」と恐る恐る切り出したら、「今のお前の偏差値では法学部が厳しいから、そのほうがいいぞ!」と満面の笑顔で言われ、複雑な気持ちになりました。
まあ、そんなわけで今こうして出版社で働いているので、人生わからないものですね。
ほかに普通の小説もたくさんあるんですが、面白みに欠けるのと、SFとアルフィーの話ができて満足したので、この辺で終わりにします。
これでもう「森さんは公開しないんですか?」とは言わせない! ということで、ますます色んな人の本棚をさらけ出していこうと思います。
来年の「本棚の二列目」にもご期待ください。