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幸せの国殺人事件
一 幻のインディーゲーム『幸せの国殺人事件』を作った関東在住の大学生《AA》は、安堂篤子ではなく國友咲良だった――。 その太市の主張は、すぐには受け入れられるものではなかった。 「確かに《SAKURA》の六つのアルフ…
一 幻のインディーゲーム『幸せの国殺人事件』を作った関東在住の大学生《AA》は、安堂篤子ではなく國友咲良だった――。 その太市の主張は、すぐには受け入れられるものではなかった。 「確かに《SAKURA》の六つのアルフ…
* 「こないだの奴ら、もうハピネスランド作んの諦めたのかな。ここ来る途中に覗いてきたけど、あれから全然進んでねえし」 盗賊はそうぼやくと、洞窟の天井から垂れ下がる鍾乳石に鞭を打ちつけた。鍾乳石を鞭で壊すことはできないし…
三 少し前に、未夢が探していたインディーゲーム『幸せの国殺人事件』が、フリマアプリに出品されていた。だけどパッケージの画像が粗く、偽物を出品して代金を騙し取る詐欺だろうとその時は考えていた。 ゲームの製作者は、関東の…
一 太市のアカウントが消えていることに気づいた未夢は、最初は何かデータ上のトラブルが起きたのだと思ったそうだ。それですぐに太市に「WoNのアカウント消えちゃってるよ」とLINEでメッセージを送った。しばらくして太市から…
第1章 余命一年のふたり 「先生。俺は……あとどのくらい生きられるんですか?」 清潔な診察室。皺のない白衣を纏った、初老の医者。机の上のカルテと、対面のホワイトボード。 ついさっきまで俺は──待合室にいたときに入ったク…
プロローグ 運命の出会いは、時に驚くようなあじわいがあるものだ。 たとえるなら……唐突に渡されたホカホカの肉まんのように。 * 雨の夕暮れ。 倉庫整理のアルバイトを終えた俺は、トボトボと中華街を歩いていた。 その日…
序 其れは、図られし縁 大陸に、最大の面積を占める大国、陵りょう。 この地ではかつて、無数の悪鬼が跋扈ばっこし、人々は悉ことごとく疫病や災いに苦しめられていた。草木は生えず、水は涸れ果て、空にはいつも暗雲が垂れ込め…
「Aの図とBの図、『静けさ』を表しているのはどちらだと感じる?」 担任で美術担当の二木にき良平りょうへいが、教室の生徒全員に問いかけた。美術室の黒板には、大きな白い紙に印刷された二枚のシンプルな図が、四隅をマグネットで留…
* 「ところで、もう六時半を回ったね。親父、腹は減らないかい」 鷹志がそう云い、大浜社長もうなずき、 「うむ、そう云われれば時分時じぶんどきだな」 三戸部刑事がそれを聞き咎めて、 「社長、飲食物はどうか…
『大浜富士太殿 貴殿の所有するブルーサファイアを頂きに参上する 怪盗 石川五右衛門之助 尚、期日は次のうちいずれかとする 7月14(水)15:00~20:00 7月21…