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第3話 303井上涼太
井上涼太いのうえりょうたはマンションに帰ったとき、入口に人影が見えるといったん通り過ぎる。 疲れていても、トイレに行きたくても、今日のように夏の日射しで汗を掻かいていても、そうせずにいられない。相手がだれかを認識するよ…
井上涼太いのうえりょうたはマンションに帰ったとき、入口に人影が見えるといったん通り過ぎる。 疲れていても、トイレに行きたくても、今日のように夏の日射しで汗を掻かいていても、そうせずにいられない。相手がだれかを認識するよ…
石川いしかわさくらのかかりつけの心療内科医は、かならず診察の第一声を「最近はどうですか」で始める。さくらはそのたびに、彼はもしかしてやぶ医者なのではないか、と疑ってしまう。夫の会社の産業医でもある人物だから悪く思いたく…
第1章 私の恋は、いま走り始めた。 暇を持て余していた指先が、画面上に躍った見出しの文字に導かれ、滑る。 目を皿のようにして、ミュートのまま映像を再生する。 そのニュースは、つい先日起きた非日常的な出来事の記憶を呼び…