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【さくらのひとやすみ #11】旅と音楽
旅も終盤。 エッセイも終盤である。 スペインからロンドンへと舞い戻った私はピアニストの渡辺翔太さん、しほさん夫妻の旅行にジョインすることになっていた。 そもそも翔太さんとわたしが出会ったのは、旅立つ数ヶ月前。 2…
旅も終盤。 エッセイも終盤である。 スペインからロンドンへと舞い戻った私はピアニストの渡辺翔太さん、しほさん夫妻の旅行にジョインすることになっていた。 そもそも翔太さんとわたしが出会ったのは、旅立つ数ヶ月前。 2…
朝、パリのシャルル・ド・ゴール空港に着いてから4時間後、部屋と自分を整えたところで、仕事のスタート。 16時30分。まず最初に組まれていたスケジュールは、Radio VINCIというラジオ局の番組「Marque-Page…
第1話 小麦と発酵バターのクロワッサン 1 パンが焼ける匂いは、どうしてあんなに幸せな気持ちになるんだろう。 オーブンの熱気にとけて甘い香りがほんわりと漂う。焦げ目がつきはじめた生地から香ばしい匂いがして、じゅわ…
マッサージが好きだ。なんなら愛している。 「わたし、最期はヘッドスパされながら死にたいんです」と頭部をほぐしてもらいながら伝えたこともあるくらいには重い。 指圧も好きだし、オイルも好きだし、基本見境はない。 整体…
小学一年生の二学期くらいまで団地に住んでいた。 覚えているのは、台所についている透明なひも。 「このひもなあに」 短い髪でツインテールした私がきく、母は片方の口角をあげてにいと笑い、ゆでたまごを右手にもち、左手でひも…
「フランスより、ご招待がきております」 ポプラ社の担当編集者三枝さんからそんなメールをいただいたのは2024年10⽉31⽇のことでした。 パリでは毎年、Festival du Livreという国内最⼤級の⽂学祭典が開催さ…
「明日はまつりに行こう」と、土曜の夜に父が言った。 なんだか、へんな気がした。 父はひとの多いところをとことんきらう人で、小原家はこれまで、ひとの集まる場所へは、ほとんど出かけたことがないのである。それが、まつりに行く…
開園前の遊園地が、こんなにキラキラして見えるなんて初めて知った。 まだ客のいないそこは、想像していたよりずっと広大に感じる。朝日を浴びたアトラクションが、むずむずと喜びをこらえながら始まりの時を待っているみたい…
朝、散歩をする。起きてすぐ、スマホをひらかず、何かを考える間もなく家を出る。よく眠れた日は目も頭の中も雪がふったみたいにまっしろだから、その白さでSNSとかを見ると、なんだか1日中、画面にうつしだされた映像や言葉がうっす…
2025年、戦後80年の節目に、ポプラ社は一冊の本をコミカライズします。『いしぶみ 広島二中一年生全滅の記録』(広島テレビ放送 編/ポプラポケット文庫)です。 原爆投下の日、爆心地から約500mの場所にいた広島二中一年生…