2022.06.01 エンタメお仕事 第四話 田辺聖子の鰯のたいたんとおからのたいたん 覆面作家、高城(たかしろ)柚(ゆず)希(き)の部屋はまず長い廊下があって、そこを抜けると広いリビングとなっていた。そして、部屋の一面がガラス張りで明るい日の光がさんさんと入ってきていた。 高城の妹は大きなアルコール飲...
2022.05.01 エンタメお仕事 第三話 赤毛のアンのパンとバタときゅうり 樋口(ひぐち)乙(おと)葉(は)が「夜の図書館」に来てから、一ヶ月ほどが経った。 なんだか、ばたばたしてあっという間に過ぎたような気がする。だけど、仕事をしながら亜子(あこ)や正子(まさこ)と話したり、食堂で徳田(と...
2022.04.01 エンタメお仕事 第二話 「ままや」の人参ご飯 引っ越しを終えたあと、一眠りして午後三時に図書館に行った。 玄関のところに大きな黒塗りの車が駐まっていた。大きいだけでなく、車体もぴっかぴかで、一目で高い車とわかる。思わず中をのぞくと、スーツに黒い手袋をした年...
2022.03.01 エンタメ 第一話 しろばんばのカレー 自己紹介……と言うほどでもないが、図書館の前で彼に自分の名前を名乗った時、樋口(ひぐち)乙(おと)葉(は)は、肩すかしと安堵という複雑な気持ちを抱いた。 乙葉の名前を聞くと、たいていの人はこう言う。 「樋口乙葉? 樋...