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僕が溺愛したのは、余命八ヶ月の眠り姫だった
美しく澄み渡る、紺こん碧ぺきの海の底。 色鮮やかな熱帯魚や愛くるしいペンギンに囲まれ、今日も君は無邪気に笑っている。 そんな幻想的な光景を見守る僕に、視線に気付いた君が声を掛けてきた。「ん、どうかした?」「いや、大した…
美しく澄み渡る、紺こん碧ぺきの海の底。 色鮮やかな熱帯魚や愛くるしいペンギンに囲まれ、今日も君は無邪気に笑っている。 そんな幻想的な光景を見守る僕に、視線に気付いた君が声を掛けてきた。「ん、どうかした?」「いや、大した…
プロローグ 僕が死んだあと、何事もなかったように世界が続いていくのが嫌だ。 追いかけている漫画も、来年公開予定の楽しみにしていたアニメ映画も、僕だけが見られないなんて損した気分になる。だからといってこの苦しみを抱えた…
プロローグ 「ねえ、ほかの女と浮気してるでしょ」 仕事終わりに陽よう介すけを駅前のカフェに呼び出し、そう告げた。 交際を始めて四ヶ月。今までで最長記録だった。 陽介とは私が勤めているネイルサロンで知り合った。彼は私の常…
星を見る度に、性懲りもなく考えてしまう。 君が余命百食なんていう、悪魔のような病に侵されていなければ。 自分たちには、もっと別な日々があったんだろうなって。 人を振り回すのが生き甲斐の君は、腰が重い俺をいろいろな場所に…
君の涙 やけに蒸し暑い日曜日の深夜。僕は部屋の片隅にある扇風機のスイッチを入れ、勉強机に向かった。 椅子に腰掛けてノートパソコンを起動し、映画やアニメなどを視聴できる動画配信サイトに飛び、僕に刺さりそうな物語を物色す…
第一章 余命銀行の新入社員 ロッカーに貼ってある【生内いけうち花菜はな】の名前が書かれた薄っぺらい磁石をはがすとき、胸はたしかに痛かった。 三月二十四日、金曜日。最後の出勤日である今日、引き継ぎをしているうちにいつの間…
プロローグ 死神から凶報が届いたのは、彼にメッセージを送ってからおよそ二週間後のことだった。彼、なんて呼んでいるけれど、もしかすると彼女かもしれないし、死神なのだからそもそも性別はないのかもしれない。いや、今はそんな…
第1章 余命一年のふたり 「先生。俺は……あとどのくらい生きられるんですか?」 清潔な診察室。皺のない白衣を纏った、初老の医者。机の上のカルテと、対面のホワイトボード。 ついさっきまで俺は──待合室にいたときに入ったク…
プロローグ 赤色灯が明滅する救急車からストレッチャーが降ろされるや、救急医が患者に馬乗りになる。CPRの再開。搬送中それをやり続けていた救急救命士の顔は、汗みずくだ。「CPAOA。気管挿管準備」「ルート確保、CVカテ…
田所圭介たどころけいすけは壁にもたれ、くすんだ部屋をぼんやりと眺めていた。 あの日を境に、時間は途切れたままだ。 こんな暮らしが、もう一年も続いている。 厨房ちゅうぼうに立っていた日々が、遠い幻のようだ。 過去の罪が、…