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【うちがふつうで、よそがへんなの!7】命日
父の命日は、六月の終わり。 昼過ぎにひとり暮らしの部屋を出て、実家に向かう。 乗り換えの駅にある花屋で、花束を買う。うちは誕生日でも命日でも、花束を贈るときには、明るく大きくうつくしいものと決まっている。時間もなかっ…
父の命日は、六月の終わり。 昼過ぎにひとり暮らしの部屋を出て、実家に向かう。 乗り換えの駅にある花屋で、花束を買う。うちは誕生日でも命日でも、花束を贈るときには、明るく大きくうつくしいものと決まっている。時間もなかっ…
開園前の遊園地が、こんなにキラキラして見えるなんて初めて知った。 まだ客のいないそこは、想像していたよりずっと広大に感じる。朝日を浴びたアトラクションが、むずむずと喜びをこらえながら始まりの時を待っているみたい…
2025年、戦後80年の節目に、ポプラ社は一冊の本をコミカライズします。『いしぶみ 広島二中一年生全滅の記録』(広島テレビ放送 編/ポプラポケット文庫)です。 原爆投下の日、爆心地から約500mの場所にいた広島二中一年生…
連載二回目は、前回の渋谷から山手線外回りで13駅離れた、日暮里駅からスタート。改札を出ると、平日昼間にも関わらず沢山の人が行き来している。日暮里は、私の中でそこまで人がいるイメージはなかったが、と思っていなかったが、想像…
なにか新しいことをはじめたいなと思うことがあっても、つい後回しに。気負わず、ちょっとしたことからやってみようか?例えばスタバの新しいカスタマイズだったり。タクシーアプリを使ってみたり。その先になにがあるかはわからないけれ…
ある日、YouTubeで大好きなカズレーザーの動画を見ていると、カズが「ホットドックは両端を交互にかじって食べる」「アルフォートの船が描いてある面は見ないで食べる」というような話をしていた。 他人には理解できないしう…
ユニバーサルシティ駅を出て一歩踏み出す瞬間、杏子きょうこはかならず、あえて顔を伏せる。脈がはやくなるのを深呼吸で抑える。一、二、三、と数えて、それからぱっと顔を上げる。大好きな風景だから、改札から吐き出される大量の人び…
もしも願いがひとつだけ叶うなら、ママはなにをお願いする? 娘がまだ幼かった頃に、初佳もとかはそう問われたことがある。ちょうど、保育園から帰るところだった。前後に子ども用の座席を設置した自転車にまたがり、保育園を出るなり…
縦横四列に組まれた、十六のテーブル。 席に着いた者たちは静かにそのときを待っている。 腕組みをして俯うつむく青年、頰ほお杖づえをついて周囲を眺める少年。 微笑を浮かべる女、大あくびをする男。 手元の駒を整える少女、整え…
3 その贈り物に込める思いは 〈たいやき波平〉さん。 私がうんと小さい頃にはまだ和菓子とかも売っていたそうなんだけど、作っていたおじさんやおばさんが亡くなってからは、たいやき屋さんになったんだ。そして、警察官だった禄朗さ…
ビストロの朝食 〜おいしいパンとよい酒があれば〜 まだ暗い部屋に、トイピアノの音が響きわたった。 どこか気の抜けるようなその音は、有ゆう悟ごが設定した、仕事用電話の着信音だ。 手探りで電話を探すが、手の届く範囲にはな…
スイスに行きたいと思ったきっかけは数あれど、一つはやはりインスタグラムだろうか。 当時のパーソナルの先生が「スイスは最高すぎて毎年行ってる」と私に伝えてきたあたりから、インスタでスイス絶景アカウントが異様にヒットする…
六十代半ば、女性、身長は百五十五センチくらい、体重は平均よりやや重いだろう。腰痛があり、右膝をずっと痛めている。 条件に合わせ、枕とマットレスを用意する。「どうぞ、こちらに仰向けで寝てみてください」 あいているベッドに…
開園前の遊園地が、こんなにキラキラして見えるなんて初めて知った。 まだ客のいないそこは、想像していたよりずっと広大に感じる。朝日を浴びたアトラクションが、むずむずと喜びをこらえながら始まりの時を待っているみたい…
2024年、夏。お暇をいただきヨーロッパに行くことにした。 この連載は、とにかく軽やかに、時に雑に、休息の素晴らしさについて語らう連載にしていきたいとは思っているのだが、序章は、少々重い話になりそうである。 しかし、…
ロンドンでは、お友達の上白石萌音ちゃんのホテルに泊めてもらっていた。 彼女が舞台「千と千尋の神隠し」の上演のためロンドンに行くことが決まった時、 「え〜便乗しちゃおうかな」「おいでおいで」 とゆる〜い会話は交わしていたが…
「好きな食べ物」がみつからない。 いや、好きな食べ物はいくらでもあるんだ。 なんだかいきなり情緒不安定なことを言ってしまった。私がみつからないという「好きな食べ物」とは、 「あなたの好きな食べ物はなんですか?」 と…
商品やサービスから個人まで。魅力、強さ、価値がなかなか伝わらない時代です。差別化は考えられているのに、いったいなぜ?? その大きな理由は「付加価値をうまく作れていないから」。役立つのは「差別化」ではなく、「付加価値化」な…
君の涙 やけに蒸し暑い日曜日の深夜。僕は部屋の片隅にある扇風機のスイッチを入れ、勉強机に向かった。 椅子に腰掛けてノートパソコンを起動し、映画やアニメなどを視聴できる動画配信サイトに飛び、僕に刺さりそうな物語を物色す…
今回は羽田からロンドンへの直行便。 前回も触れたが、2023年にお友達のゆうぴーこと優河さんとニュージーランドに行った際、行きも帰りもトランジットのオーストラリアにキャリーバッグが置き去りにされるハプニングが発生した為、…
氷で手を冷やしてから肉を殴る男は初めてだった。 手が傷むからと、肉叩きを使うよう云ったんだけれど〈だいっじょぶ!〉とまるで気にする様子がない。本人はこうすると肉に手の温度が伝わらず〈良いパティ〉が準備できると信じている…
【201908262310.m4a】 はじめまして。村むら井い翔しょう太たといいます。よろしくお願いします。 とりあえずあの日のこと、全部話しますね。正直、気は進まないですけど。肝試しになんて行かなければ、杏あんは死な…
井上真偽 オトシモノ
荻原浩 お母さんの秘密の水曜日
汐見夏衛 12歳の君へ
原田ひ香 もう一度行きたい場所
大島真寿美 本の森には…
阿津川辰海 失恋名探偵 / 瀧羽麻子 我らが音楽に祝福あれ / 寺地はるな 雨が降ったら / 村山早紀 つくろうひと