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第3話 303井上涼太
井上涼太いのうえりょうたはマンションに帰ったとき、入口に人影が見えるといったん通り過ぎる。 疲れていても、トイレに行きたくても、今日のように夏の日射しで汗を掻かいていても、そうせずにいられない。相手がだれかを認識するよ…
井上涼太いのうえりょうたはマンションに帰ったとき、入口に人影が見えるといったん通り過ぎる。 疲れていても、トイレに行きたくても、今日のように夏の日射しで汗を掻かいていても、そうせずにいられない。相手がだれかを認識するよ…
2025年3月1日。私は人工股関節手術を受けました。なにかと理由をつけて先延ばしにしてきましたが、脚の痛みは強まる一方。気づけば脚をかばってペンギンのような歩き方しかできないありさまです。もうやるしかない。覚悟を決めま…
ラッキーは、とつぜん家にやってきた。 遠くの街からもらわれてきた子だった。鍵しっぽで、手のひらの上で眠れるほどの小さな猫。やってきた猫を、母と父はふたり並んで、じっと見つめた。 そして、どちらからともなく、「これは、…
ロンドンでは、お友達の上白石萌音ちゃんのホテルに泊めてもらっていた。 彼女が舞台「千と千尋の神隠し」の上演のためロンドンに行くことが決まった時、「え〜便乗しちゃおうかな」「おいでおいで」とゆる〜い会話は交わしていたが、と…
2025年、戦後80年の節目に、ポプラ社は一冊の本をコミカライズします。『いしぶみ 広島二中一年生全滅の記録』(広島テレビ放送 編/ポプラポケット文庫)です。 原爆投下の日、爆心地から約500mの場所にいた広島二中一年生…
2023年にポプラ社小説新人賞奨励賞を受賞した坂城良樹の『あんずとぞんび』は、“ゾンビ”が存在する社会が舞台である。しかしホラー作品ではない。 主人公は小学三年生の少女、あんずだ。川の向こうにタワーマンションが立ち並…
『恋文の技術』の舞台である石川県は能登半島。作中に登場するスポットをご紹介します。作品を読んで赴けば楽しさ倍増! ぜひ旅のおともにしてください。 『季刊アスタ』vol.15より転載(写真&構成:ポプラ社編集部、地図製作:…
昨年11月、15周年を記念して刊行された『恋文の技術 新版』。同月9日、物語の舞台である石川県の石川県立図書館さんにて森見登美彦さんのトークイベントが行われました。その一部をお届けします! トークイベント聞き手:上田敬太…
「コンビニ行くけどなんかいる?」と父が言った。 父は病気がちになってから、働かずに家にいることが増えたのだ。あまり遊びにもいかず、放課後や夏休みはずっと家にいる中学生だったわたしは、父と過ごすことが多かった。 そうは…
プロローグ 三月も後半に突入した某日。洋菓子店『月と私』に、飛行機で海を越え子羊たちがやってきた。「あっ、アニョー・パスカルの型、アルザスから届いたんだね。見せて見せて。うーん、型だけだとちょっとシュール? でも可愛…
小学生の私は、よく変な遊びを考案していた。 例えば「ヒロシ色鬼」。ルール自体は〝鬼につかまる前に指定された色に触る〟という色鬼のルールそのものなのだが、私はそこに当時はやっていた「ヒロシ」という芸人の要素を取り入れようと…
なにか新しいことをはじめたいなと思うことがあっても、つい後回しに。気負わず、ちょっとしたことからやってみようか?例えばスタバの新しいカスタマイズだったり。タクシーアプリを使ってみたり。その先になにがあるかはわからないけれ…
六十代半ば、女性、身長は百五十五センチくらい、体重は平均よりやや重いだろう。腰痛があり、右膝をずっと痛めている。 条件に合わせ、枕とマットレスを用意する。「どうぞ、こちらに仰向けで寝てみてください」 あいているベッドに…
2024年、夏。お暇をいただきヨーロッパに行くことにした。 この連載は、とにかく軽やかに、時に雑に、休息の素晴らしさについて語らう連載にしていきたいとは思っているのだが、序章は、少々重い話になりそうである。しかし、それが…
「好きな食べ物」がみつからない。 いや、好きな食べ物はいくらでもあるんだ。 なんだかいきなり情緒不安定なことを言ってしまった。私がみつからないという「好きな食べ物」とは、 「あなたの好きな食べ物はなんですか?」 と…
君の涙 やけに蒸し暑い日曜日の深夜。僕は部屋の片隅にある扇風機のスイッチを入れ、勉強机に向かった。 椅子に腰掛けてノートパソコンを起動し、映画やアニメなどを視聴できる動画配信サイトに飛び、僕に刺さりそうな物語を物色す…
氷で手を冷やしてから肉を殴る男は初めてだった。 手が傷むからと、肉叩きを使うよう云ったんだけれど〈だいっじょぶ!〉とまるで気にする様子がない。本人はこうすると肉に手の温度が伝わらず〈良いパティ〉が準備できると信じている…
2021年本屋大賞2位となった、青山美智子さんの『お探し物は図書室まで』の文庫が、3月2日に発売されます。 初回配本限定で、著者の青山さんのメッセージが印刷された特別カード(名刺サイズ)が封入されます! 絵柄は上記の3種…
【201908262310.m4a】 はじめまして。村むら井い翔しょう太たといいます。よろしくお願いします。 とりあえずあの日のこと、全部話しますね。正直、気は進まないですけど。肝試しになんて行かなければ、杏あんは死な…
「ザディコ。箱船へようこそ」「わたしはオオバカナコ。はこぶね?」「それについてはボンベロから聴くと良い」 男が手を離し、パピとダフに近寄るとマルキリが手を出してきた。「アンセム」「え? あなたマルキリでしょ」「偽名に決ま…
序 其れは、図られし縁 大陸に、最大の面積を占める大国、陵りょう。 この地ではかつて、無数の悪鬼が跋扈ばっこし、人々は悉ことごとく疫病や災いに苦しめられていた。草木は生えず、水は涸れ果て、空にはいつも暗雲が垂れ込め…
プロローグ 死神から凶報が届いたのは、彼にメッセージを送ってからおよそ二週間後のことだった。彼、なんて呼んでいるけれど、もしかすると彼女かもしれないし、死神なのだからそもそも性別はないのかもしれない。いや、今はそんな…
井上真偽 オトシモノ
荻原浩 お母さんの秘密の水曜日
汐見夏衛 12歳の君へ
原田ひ香 もう一度行きたい場所
大島真寿美 本の森には…
阿津川辰海 失恋名探偵 / 瀧羽麻子 我らが音楽に祝福あれ / 寺地はるな 雨が降ったら / 村山早紀 つくろうひと