2023.08.01 エンタメお仕事 8 検定調査審議会による審査が終わり、白表紙本にたくさんの付箋をつけて、雪ゆ吹ぶきは会社に戻ってきた。 隼はや人とにとって検定は謎めいており、ベールの向こう側で行われているようなものだった。そこでなにが行われているのかは...
2023.05.25 エンタメお仕事 7 その週末、隼はや人とは東京の実家に戻ることにした。 飲み会のあと、陽はる花かには連絡を取らなかった。メッセージに書かれていた「横よこ塚づか」という人物について、問い質したい気持ちはあったが、なんと言えばいいかわからず...
2023.03.25 エンタメお仕事 6 休日になり、隼(はや)人(と)はようやく、陽(はる)花(か)と電話で話すことができた。 「それで、結局、べつのイラストレーターさんに頼んで、なんとかなったんだけど、ほんと、信じられないよな。仕事を頼んだのに、それを...
2023.01.25 エンタメお仕事 5 懐かしい匂いがした。 汗のしみついた防具の匂いだ。頭は手拭いで絞めつけられ、顔は面に覆われ、全身にずっしりと重さを感じる。 ここは道場で、対戦相手が見える。 腰につけた藍染めの垂たれには「瀬口」の文字。その横に小...
2022.11.25 エンタメお仕事 4 部屋に入ると、流果(るか)はあきれた口調で言った。 「うわっ、また、めっちゃ、散らかってるやん!」 先週末に片づけをしたはずなのに、隼人(はやと)の部屋はまた服が脱ぎ散らかされ、本や書類があちこちに広がり、シンク...
2022.09.25 エンタメお仕事 3 出社時刻には、なんとか間に合った。 子猫の入った段ボール箱を抱えて、隼(はや)人(と)が出社すると、雪吹(ゆぶき)はわなわなと肩をふるわせて、とがめるような声を出した。 「なんですか、それは……」 隼人は視線を下に...
2022.07.25 エンタメお仕事 2 今朝も大阪城は太陽の光を受けて、しゃちほこが金色に輝いている。 まず、ベランダに出て、朝日を浴びたあと、隼(はや)人(と)は部屋に戻り、冷蔵庫を開けて、牛乳パックを取り出した。 牛乳を飲もうと思ったが、グラスがない...
2022.05.25 エンタメお仕事 1 電車のなかで、瀬口せぐち隼人はやとは原稿用紙を広げ、文章を読んでいく。 親譲りの無鉄砲で……という書き出しではじまるのは夏目漱石の『坊っちゃん』だが、この作品を中学生のときに教科書で読んで、妙に心惹かれた。読...