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『英国幻視の少年たち6 フェアリー・ライド』発売記念SS
数分産まれるのが早ければ、人生は逆転していたのだ。 ジャック・タガートは、その可能性についてよく考えた。英国特別幻想取締報告局の中にいて、そのことに思いを馳せずにいるのは不可能だった。この国では、ある条件下で産まれた者…
数分産まれるのが早ければ、人生は逆転していたのだ。 ジャック・タガートは、その可能性についてよく考えた。英国特別幻想取締報告局の中にいて、そのことに思いを馳せずにいるのは不可能だった。この国では、ある条件下で産まれた者…
「皆川に頼まねぇ?」 コロッケパンを食いながら、近藤が言った。「なんで皆川?」俺は小声で訊き返す。近藤は肩をすくめた。「器用じゃん。このあいだシングルに褒められてたし」「でも……、なんか変わってる…
イギリスには、「ファンタズニック」という言葉がある。 幻想的生命体に遭遇した人々が陥るパニック状態のこと。 妖精や精霊、ゴーストなんかがごく普通に存在するこの国では、ファンタズニックもまた頻繁に起こる――。 そんなわ…
一般書営業部の宇田川です。 一般書(児童書以外すべての本)営業部の皆様の業務を、円滑に進められるようにサポートのお仕事をさせていただいています。 普段からこの連載を楽しみにしており、事あるごとに担当森さんへ「いやーほんと…
〝鞆ともの浦うら〟の通称で知られる、瀬戸内海沿岸の町である鞆。山のほうに続く石畳の細い坂道を上ると、閑静な住宅地。その奥にあるのが、昭和初期に建てられたというコロニアル様式の家だ。急勾配の三角屋根とアーチ型の玄関ポーチと…
第1話 小麦と発酵バターのクロワッサン 1 パンが焼ける匂いは、どうしてあんなに幸せな気持ちになるんだろう。 オーブンの熱気にとけて甘い香りがほんわりと漂う。焦げ目がつきはじめた生地から香ばしい匂いがして、じゅわ…
第1話 至福のクリームパン 1 おれの命運はクリームパンによって尽きた。 丸焦げのトーストみたいにお先真っ暗で、がぶりとやったらこぼれそうなくらい詰まったツナマヨみたいにぎゅうぎゅうの八方塞がり。とどめにクリーム…
プロローグ 桔平が帰って来ていた〈バーバーひしおか〉で 今日は第三月曜日。〈バーバーひしおか〉は定休日の朝。起きて一階に下りていくと、台所のテーブルに桔平きっぺいさんの笑顔が。「おはようせいらちゃん」「お帰りなさい…
あらまぁ、あらまぁ、あの遊馬あすまが! まるで甥っ子にでも抱くような感慨で、胸がいっぱいになってしまった。なんたって、遊馬を初めて見た(読んだ)のは、『雨にもまけず粗茶一服』(2004年)。その後、『風にもまけず粗茶一…
プロローグ 唐突だが石いし狩かり七なな穂ほは床下が嫌いだ。 まず暗い。そして狭い。何かこもっていて変な臭いがする。うっかりすると、築八十年以上の家を支える柱や束に頭をぶつけそうになるので、土が剝むき出しの地面を這はう…