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ユイちゃんと真紀さんと私
十一 ユイちゃんと真紀さんと私 「そう、うちの旦那さんは、ゲームセンターの社長ではあるけれども、ラノベ作家でもあるの」 その区切りというか、仕事をしている中で社長業と作家業の切り分けをどういうふうにしているのかな、と思う…
十一 ユイちゃんと真紀さんと私 「そう、うちの旦那さんは、ゲームセンターの社長ではあるけれども、ラノベ作家でもあるの」 その区切りというか、仕事をしている中で社長業と作家業の切り分けをどういうふうにしているのかな、と思う…
この本は、「いらっしゃいませ」やメニュー、代金が言えず、接客のアルバイトをあきらめていた若者たちが始めた風変わりなカフェを取材したルポルタージュだ。若者たちの共通点は話し言葉がなめらかに出ない「吃音(きつおん)」があると…
十 義弟の禄朗くんが二十年前に殴った男が 晴れた日には、必ず散歩する。ウォーキング。時間はその日によって違うけど、今日はこれからだ。 原稿は、さっき入稿したっていうメールが来た。これで唯一続いているシリーズ『異邦のゲー…
九 娘の相手は元警察官でたいやき屋でアンパイア 離婚したって、娘は娘だ。 俺の血を分けた子供だ。たとえ離婚して離れ離れになってからもう十五年が経ったとしても、娘は娘だ。 って言ってもだ。 自分ではそう思っていても、世間…
縦横四列に組まれた、十六のテーブル。 席に着いた者たちは静かにそのときを待っている。 腕組みをして俯うつむく青年、頰杖をついて周囲を眺める少年。 微笑を浮かべる女、大あくびをする男。 手元の駒を整える少女、整え終えた駒…
これは、たかしくんがななほちゃんやお友達と遊んだ、ながい人生のなかの、ちょっとだけながい、おやすみの記録である──。 一章 鬱、ときどき休職当番 突然だが石いし狩かり七なな穂ほは肉じゃがが好きだ。 まず芋いもが好き…
上体を反らされる感覚がした。 両腕を後ろから引っ張られ、胸が開く。直後に篤あつしはヒュゴッと息を吸い込み、目を見開いた。飛びたくても飛びたてない夢を見ていた気がしたが、咳き込むと口から唾液が散り、目の前にはフローリング…
六 名も無き調律師は何者なのか 小学校にあるグランドピアノをボランティアで調律してくれたその人の名は、〈瀬戸丸郁哉せとまるいくや〉さん。 名刺などは貰ってなくて、連絡先だけメモしてあったそうです。禄朗さんがその名前を…
天井のシーリングファンが空気をかき混ぜている。 それにより春先にもかかわらず店内は斑(むら)なく高温多湿に保たれていた。「レプタイルズ・メサ」の中はいつも生き物の匂いと音に満ちている。ここの空調が常に熱帯じみた温度と湿…
夜も更けつつある時間、帝都の下町に女性の悲鳴が響き渡る──。「きゃあああああ!」 夜闇に響いた声の主を、助ける者はいない。 女性は必死になって逃げていたものの、彼女を追う者はいなかった。 目には見えない〝なにか〟から、…