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拝み屋の遠国怪奇稿 招かれざる伝承の村
序章 神かん田だの裏通りのアパートに暮らす自称フリーカメラマンの見み取どり瑛えい吉きちのところにその電話が掛かってきたのは、春先のある日の夕方のことだった。 一階に住んでいる大家に呼ばれて階段を下りた瑛吉は、取り次い…
序章 神かん田だの裏通りのアパートに暮らす自称フリーカメラマンの見み取どり瑛えい吉きちのところにその電話が掛かってきたのは、春先のある日の夕方のことだった。 一階に住んでいる大家に呼ばれて階段を下りた瑛吉は、取り次い…
築山桂といえば、NHK土時代劇の原作となった『緒方洪庵 浪華の事件帳』シリーズから、伝奇小説の快作『未来記の番人』まで、守備範囲の広い作家として知られている。 本書『近松よろず始末処』は、前者のように、歴史上の人物が…
こう来たか、と思わず膝を打った。 何がどう来たのかは後述するとして、まずは紹介を。 「緒方洪庵 浪華の事件帳」シリーズや「浪華疾風伝あかね」シリーズなど、大坂が舞台の時代小説を書き続けてきた築山桂。最新作の舞台は元…
第一話 天風姤てんぷうこう 昨夜の冷たい秋雨から一転。青く澄んだ空の下、停車場に八はっ卦け見みの看板が立っている。 東京の新興住宅地だとか宣伝され、小金持ちが居を移してくるようになった目め白じろ界隈だが、駅前の景色は…
* とりあえず別荘内に戻った。 紅林刑事と二人、階段をどんどん降りる。 茫然としてばかりはいられない。白瀬くんを冤罪から救わなくてはならないのだ。 このままでは熊谷警部達が、寄ってたかって白瀬くんを犯人…
* リビングから一階分上がった地下一階。その中央の部屋が目指す部屋だった。 ドアをノックすると、入り口を細く開けて顔を出したのは熊谷警部だった。捜査責任者の、堂々たる恰幅の刑事である。 熊谷警…
龍神湖には龍神様がおわします 龍神様は水と天候を司る神様です ある日、龍神様が云いました 「人間の姫君を贄として差し出せ」 その命令にお殿様は大いに腹を立て 「神と雖いえども我が娘を人身供儀じんしんくぎにせよとは…
* 「ところで、もう六時半を回ったね。親父、腹は減らないかい」 鷹志がそう云い、大浜社長もうなずき、 「うむ、そう云われれば時分時じぶんどきだな」 三戸部刑事がそれを聞き咎めて、 「社長、飲食物はどうか…
* 午後三時を回った。 いよいよ怪盗の予告タイムに突入した。 鷹志が気を利かせて置き時計を持ってきた。それを金庫の上に置いた。アナログ式の四角い時計だ。クリーム色でプラスチック製の安っぽい物で、…
『大浜富士太殿 貴殿の所有するブルーサファイアを頂きに参上する 怪盗 石川五右衛門之助 尚、期日は次のうちいずれかとする 7月14(水)15:00~20:00 7月21…
大人気シリーズ『金沢古妖具屋くらがり堂』のクライマックスを記念して、Q&Aコーナーを開催! 皆さまからのご質問に、作者・峰守ひろかずさんがお答えします。登場人物についてや作品の舞台裏、創作秘話など盛りだくさんの内…
深い呼吸がなによりも大事だ。手も、足も、指先までしっかりと意識を集中させる。全身で呼吸をする。目の前の相手を見据える。 普段は生意気な瞬しゅんも、組手のときはいつだって真剣だ。猫を思わせる目は、睨にらむような鋭さでオ…
源頼政みなもとのよりまさが京に呼ばれて宇治うじ行きを命じられたのは、天治てんじ二年(一一二五年)の文月(七月)、鈴虫や松虫が鳴き始めた頃のことであった。 「う、宇治へ……でございますか?」 「はい」 意外な命令に困惑…
1 「うわぁ、なんだか……リッチなところ!」 三田村みたむら一花いちか は、路地の真ん中で感嘆の溜息を漏らした。五月の爽やかな風が吹き抜け、一つに括った真っ黒な髪が中で揺れる。 繁華街のほど近くなのに、このあたりは静寂に…
「皆川に頼まねぇ?」 コロッケパンを食いながら、近藤が言った。「なんで皆川?」俺は小声で訊き返す。近藤は肩をすくめた。「器用じゃん。このあいだシングルに褒められてたし」「でも……、なんか変わってる…
イギリスには、「ファンタズニック」という言葉がある。 幻想的生命体に遭遇した人々が陥るパニック状態のこと。 妖精や精霊、ゴーストなんかがごく普通に存在するこの国では、ファンタズニックもまた頻繁に起こる――。 そんなわ…